38.わが国における照射米の動物試験結果の問題点
概要
照射米の場合、ビタミン B1などの栄養成分変化は認められず、マウスやラット、サルを用いた慢性毒性試験でも照射による悪影響は認められていない。照射米の動物試験での異常を指摘するデータは非照射群との比較であり、標準飼料群と比較すれば有意な差といえない。
内容
1.照射米中のビタミン B1が非照射米に比べ低下しているとの指摘があったが、データのバラつきがあるものの照射と非照射による明確な差は認められていない。また、ラットの臓器重量による検査でも照射による栄養成分の影響は認められていない。
2.マウスを用いた慢性毒性試験において、血中グルコースやGPT(肝機能の指標)が照射群で減少するという指摘があったが、グルコース量については標準飼料群と比較すると照射群とは差がなく、逆に6カ月目の雄で非照射米の方が標準飼料群と比較して著しく高かったことの反映である。GPTについても12カ月で若干照射群が低下しているが、6カ月と12カ月で差がないことから、これらの値は単なるデータのバラつきと判断される。また、他の生化学的検査、臓器重量、病理組織学的検査で異常が認められないことも照射による悪影響がないことを示している。
3.ラットによる慢性毒性試験において、各種臓器の変動が照射群にあるとの指摘があったが、この場合も線量との相関関係がなく飼育期間を通じて一定の傾向はなく、組織学的にも血液生化学的検査にも異常が認められないことから、照射の影響とは認められない。
4.また、ラットの雌で死亡率が照射によって上昇したとする議論があったが、雄では非照射群の死亡率が最も高いこと、雌ラットでの死亡率は21カ月と24カ月で差が大きくなっていることからも照射の影響というよりは、老齢化によるデータのバラつきによるものであることを示している。
5.照射米を与えたアカゲザル(雄)の甲状腺、心臓、肺、精巣重量の変化が指摘されたが、これは非照射群の体重増が全体的に低かったのが原因であり、標準飼料を与えた群との間で差は認められていない。
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