1.食品が適切に照射されていることを保証するために照射工程を管理する措置はありますか?


はい、存在します。

過去30年間、医療用具のような食品以外の製品を処理するための照射施設での作業を管理するために、法律や規則が施行されてきました。 世界中で約160のこのような照射施設が稼動しています。 このような照射施設は、建設する前に、政府当局の許可を受けなければなりませんが、安全で適切に運転されていることを保証するために、定期的に立ち入り検査、監査、およびその他の調査を受けることになっています。 このような政府による管理は食品を照射する照射施設にとっても有効なものですその照射対象物が薬品であれ、果実であっても、また処理技術の種類に関わりなく、処理した製品のロット毎の追跡が可能であるという原則は工程管理の非常に重要な部分を占めます。

国際的には、多くの食品に対するGMPや適正照射基準のための暫定的なガイドラインがICGFIによって策定されています。 ガイドラインは照射処理、取り扱い、流通のすべてに関する項目を含んでいます。 これらのガイドラインは、商業規模で照射を実施する際に必要な詳細な手順を作成するための適切な基準となるものです。

これらのガイドラインは、他のすべての食品加工技術と同様に、照射施設の管理のために必要な場所で、効果的な品質管理システムを導入して監視することが必要であると強調しています。 食品は照射前、照射中、照射後のいずれにおいてもGMPに従って取り扱い、貯蔵し、輸送しなければなりません。 微生物に関わる基準および他の品質基準に適合する食品のみ照射されるべきです。

FAO/WHO国際食品規格委員会は、食品の照射に関する勧告規格を出しています。 これらの規格には、照射施設、照射の日付、ロットの確認、線量など照射に関する詳細な事柄が確認できる輸送記録を照射食品には添えられるべきであると、記載されています。

さらに、ICGFIは、定められた運転基準に合った照射施設の国際登録を実施しています。 ICGFIは、照射施設のオペレータ、管理者、監督者を対象に、GMP、線量測定、記録保存、ロットの確認に主眼をおいたトレーニングコースを開催するとともに、食品管理に携わる当局者を対象に、食品照射の工程と照射食品の販売に対する必要かつ適切な検査手順に主眼をおいたトレーニングコースを開催しています。

photo (訳注)
日本では照射施設の稼動時に、照射施設の安全確保および適正線量の照射の確認のため放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律および食品衛生法に基づく立ち入り調査が実施されています。 また、事業者側でも毎日線量計をコンテナの中に入れ、適正線量で照射されていることを確認しています。




2.これら規制による管理のほかに、食品が照射されたかどうかを見分ける方法がありますか?


はい、ある程度までならあります。

食品が照射されたかどうかを判断するためのいくつかの科学的な方法が研究されています。 これらには、照射した香辛料の検知のための熱ルミネッセンス測定、骨を含む肉、食鳥肉、魚介類の照射を検出するための電子スピン共鳴、そしていくつかの科学的な方法などがあります。

しかしながら、すべての種類の食品の照射を検出したり、照射された放射線量を推定することが可能な信頼できる単一の、温度に変化を与えるような物理学的な変化を起こさず、食品中に無視できるほどの化学変化しか起こさないということがあげられます。

処理した製品を識別するための単一の方法がないということは、放射線照射に限ったことではありません。 有機農業により栽培された農作物は分析しても識別することはできないし、またユダヤ教やイスラム教の戒律に従って屠殺された肉も識別することはできません。 さらに、冷蔵食品や冷凍食品については、流通の途中で生じたかもしれない容認できないような温度変化を知ることはできないし、また加熱滅菌(缶詰)した食品については、正しい時間と温度の管理のもとに処理が実施されたことを加熱処理後に確かめる方法はありません。

(訳注)
日本でも照射食品の検知法の確立について幾つかの方法について研究が実施されており、また、このための国際プロジェクトに参加しています。

食品照射は食品の外観、形、温度を変えるような物理学的な変化は起こさず、食品中に無視できるほどの化学変化しか起こしません。



(科学技術文献)
「照射食品に関する国際一般規格と食品照射実施に関する国際規準」
Codex General Standard for Irradiated Foods and Recommended International Code of Practice for the Operation of Irradiation Facilities Used for the Treatment of Food,The Codex Alimentarius,Vol.XV.(1984)

「食品照射の線量測定マニュアル」
Manual of Food Irradiation Dosimetry,Technical Report Series No.178,IAEA,Vienna(1977)

「食品照射のためのガンマ線照射施設の管理と運転における線量測定基準の利用」
「食品照射のための線量測定システムの選択と利用」
American Society for Testing and Materials Standards,E1204(Practice for Application of Dosimetry in the Characterization and Operation of a Gamma Irradiation Facility for Food Processing),and E1261(for the Selection and Appllcation of Dosimetry Systems for Radiation Processing of food),American Society for Testing and Materials,Phlladelphia,PA(1990)