1.放射線照射は腐敗した食品を食べられるようにしたり、汚染された食品をきれいにするために使うことができますか?


いいえ、できません。

食品照射をはじめ、いかなる食品処理技術も腐敗過程を逆転することはできないし、品質の悪い食品をよくすることもできません。 照射する前にすでに食品が悪くなっているように見えたり、変な味がしたり、変な臭いがしたりして腐敗の兆候が出ていれば、食品照射をはじめいかなる食品処理によっても食品を救うことはできません。 どのような処理をしても、悪い外観や変な味、変な臭いは残るでしょう。食品照射は魔法ではありません。

しかし、加熱殺菌、燻蒸、放射線照射などの処理は、食品の微生物汚染を制御するのに効果的です。 加熱殺菌や燻蒸は、何十年間もの間、食品をきれいにするために、特に牛乳などの液体食品の中の病原性微生物を殺菌したり、香辛料や乾燥食品の中の腐敗性微生物や昆虫を殺滅するために、効果的に使われてきました。 これらの処理は人々の健康を守るためにわざわざ行われているものです。 たとえば、食品に由来する疾病と関係があるサルモネラ菌、赤痢菌、キャンピロバクターのような微生物を殺菌するために、これらの処理が行われています。 放射線照射は個体の食品、特に動物性の食品を通じて伝染する寄生虫による疾病を制御する手段として特に効果的です。

加熱、冷凍、薬剤処理、放射線照射のような食品処理は、適正な、また、衛生的な取り扱いの代替えとして用いるべきではありません。 国内および国際的なレベルで、GMP(訳注)は個々の食品の取り扱いを律するものです。 さらに放射線照射などの処理を施す予定があるかどうかということには関係なく、常に食品の製造においてGMPは遵守されなければなりません。

photo 食品照射は、多くの国において、香辛料や乾燥野菜の衛生的な品質を保証するための手段としてさかんに利用されるようになってきています。

(訳注)
日本では法制度上、GMPと同一の仕組みはありませんが、衛生面を含む食品の安全かつ適正な加工、取り扱いなどについては、食品衛生法や農林水産物の規格および品質表示の適正化に関する法律などに基づく指導が行われています。



(科学技術文献)
「食品照射」
"Food Irradiation",by Geoffrey Campbell-Platt,Parofessor of Food Technology,Dpartment of Food Science and Technology,university of Reading,United Kingdom,The Food Safety Advisory Centre,London

「FAO/IAEA食品の寄生虫の寄生性を制御するための食品照射の利用に関するプロジェクトの第2回研究調整会合」
Reprot of the Second FAO/IAEA Research Co-ordination Meeting on the Use of Irradiation to Control Inafectivity of Food-Bome Parasites IAEA(1989).

「乾燥食品素材の照射」
"Irradiation of Dry Food Ingredients,by J.Earkas CRC Press Inc.,Boca Raton Fiorida(1988)