42.わが国における照射ミカンの動物試験結果の問題点
概要
ミカンの場合には電子線により表皮の一部しか照射されておらず、果実は照射の影響を受けていない。動物試験の結果ではデータのバラつきはあるものの照射群と非照射群で差は認められていない。
内容
食品照射の原子力特定総合研究の中で、ミカンは表皮のカビ殺菌による貯蔵期間の延長を目的として電子線について試験している。電子線のエネルギーは0.5MeVで1.5kGy照射し、3゜Cだと3〜4カ月間貯蔵できる。電子線照射では表皮の約 0.4oの深部までしか照射されないため、果実部は照射の影響を受けない。
1.照射ミカンのビタミンCの減少が貯蔵中に大きいとの批判があったが、データのバラつきの範囲内にあり有意差があるとは認められない。
2.マウスを用いた慢性毒性試験においては、雄の体重増が照射群で小さく、雄と雌の死亡率が照射群で高いとの批判があった。体重増については雄では照射群が小さいが、雌では逆に非照射群が小さく、両者とも動物実験にありがちなデータのバラつきの範囲内にある。死亡率についても両者で大きな差は認められていない。
3.ラットを用いた慢性毒性試験では、照射群の臓器重量の増減が問題との議論があった。ラットの試験ではミカンを2%と6%添加した飼料で比較しているが、指摘されている臓器重量の変動は照射、非照射および両添加率飼料群で一定の傾向がない。また、飼育期間でも一定の傾向が見られないことから、照射の影響でなく動物実験にありがちなデータのバラつきであることが明らかである。
4.サルを用いた慢性毒性試験では、雄の精巣重量の減少および脳下垂体の増加などが問題との議論があった。この場合も体重比では有意差は認められず、他の試験結果からも照射による影響でないことが明かである。
5.世代試験ではマウスの体重増加が標準飼料に較べてミカン投与群で少ないと指摘されたが、これはミカンの過剰摂取の可能性が考えらるものの照射とは関係ない。
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