生後4週令のウィスター系ラット雄雌各々20匹からなる群を3群用意し、それぞれ対照群(cont)、 非照射群(0−0)および30Krad照射群(0−30)とし、相当する試料で12ヶ月間飼育した。動物は全 て個別ケージ内で飼育し、飼料および飲料水(水道水)を自由に摂取させた。
飼育期間中、特記すべき症状の発現はなくcontと添加群の間に差を見ない。
体重の推移を図C−1、2に示す。雄雌ともにcontと0−30との間に明らかな差を見ないが雄0−0 で20週以降に、また雄雌の0−30で40週以降にcontに比べ増加傾向を認める。
図C−1、2に示すように、雄雌ともにcontと添加群あるいは線量間に明らかな差は見られない。
試験期間中の自然死亡動物数および死亡率を表C−1に示す。雄雌ともに死亡例は少なくcontでは 死亡例を見ない。また、cont、0−0および0−30の死亡率は、雄で0.10および10%、メスで0.0およ び17.04%である。
3、6および12ヶ月の各時期に行った血液学的検査成績は表C−2、3、4に示す。
雄では、6ヶ月目の添加群で赤血球数、HtおよびHbの減少を、12ヶ月目では、0−0の赤血球数の 減少と添加群で網状赤血球数の増加を見るが、その他には著変を認めない。
一方、雌では、3ヶ月目に添加群の赤血球数の減少、0−0で網状赤血球の増加を見る。6ヶ月目で は、添加群で赤血球数、白血球数の減少、網状赤血球数の増加を、0−30でHbの減少を認める。しか し、これらの変化は、0−0と、0−30の間に殆んど差が見られない。
3、6および12ヶ月に行なった生化学的検査の成績を表C−5、6、7に示す。
3ヶ月、雄では、0−30のester%がcontに比べ低値を示す。雌では、GOT、およびGPTが低い値を示す が、いずれも0−0と0−30の間に差を認めない。
6ヶ月、雄では各群の間に殆んど差を認めない。雄では、0−0で蛋白量、アルブミン量、尿素窒素 およびester%の減少を、また0−30で尿素窒素の減少、エステル比の増加を見るが、0−0と0−30と の間には、照射による差は認められない。
12ヶ月、雄では、0−0でアルブミンおよびAIPの減少、0−30でエステル比の増加を見る。雌では0− 0でエステル比の増加を、また0−30では、contとの間には差を認めないが、0−0との間に総コレス テロールおよびエステル比に減少を見る。
以上のように、3、6および12ヶ月目の各時期で雄雌ともにcontと添加群、あるいは0−0と0−30の 間にいくつかの差を見るが、照射によると見做される影響は認められない。
3、6および12ヶ月に解剖した動物の臓器湿重量の実測値および体重比を表C−8、9、10のa、bに示 す。なお、臓器重量については、湿重量と体重比が同一方向に変化を示したものについて述べる。
3ヶ月、雄では、0−0の甲状腺の増加、雌では0−30の甲状腺の増加をみるが、0−0と0−30の間に 明らかな変化を見ない。
6ヶ月、雄では0−0と0−30の間に睾丸で差を認めるが、0−30とcontとの間には差を見ない。雌で は0−0で副腎の増加を見る。しかし、contと0−30の間には殆んど差を認めない。
12ヶ月、雄では、0−0で脾の増加、雌では0−30で甲状腺の減少を認める。なお、雌の甲状腺の減 少は、0−0に比べても有意である。
以上のように臓器重量については12ヶ月目の雌の甲状腺の変化を除いて各臓器とも殆んど差が認 められない。
3、6および12ヶ月の各時期に行なった剖検で、変化を認めた例数をその変化の内容を各群毎に集 計し表C−11に示す。
3ヶ月目:雄雌ともに0−30の1例に腎の帯黒色変化を見る外、特記すべき変化を見ない。
6ヶ月目:雄で0−0の1例、0−30の3例に肺炎を、雌ではcontの1例に脳下垂体肥大を認める。
12ヶ月目:雄の0−0で肝の褪色を2例に、腎の混濁腫脹、脾の帯黒色変化および睾丸の水腫をそ れぞれ1例づつ認める。一方、雌では、contで肺炎、肺膿瘍、肝で膿瘍および褪色を各々1例づつ、 0−0で1例に肝の脆弱および副腎の1側の欠除を見る。0−30では肝の脆弱と褪色を1例に、腎の1側 欠除および卵巣の嚢腫をそれぞれ1例づつ認める。
以上のように、剖検所見ではいづれの時期においても特記すべき傾向の変化はなく、かつ群間に 著差を認めない。
3、6および12ヶ月の各時期における組織学的所見を表C−12、13に示す。
3ヶ月:雄ではcont、および0−0の各1例に肝で円形細胞の浸潤、0−0および0−30の各1例に脾 で軽度のヘモシデリンの沈着を見る。その外、腎ではcont 0−0および0−30で細尿管内上皮性尿 円柱をそれぞれ3、2および2例認める。一方、雌では、contで肺気管支内に円形細胞の浸潤を、肝で contおよび0−0の肝でクッパー星細胞の軽度の肥大をそれぞれ2および1例に、腎では各群とも2例 づつ細尿管内上皮性尿円柱を認める。
6ヶ月:雄では、contの肺で肺胞壁の肥厚をcontで2例、0−0および0−30で各1例、また0−30で は肺胞性肺炎を2例に見る。肝では、contおよび0−0で円形細胞の浸潤を2および1例に、0−30で肝 細胞の空胞化を1例に見る。腎では、各群で細尿管内上皮性尿円柱を2−3例、contおよび0−0で1例 ずつ、硝子様尿円柱を見る。脾では0−0および0−30の各1例に軽度のヘモシデリン沈着を認める。
一方、雌では、肺で0−0の1例に肺胞内に泡沫細胞の浸潤を1例に、腎では各群それぞれ3例づつ細 尿管内上皮性尿円柱を認める。脾では、contおよび各添加群でそれぞれ1、3および2例に軽度のヘ モシデリン沈着を見る。
12ヶ月:雄では、肝でcontおよび0−0でそれぞれ3および1例に肝細胞の空胞化、0−0および0−3 0でグリソン氏鞘内円形細胞の浸潤を各1例に、腎ではcont 0−0および0−30で細尿管内上皮性尿 円柱をそれぞれ8、3および7例に0−0および0−30で硝子様尿円柱を各々4および1例、細尿管の拡張 を各1例づつその外0−0で細尿管上皮細胞の軽度剥離脱落および間質内円形細胞の浸潤を2および1 例に認める。脾では、cont、0−0および0−30で軽度のヘモシデリン沈着をそれぞれ2、7および8例 認める。副腎では、contの2例に皮質の空胞化を、0−0の1例に髄質の腺腫様変化を認める。
一方、雌では、contの肺で肺胞内に白血球の浸潤を2例、壊死性肺炎を1例に見る。肝では、contの 1例に壊死を、0−0の1例にプリソン氏鞘内に円形細胞の浸潤を見る。腎では、cont、0−0および 0−30で細尿管内上皮性尿円柱を3、5および4例に、硝子様尿円柱を3、2および1例、細尿管上皮細胞 の軽度の剥離脱落を、1、2および1例に認める。脾では、cont、0−0および0−30で軽度のヘモラデ リン沈着を4、10および7例に、副腎ではcontで1例に髄質の腺腫様変化を1例に皮質の充うっ血を、 0−30で皮質の空胞化および充うっ血をそれぞれ1例づつ認める。
以上のように各時期における変化としては、腎における上皮性尿円柱、脾の軽度のヘモシデリン 沈着、また12ヶ月目では、添加群の雄および雌の各における腎の硝子様尿円柱が目立つ。しかし、 これらの変化には、0−0と0−30の間に差を認めない。また、その他の臓器、組織にはいづれの時期 でも群間に差のある所見を見ない。
実験期間中腫瘍の発生は1例も認められない。
非照射および30krad照射乾燥玉ねぎを各々2w/w%添加した飼料と、玉ねぎを含まない普通動物用 飼料を雄雌各々20匹からなるウィスター系ラットの群3群に12ヶ月間与え、その影響を比較検討した。
血液学的所見、生化学的所見、臓器重量、および病理組織学的所見に関し、玉ねぎ添加群において 対照群と有意の差を示すものがあったが、非照射および照射玉ねぎ添加両群の間では、検査各時期を 通じて一貫した有意の差を示すものはなかった。
本実験においても、玉ねぎ添加群に赤血球減少と脾におけるヘモシデリン様物質の沈着が認められ、 玉ねぎ自体の影響は全く除外することはできなかったが、これらの変化は軽微であり、玉ねぎ25w/w %添加の場合と同質であった。