1.放射線分解生成物の生成のような照射食品における化学変化は有害ではありませんか?


いいえ、有害ではありません。

一般に、放射線を照射して起こる食品中の化学変化はほんのわずかです。 放射線照射によって食品中に起こることが知られているいかなる変化も、有害であったり危険であることはありません。

このような化学変化のなかには、いわゆる放射線分解生成物を生成するものもあります。 これらの生成物はブドウ糖、ギ酸アセトアルデヒド、二酸化炭素のように、食品中に自然に存在していたり、加熱処理によって生ずるありふれたものであるということが証明されています。 これらの放射線分解生成物の安全性は徹底的に調べられています。 その結果、このような放射線分解生成物が有害であるというどんな証拠も認められていません。

放射線照射によって生じる放射線分解生成物を分離して同定するために、非常に高感度な分析技術を用いた数多くの研究が過去30年にわたって実施されてきました。 その結果、照射食品にとって本当に特異的な生成物は認められませんでした。放射線分解生成物と同じ物質は、含有量こそ異なりますが、果実、野菜、肉、魚などの多くの未処理の食品や加工食品の中に常に認められます。

食品を1kGy照射した時に、未だ検出されていない放射線分解生成物が生成しているとしてもその総量は食品1kgにつき3ミリグラム(mg)未満、すなわち3ppm未満(訳注1)(訳注2)であろうと、FDAは推定しています。




2.放射線照射している間に生成する「フリーラジカル」は食品の安全性に影響を及ぼしませんか?


いいえ、影響を及ぼしません。

フリーラジカルそれ自体が照射食品の安全性に影響を及ぼすということを示す証拠は何もありません。

フリーラジカルとは、ペアになっていない電子を持つ原子あるいは分子のことをいいます。 フリーラジカルは、放射線照射により生成しますが、パンのトースト、てんぷら、凍結乾燥などのような食品加工によっても生成し、さらに食品の通常の酸化過程においても生じるものです。 フリーラジカルは一般に非常に反応性に富んでいて不安定な構造であり、常に物質と反応して安定な状態になります。

フリーラジカルは口腔内に唾液などの液体の中では互いに反応し合って消えてしまいます。 したがって、フリーラジカルを摂取しても、毒性学的にもその他にも有害な影響はありません。 このことは、食品照射に対して認められている最高線量の4倍以上の線量の45kGyで照射された非常に乾燥した粉ミルクを動物に与えた長期にわたる試験によって確認されています。 その結果突然変異を起こさせるような影響は認められませんでしたし、腫瘍も形成されませんでした。 9世代にもわたって動物に対して有害な影響は何も認められませんでした。

photo 非照射のトーストしたパンは実際のところ照射した乾燥食品よりも多くのフリーラジカルを含んでいますが、無害であると思われています。




(訳注1)
WHOのレポートによると食品に60kGyの放射線をあてたとしてもそれによって生ずる放射線分解生成物は1kgあたり数十mg程度としています。

(訳注2)
FDAは、豊富な放射線化学のデータに基づいて、食品に1kGyの放射線をあてた場合の放射線分解生成物は約30ppm未満、そのうち、非照射食品中には見いだせない特異的なもの(URP)は10分の1の3ppm未満であり、さらに個々のURPは1ppm未満と推定しています。

(科学技術文献)
「照射食品の安全性の評価についての勧告」
Recommendiation for Evaluating the Safety of Irradiated Food", by A.P.Brunetti et al.,Final Report prepared for the Director Bureau of Foods, US Food and Drug Administration,Washington DC(1980)

「放射線分解生成物の安全性」
"Radiolytic Products-Are They Safe?",by C.Merritt,Safely Factors Influencing the Acceptance of Food Irradiation Technology, IAEA TECDOC-490,Vienna(1989)

「照射食品の安全性」
Safety of Irradisted Foods,by J.F.Diehl,Marcel Dekker,Inc,New York(1990)