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Q&A(QUESTION and ANSWER)

食品照射の応用分野(5)海外の健全性試験


文書



43.米国FDAのベーコン照射の許可取消の経緯


43.米国FDAのベーコン照射の許可取消の経緯

概要

 米国食品医薬品局(FDA)がベーコンの許可を取り消したのは、食品添加物や照射食品の許可に必要な安全性評価基準が改められたためである。当時の陸軍省の毒性試験の方法やデータにも問題があり、不明確なデータが発見されたため許可が取り消された。また、ハムに対する                       許可申請も取り下げられた。しかし、その後の関連の毒性試験で安全性は証明されている。なお、ベーコンやハムに関してはその後も許可申請は行われていない。

内容

1.FDAは、1963年に陸軍省から申請のあったベーコンに対する45〜56kGyでのγ線による滅菌処理を許可した。その後、米軍内で軍用食として一時期実用化したこともあった。しかし、その後、FDAの食品添加物や照射食品の安全性に対する考え方が改められ、過去                       に、「マイナスの結果を見いだせない」との観点から許可していたものが、「危険性がないことを積極的に証明する必要がある」というように変わった。このFDAの新しい安全基準により、陸軍省から提出されたベーコンの毒性試験結果を再評価したところ、照射ベーコンを与えた                       動物群でラットの死亡率の増加、マウスとイヌの体重減少、イヌおよびラットの赤血球の減少などを引き起こす可能性や、照射食品を投与された動物は対照動物と比較して白内障および腫瘍の発生率が高い傾向を否定できないとした。これは、当時の実験で動物飼料中の栄養バランス                       や照射ベーコンの配合比などの実験方法に問題があったからであり、安全性をさらに確認する必要があるとして1968年に許可が取り消された。その後、1968年に米国議会は公聴会を開き、FDAに食品照射の許可にあたっての安全性評価の基準を決めるように勧告した。

2.FDAはこの勧告を受けて、1981年に安全性評価の基本的な見解を発表した。陸軍省はFDAと協力して照射した牛肉、食鳥肉、豚肉、ハムについてラット、マウス、イヌの

3種類の動物を使った長期毒性試験を継続し、安全性を証明するデータを得ている。特に1983年に得られた58kGy照射した食鳥肉の安全性のデータは、その後の豚肉や食鳥肉照射への許可行政に大きく貢献した。




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