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Q&A(QUESTION and ANSWER)

食品照射の応用分野(4)日本の健全性試験


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34.日本における照射馬鈴薯許可に用いられた健全性評価試験


34.日本における照射馬鈴薯許可に用いられた健全性評価試験

概要

 食品照射に関する原子力特定総合研究の一環として、昭和42年(1967年)から照射馬鈴薯の健全性についての研究が実施された。その成果に基づいて、1972年(昭和47年)に馬鈴薯の照射が食品衛生法により許可された。

内容

1.1967年(昭和42年)に食品照射についての食品照射研究基本計画に基づき、原子力特定総合研究が開始された。このプロジェクトには科学技術庁、厚生省および農林水産省傘下の各研究機関、大学などが参加して照射効果や安全性、健全性などの総合的な研究が行われた。対象品目としては、馬鈴薯(発芽抑制)、玉ネギ(同)、米(殺虫)、小麦(同)、ウインナーソーセージ(殺菌)、水産練り製品(同)、ミカン(表面殺菌)が取り上げられた。馬鈴薯については1971年(昭和46年)に、以降、1981年(昭和56年)までに各々の食品に関する研究が終了し、逐次その成果が報告された。いずれの照射食品においても安全性(健全性)に関わる問題は見い出されなかった。

2.この成果に基づいて、1972年(昭和47年)に馬鈴薯の照射が許可され、翌1973年(昭和48年)、士幌町農業協同組合に馬鈴薯の照射施設(線源は60Co)が建設され、1974年(昭和48年)1月から馬鈴薯の実用照射が開始された。その後、毎年1万〜1万5千トンの馬鈴薯が照射されて市場に出荷されている。

3.特定総合研究では、照射馬鈴薯の安全性については以下の検討が行われた。

 1)マウス(400匹)およびラット(300匹)を用いて、それらの生涯の大部分に相当する期間(マウス21カ月、ラット24カ月)の長期慢性毒性試験、アカゲザル5頭による6カ月の短期毒性試験、マウス3世代(総数 1,800匹)にわたる世代試験を行った。

 さらに、長期毒性試験では、ラットで成長、食餌効率、一般症状、死亡率、血液学的検査(赤血球数、ヘモグロビンなど)、血液の生化学的検査(血清総タンパク、コレステロールなど)、病理学的検査(肉眼的所見、器官重量、組織学的所見、腫瘍発生率)を行った。マウスの長期毒性試験では、催腫瘍性の有無に検査の重点を置いた。サルの短期毒性試験では、ラットの試験とほぼ同様の検査を行った。世代試験では、マウスの各世代における交配率、妊娠率、死亡率、奇形発生の有無などを調べた。

 2)マウスにおける長期慢性毒性試験と世代試験およびサルにおける短期毒性試験では、催腫瘍性および催奇形性を含め、照射によると考えられる悪影響は認められなかった。ラットについては、0.3kGyおよび0.6kGyの照射馬鈴薯添加飼料を与えた雌の体重増加の割合が少なく、 0.6kGyの照射馬鈴薯添加飼料を与えた雌の卵巣重量が6カ月目に低下したが、次の通り、照射馬鈴薯による悪影響はない、と判断された。

 3)体重増加の問題に関しては、

@体重増加の数値と線量との間に用量関係が認められないこと、

A照射馬鈴薯を投与したラットの血液形態学、血清生化学、病理学などの諸検査での結果に異常が認められないこと、

Bマウスではこのような現象が観察されなかったこと、

Cフランスで実施された同様な試験では異常が認められなかったことから、試験に供した動物に基づく偶発的なものであり、照射馬鈴薯の毒性を示すものではないと判断されている。

4)卵巣重量の低下に関しては、

@ 0.6kGy照射したラットの6カ月目のみが顕著であり、飼育全期間を通じた卵巣重量の実測値および体重比には一定の傾向が観察されなかったこと、

A卵巣の病理学的検査において何等の変化も観察されなかったことから、問題になるものではないと考えられている。これ以外の臓器においても偶発的な臓器重量の増減が観察されることがあるが、線量との用量関係がないこと、飼育期間を通じた傾向がみられないこと、病理学的検査に異常が認められないことから、問題はないと判断されている。

 5)また、雄のラットでの死亡率の増加を問題にする意見があるが、

@線量との間に明確な用量関係のないこと、

A雌ラットではこのような傾向がないこと、マウスではこのような傾向がないことから、照射馬鈴薯の影響を示すものではないと考えられている。




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