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Q&A(QUESTION and ANSWER)

食品照射の応用分野(2)法規制と安全管理


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15.食品照射の法規制


15.食品照射の法規制

概要

 過失、故意を問わず国内で、食品衛生法で許可された以外の方法で(この場合は放射線照射の可否、食品・放射線の種類と許可線量など)、食品を放射線で処理した場合、法律違反となり、違反食品の回収・廃棄を命じられるとともに、営業停止処分を受ける。さらに、場合によっては関係者などが懲役刑や罰金刑など相応の罰則が科せられる。輸入食品の場合は、まず、他の食品衛生法違反の場合と同様に輸出元への積戻しか廃棄処分がとられる。

内容

1.各国政府は放射線を照射してよい食品の種類および処理目的などを明記して食品毎に許可している。

2.国内で過失、故意を問わず許可された以上の線量を照射し、また、許可品目以外の食品を照射して販売した場合、営業者は違反食品の回収・廃棄や営業停止処分(営業許可の取消、営業の全部 /一部禁止、定期的な営業停止など)を受ける。さらに、最高1年以下の懲役刑か10万円以下の罰金刑(場合によっては両方)の処罰となる。また、照射したことを隠すため無表示で販売した場合も回収、廃棄、営業停止などの処分を受けるとともに、6カ月以下の懲役刑、または、3万円以下の罰金刑となる。

3.わが国で許可されていない照射食品を輸入した場合、まず、その食品は、輸出元への積戻しか廃棄処分の措置がとられる。次に違反の程度により、その事業所および関係者が処罰される。

4.食品照射に関して食品衛生法違反となったベビーフード事件は、食品加工メーカーからの残存菌数に関する厳しい要求に応えるため、食品素材メーカーが乾燥野菜を無許可で放射線を照射し出荷(販売)したもので、上記の行政処分が科せらるとともに、これを実行した食品素材メーカーや放射線照射施設会社などの関係者は共同謀議者として食品衛生法違反で摘発され、食品素材メーカー関係者らは懲役8カ月と罰金10万円の刑に処せられた。処罰の根拠は、同法第30条2の第1項(以下の違反行為への罰則)、同法第7条1項(食品添加物や食品加工方法等の規格)、2項(1項の規格外食品等の販売禁止)及び厚生省告示第

 370号の「食品、添加物等の規格基準第1B1(食品照射の原則禁止)」違反であった。

食品衛生法の食品照射関係条文:許可条件・罰則等(含む刑法)

【食品衛生法関係】

 (ア)第1条:この法律は、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的とする。

 (イ)第4条第1項:左(以下)に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

 (ウ)同条第1項第1号:腐敗し、若しくは変敗したもの又は未熟であるもの。但し、一般に人の健康を害う虞がなく飲食に適すると認められているものは、この限りでない。

 (エ)同条同項第2号:有害な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは附着し、又はこれらの疑いのあるもの。但し、人の健康を害う虞がない場合として厚生大臣が認める場合においては、この限りではない。

 (オ)同条同項3号:病原微生物により汚染され、又はその疑いがあり、人の健康を害う虞があるもの。

 (カ)同条同項4号:不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を害う虞があるもの。

 (キ)第4条の二:厚生大臣は、一般に飲食に供されることがなかった物であって人の健康をそこなうおそれがない旨の確証がないもの又はこれを含む物が新たに食品として販売され、又は販売されることとなった場合において、食品衛生上の危害の発生を防止するため必要があると認めるときは、食品衛生調査会の意見をきいて、その物を食品として販売することを禁止することができる。

 (ク)第5条第1項:厚生省令で定める疾病にかかり、若しくはその疑いがあり、又はへい死した獣畜(牛、馬、豚、めん羊及び山羊並びに厚生省令で定めるその他の物をいう。以下同じ。)の肉、骨、乳、臓器及び血液又は厚生省令で定める疾病にかかり、若しくはその疑いがあり、又はへい死した家きん(鶏、あひる及び七面鳥並びに厚生省令で定めるその他の物をいう。以下同じ。)の肉、骨及び臓器は、これを食品として販売し、又は食品として販売の用に供するために、採取し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。ただし、へい死した獣畜又は家きんの肉、骨及び臓器であって、当該職員が、人の健康を損なうおそれがなく飲食に適すると認めたものは、この限りでない。

 (ケ)第5条第2項:獣畜及び家きんの肉及び臓器並びに厚生省令で定めるこれらの製品は輸出国の政府機関によって発行され、かつ、前項の厚生省令で定める疾病にかかり、若しくはその疑いがあり、又はへい死した獣畜又は家きんの肉若しくは臓器又はこれらの製品でない旨その他厚生省令で定める事項を記載した証明書又はその写しを添付したものでなければ、これを食品として販売の用に供するために輸入してはならない。

 (コ)第7条第1項:厚生大臣は、公衆衛生の見地から、販売の用に供する食品若しくは添加物の製造、加工、使用、調理若しくは保存の方法につき基準を定め、又は販売の用に供する食品若しくは添加物の成分につき規格を定めることができる。

 (サ)同条第2項:前項の規定により基準又は規格が定められたときは、その基準に合わない方法により食品若しくは添加物を製造し、加工し、使用し、調理し、若しくは保存し、その基準に合わない方法による食品若しくは添加物を販売し、若しくは輸入し、又はその規格に合わない食品若しくは添加物を製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、保存し、若しくは販売してはならない。

 (シ)第9条:有害な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは附着して人の健康を害う虞がある器具若しくは容器包装又は食品若しくは添加物に接触してこれらに有害な影響を与えることにより人の健康を害う虞がある器具若しくは容器包装は、これを販売し、販売の用に供するために製造し、若しくは輸入し、又は営業上使用してはならない。

 (ス)第10条第1項:厚生大臣は、公衆衛生の見地から、販売の用に供し、若しくは営業上使用する器具若しくは容器包装若しくはこれらの原材料につき規格を定め、又はこれらの製造方法につき基準を定めることができる。

 (セ)第10条第2項:前項の規定により規格又は基準が定められたときは、その規格に合わない器具若しくは容器包装を販売し、販売の用に供するために製造し、若しくは輸入し、若しくは営業上使用し、その規格に合わない原材料を使用し、又はその基準に合わない方法により器具若しくは容器包装を製造してはならない。

 (ソ)第11条1項:厚生大臣は、公衆衛生の見地から、販売の用に供する食品若しくは添加物又は前条第1項の規定(営業上使用する器具及び容器包装の衛生化を規定)により規格若しくは基準が定められた器具若しくは容器包装に関する表示につき、必要な基準を定めることができる。

 (タ)同条第2項:前項の規定により表示につき基準が定められた食品、添加物、器具又は容器包装は、その基準に合う表示がなければ、これを販売し、販売の用に供するために陳列し、又は営業上使用してはならない。

 (チ)第12条:食品、添加物、器具又は容器包装に関しては、公衆衛生に危害を及ぼす虞がある虚偽の又は誇大な表示又は広告はこれを行ってはならない。

 (ツ)第14条第1項:第7条第1項の規定により規格が定められた食品若しくは添加物又は第10条第1項の規定により規格が定められた器具若しくは容器包装であって政令で定めるものは、政令で定める区分に従い厚生大臣又は都道府県知事若しくは厚生大臣が指定した者の行なう検査を受け、これに合格したものとして厚生省令で定める表示が附されたものでなければ、販売し、販売の用に供するために陳列し、又は営業上使用してはならない。

 (テ)第14条第2項:生産地の事情からみて次に掲げる食品、添加物、器具又は容器包装に該当するおそれがあるものとして政令で定める食品、添加物、器具又は容器包装を輸入する者は、厚生大臣又は厚生大臣が指定した者の行なう検査を受け、その結果についての通知を受けた後でなければ、当該食品、添加物、器具又は容器包装を販売し、販売の用に供するために陳列し、又は営業上使用してはならない。

 (ト)第15条第1項:都道府県知事は、政令で定める食品、添加物、器具又は容器包装であって前条第2項第1号又は第3号から第6号までに掲げる食品、添加物、器具又は容器包装に該当するものを発見した場合において、これらを製造し、又は加工した者の検査の能力等からみて、その者が製造し、又は加工する食品、添加物、器具又は容器包装がその後引き続き当該各号に掲げる食品、添加物、器具又は容器包装に該当するおそれがあり、食品衛生上の危害の発生を防止するため必要があると認めるときは、政令で定める要件及び手続に従い、その者に対し、当該食品、添加物、器具又は容器包装について、当該都道府県知事又は厚生大臣が指定した者の行なう検査を受けるべきことを命ずることができる。

 (ナ)第15条第2項:厚生大臣は、食品衛生上の危害の発生を防止するため必要があると認めるときは、政令で定める食品、添加物、器具又は容器包装であって前条第2項各号に掲げる食品、添加物、器具又は容器包装に該当するものを製造し、又は加工した者が製造し、又は加工した同種の食品、添加物、器具又は容器包装を輸入する者に対し、当該食品、添加物、器具又は容器包装について、厚生大臣又は厚生大臣が指定した者の行う検査を受けるべきことを命ずることができる。

 (ニ)第15条第3項:第1項又は前項の命令を受けた者は、当該検査を受け、その結果についての通知を受けた後でなければ、当該食品、添加物、器具又は容器包装を販売し、販売の用に供するために陳列し、又は営業上使用してはならない。(第4項以下略)

 (ヌ)第16条:販売の用に供し、又は営業上使用する食品、添加物、器具又は容器包装を輸入しようとする者は、厚生省令の定めるところにより、そのつど厚生大臣に届け出なければならない。

 (ネ)第17条1項:厚生大臣、都道府県知事又は保健所法(昭和22年法律第101号)第1条 規定に基く政令で定める市(以下保健所を設置する市をいう。)の市長は、必要があると認めるときは、営業を行う者その他の関係者から必要な報告を求め、当該官吏吏員に営業の場所、事務所、倉庫その他の場所に臨検し、販売の用に供し、若しくは営業上使用する食品、添加物、器具若しくは容器包装、営業の施設、帳簿書類その他の物件を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度において、販売の用に供し、若しくは営業上使用する食品、添加物、器具若しくは容器包装を無償で収去させることができる。

 (ノ)第19条の十六:厚生大臣は、この法律の施行に必要な限度において、指定検査機関に対し、その業務若しくは経理の状況に関し報告をさせ、又は当該職員に、指定検査機関の事務所若しくは検査施設に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

 (ハ)第20条:都道府県知事は、飲食店営業その他公衆衛生に与える影響が著しい営業(食鳥処理の事業の規則及び食鳥検査に関する法律第2条第5号(略)に規定する食鳥処理の事業を除く。)であって、政令で定めるものの施設につき、業種別に、公衆衛生の見地から必要な基準を定めなければならない。

 (ヒ)第27条第1項:食品、添加物、器具若しくは容器包装に起因して中毒した患者若しくはその疑いのある者を診断し、又はその死体を検案した医師は、直に最寄の保健所長にその旨を届け出なければならない。

 (フ)第30条:第4条(第29条第1項及び第2項において準用する場合を含む。)、第5条第1項若しくは第6条(第29条第1項において準用する場合を含む。)の規定に違反し、又は第4条の二の規定による禁止に違反した者は、これを3年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

 (ヘ)第30条の二:第7条第2項(第29条第1項及び第2項(共に略、以下同様)において準用する場合を含む。)、第9条(第29条第1項及び第3項において準用する場合を含む。)又は第21条第1項(第29条第1項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

 (ホ)第31条:左(以下)の各号に該当する者は、これを6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

 (マ)同条1項:第5条第2項、第10条第2項(第29条第1項及び第3項において準用する場合を含む。)、第11条第2項(第29条第1項において準用する場合を含む)、第12条(第29条第1項において準用する場合を含む。)、第14条第1項(29条第1項及び第3項において準用する場合を含む。)、第14条第2項(第29条第1項において準用する場合を含む。)、第15条第3項(第29条第1項において準用する場合を含む。)又は第27条第1項(第29条第1項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者。

 (ミ)第32条第1項:左(以下)の各号の一に該当する者は、これを3万円以下の罰金に処する。

 (ム)同条の一:第17条第1項(第29条第1項及び第3項において準用する場合を含む。以下同じ。)の規定による当該官吏吏員の臨検検査又は収去を拒み、妨げ、又は忌避した者。

 (メ)同条の二:第17条第1項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者。

 (モ)同条の三:第16条又は第19条の17第6項(それぞれ第29条第1項において準用する場合を含む。)の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者。

 (ヤ)第33条:法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従事者が、その法人又は人の業務に関し、第30条、第30条第2項、第31条又は第32条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。ただし、その人が食品衛生管理者として、前条の規定により罰金刑を科せられるべきときは、その人については、この限りではない。

 (ユ)同法施行令第5条(営業の指定):法第20条((ハ)参照)の規定により都道府県知事が施設についての基準を定めるべき営業は、次のとおりとする。(全部で30を指定)14の二:食品の放射線照射業。

 (ヨ)同法施行規則第5条(同法第11条の関係):別表第三に定める食品又は添加物であって販売の用に供するものの表示の基準は、次のとおりとする。ノ:別表第三第八号に掲げる食品にあっては、放射線を照射した旨。(別表第三の八号で放射線照射食品と規定している) (ラ)食品、添加物等の規格基準(厚生省告示第370号)第1(食品)B(食品一般の製造、加工及び調理基準)1:食品を製造し、又は加工する場合は、食品に放射線(原子力基本法(昭和30年法律第186号)第3条第5号に規定するものをいう。以下第1 食品の部においても同じ。)を照射してはならない。ただし、食品の製造工程又は加工工程において、その製造工程又は加工工程の管理のために照射する場合であって、食品の吸収線量が0.10グレイ以下のとき及びD 各条の項において特別の定めをする場合は、この限りではない。

 (リ)同規格基準第1(食品)D(各条)4(野菜の加工基準):発芽防止の目的で、ばれいしょに放射線を照射する場合は、次の方法によらなければならない。

(1)使用する放射線の線源及び種類は、コバルト60のガンマ線とすること。

(2)ばれいしょの吸収線量が150グレイを超えてはならないこと。

(3)照射加工を行ったばれいしょに対しては、再度照射してはならないこと。

【刑法関係:共犯】

 (ア)第60条:2人以上共同シテ犯罪ヲ実行シタル者ハ皆正犯トス。




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