食品照射に関する文献検索

Q&A(QUESTION and ANSWER)

食品照射の応用分野(4)日本の健全性試験


文書



39.わが国における照射小麦の動物試験結果の問題点


39.わが国における照射小麦の動物試験結果の問題点

概要

 照射小麦を投与した各種動物試験ではすべて安全性を示しており、飼育期間によってデータのバラつきはあるものの、照射による悪影響は認められていない。外国で問題にされたポリプロイドなどの変異原性については、わが国でも追跡試験されており、照射小麦の摂取による異常は認められていない。

内容

1.照射小麦の栄養学的研究においてラットによる成長発育試験で問題があるとの批判があったが、実際のデータでは体重増加が照射群で若干低い傾向を示したが、有意差とは認められずデータのバラつきの範囲内である。このことは、ラットの慢性毒性試験で非照射群と照射群との間に差が認められなかったことからも明かである。

2.マウスを用いた慢性毒性試験では、照射小麦を食べさせた雄の体重減少と、非照射群と照射群を含めて死亡率が24カ月で異常に高いことが問題との議論があった。実際のデータでは雄の体重減少に差が見られるのは14カ月以降であり、雌では差が認められないことから老齢期によるデータのバラつきであることを示している。死亡率については18カ月以降に各群で急増しているが、これは老齢による増加であり、照射群の方が死亡率が少ない傾向が認められている。なお、24カ月はマウスの寿命に近い時点である。

3.ラットを用いた慢性毒性試験においては、その他に赤血球数と臓器重量の変動が問題にされたことがあったが、これらのデータのバラつきは動物実験では誤差範囲内であり、飼育期間による一定の傾向は認められず、また、照射との相関関係も認められていない。

4.マウスを用いた世代試験では卵巣重量と頚肋の変化が問題との議論があった。マウスやラットのような小動物においては卵巣重量の測定はバラつきを生じやすく、平均値で約10〜20%の差があることが知られている。この場合も照射、非照射による一定の傾向は認められず、次世代におよぼす影響も認められていない。頚肋の奇形についても照射、非照射で大きな差は認められていない。

5.外国の報告でマウスの優性致死など照射小麦の摂取による悪影響があったと問題にされたが、それらのデータも動物実験につきもののバラつきの範囲内であり、研究実施者も優性致死作用とは認めていない。ポリプロイドの問題については、わが国でもチャイニーズハムスターを用いた追跡試験が行われており、照射による悪影響は認められていない。




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