1.放射線照射は食品に放射能を帯びさせませんか?


いいえ、そういうことはありません。

管理された条件の下で照射するかぎり、食品が放射能を帯びることはありません。

食品をはじめとする自然界のあらゆるものは微量の放射能を帯びています。 すなわち、150〜200Bqという微量の自然放射能(カリウムのような元素から出る)は私たちの日常の食事において避けることはできません。

食品照射が許可されている国では、放射線源と放射線量の両方が規制され、管理されています。 放射線照射とは、食品に吸収される放射線量を管理するために、定められた速度で食品を放射線場に通過させる処理のことをいいます。 食品自体が放射線源と直接接触することはありません。電子線とエックス線(機械を用いて発生する放射線のうち食品照射に利用できるのはこの2種類だけです。)に対して許される最大のエネルギーはそれぞれ10MeVと5MeVです。(訳注) これらの放射線源から極端に高い線量の放射線を食品に照射したとしても、誘導される放射能は食品1Kgにつき1000分の1Bq以下です。 これは食品の中に自然に存在する放射能レベルの20万分の1に過ぎません。




2.「照射食品」と「放射能汚染食品」の違いは何ですか?


照射食品とは、発芽の防止や食中毒菌の殺菌のようなある望ましい現象を引き起こすために、ある種の放射線エネルギーを用いて慎重に処理された食品です。 食品以外にも、化粧品、ワイン用コルク、病院用具、医療用具、食品包装容器など多くの品目が商業的に照射されています。

photo 一方、放射能汚染食品とは、核実験あるいは原子炉の重大な事故によって偶発的に放射性物質により汚染された食品のです。 この種の汚染は食品の保存などの目的のために処理された照射食品とは全く無関係です。




(訳注)
日本の場合、食品照射ではコバルト60からのガンマ線だけが使用を許可されています。
また、医療用具の滅菌ではコバルト60のガンマ線と5MeV以下の電子線の使用が許可されています。

(科学技術文献)
「電子線および電磁波を照射した牛肉の誘導放射能の測定」
"Measurement of induced radioactivitiy in electoron-andphoton-irradiated beef",by A.Millerand P.E.Jensen,International Journal of Applied Radiation and Isotopes,38(1987).

「照射食品の安全性」
Safety of Irradiated Foods,by J. F.Diehl,Marcel Dekker Inc.,New York(1990)

「照射食品の安全性と健全性に関する報告」
"Report on the Satety and Wholesomeness of Irradiated Food",UK Advisory Committee on Novel and Irradiated Foods,HMSO,London(1986)

「食品処理および殺虫処理における電離エネルギー」
"Ionizing energy in food processing pest control",Report No109.Council for Agricultural Science and Technology,Ames,Iowa(1987)