食品照射特定総合研究を推進するため昭和48年原研高崎研究所に食品照射ガンマ線照射施設が竣工した。そこで本施設のコンベア装置について馬鈴薯の実態を把握し、適正照射条件を明らかにするため、空間線量分布および馬鈴薯パッケージ内の吸収線量分布をフリッケ線量計により測定し、測定結果について若干考察した。
本施設は、建家総面積約940m2、照射室はコンベア大量照射用(内法3mW×6mD×2.7mH)、開発試験用(5mW×5mD×4.7mH)の2つよりなる。現在収納されている線源は、コンベア用としてCo−60 33.800Ci、開発試験用として60.000Ciの合計約10万Ciである。線源の格納方式は水深6.4mのプールタイプであり、最大40万Ciまで貯蔵できる構造となっている。大量照射用コンベアは、パッケージ連続照射用リニアモーション2パスタイプで、巾は60cmであり厚さ20〜45cmのパッケージを積載出来るようになっている。またコンベア速度は0.1〜3m/minの連続可変となっている。Fig.1にコンベア大量照射用照射室の平面図の概略を示した。照射コンベア(A)は、板状線源の両側に配置されており、パッケージは両面照射されるようになっている。即ち搬入コンベア(B)により照射室内に入ったパッケージは、一方のコンベア上でまず、片面を照射された後、反転部分(移載部)(A)を通って他方のコンベア上に移り、他の面の照射が行なわれ、ついで搬出コンベア(C)により照射室外に出される。
馬鈴薯試料には北海道十勝49年産の男爵L級を用いた。使用した線源は12mmφ×300mmLのペンシルタイプを5本1組としてケースに納めたもの13ケースを1ケース間隔で202cmL×30cmH×1.2cmtの板状に組立てた33,800CiのCo−60である。線量計としては酸素飽和のフリッケ線量計を用い日立分光々度計23G型により304mμにおける吸光度変化から吸収線量を測定した〔1〕。線量計試験管のセット場所はコンベア上高さ15cmと統一し、その位置に試験管の中心がくるよう垂直にセットした。馬鈴薯照射用として用いたパッケージは厚さ(T)30,35,40および45cmのダンボールで、いずれも長さ45cm、高さ30cmである。また市販の馬鈴薯20kg入ダンボールケース(28cmT×42.5cmL×30cmH)も一部使用した。線源からパッケージ表面までの距離は11cmから23cmまでとし、移動照射の場合、コンベアスピードは1m/minに統一した。また定置照射の場合は、移動照射の場合と同じ条件でコンベア上にパッケージを並べた状態で吸収線量を測定した。
Fig.2はコンベア上の等線量率分布を示したものである。コンベア上において線量率は4×10・E(5)〜6×10・E(4)rad/hrとなっており、線源の近傍においてはほぼ均一な空間線量分布の得られていることがわかる。Fig.3はY方向(コンベアの進行方向)の線量分布を示したものである。これによると、線源の中心から約140cm以上左右に離れると、線源に近い側の線量が遠い側よりむしろ小さくなっていることがわかる。この現象は線源の自己吸収および相互吸収の影響によるものと考えられる。また、Fig.4にはX方向(コンベアの進行方向と直角方向)の線量率分布およびX方向の各位置において実際に移動照射を行なって測定した空間線量の積分値(YΣ)を1時間当りに換算して示した。ここで、YΣの傾きと定置照射のY=0における傾きとを比較すると、YΣの方が若干ゆるやかな曲線となっていることがわかる、このことは本装置のコンベアによりパッケージの移動照射を行なった場合、線源の中心付近で定置照射するよりも全体として線量均一度はやや良くなることを示していると考えられる。
Fig.5に線源からパッケージ表面までの距離11cmに厚さ45cmのパッケージを置いて定置照射および移動照射した場合の吸収線量分布を示した。また、比較のため空間線量分布も同時に示した。この結果からパッケージを反転して両面照射した場合の線量均一度を推定すると定置照射では約3.2、移動照射では約2.8となる。この結果からも移動照射の方が定置照射より線量均一度が良いことがわかる。
Table 1に実際に馬鈴薯のパッケージの両面照射を行なった場合の線量均一度および照射処理能力を示した。線源からパッケージまでの距離が増加するに従って線量均一度は良くなるが、照射処理能力は低下する。一般に照射処理能力は線量、線量均一度、パッケージの厚さ、およびコンベアスピード間の相互の関係によって定まる。最高線量および線量均一度が規定されている場合、コンベアスピードは線源とパッケージとの距離、およびパッケージの厚さによって変わることとなり、線源に近いほど速く、またパッケージが厚いほど遅くしなければならない。従って、馬鈴薯の場合最高線量15krad線量均一度2.5以内と規定されているのでパッケージの厚い方が必らずしも照射処理能力は大きいとは限らず、本装置における馬鈴薯の最大照射処理能力はパッケージの厚さ35cm、線源からパッケージまでの距離11cmとした場合の4.34ton/hrであることがわかった。
Dose Uniformity and Irradiation Capacity in Potato Packages |
Thickness of package (cm) |
Distance from source to package (cm) |
Dose uniformity in package (Dmax/Dmin) |
Conveyor speed (cm/min) |
Irradiation capacity (ton/hr) |
Contents of potatoes (cm/package) |
28 |
11 18 |
1.78 1.58 |
153 126 |
4.08 3.50 |
20.0 |
30 |
11 13 18 23 |
1.98 1.91 1.74 1.59 |
129 121 106 96 |
4.28 4.03 3.53 3.20 |
25.0 |
35 |
11 13 18 23 |
2.25 2.15 1.96 1.83 |
114 104 93 82 |
4.34 3.96 3.52 3.12 |
28.5 |
40 |
11 13 18 23 |
2.56 2.54 2.27 2.06 |
── ── 79 71 |
── ── 3.57 3.22 |
34.0 |
45 |
11 18 |
3.13 2.66 |
── ── |
── ── |
39.0 |
Package size:28(T)×42.5(L)×30(H)cm 30〜45(T)×45(L)×30(H)cm |
〔1〕久米民和、橘 宏行、青木章平、佐藤友太郎:食品工誌,20,
492(1973).
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