1.食品照射は食品の値段をつり上げませんか?


どのような食品の処理でもコストがかかります。 しかしながら、ほとんどの場合、食品が処理されたという理由だけで、食品の値段が上昇するとはかぎりません。 多くの要因が食品の値段に影響を与えており、それらの要因の一つが処理コストです。 缶詰、冷凍、低温殺菌、冷蔵、燻蒸、照射などの処理は食品の値段を上昇させるでしょう。

これらの処理は、食品の入手の可能性と量の確保、貯蔵期間、便利さ、食品の衛生面の改善という点に関して、消費者に利益をもたらしてくれるでしょう。 もう少し詳しくいうと、じゃがいもやたまねぎの発芽抑制のような低い線量の照射のコストは1トンにつき10〜15米ドルの範囲で、衛生的な品質を確保するための香辛料の照射のような高い線量の照射のコストは1トンにつき100〜250米ドルの範囲です。 これらのコストは他の処理と十分に競争力があります。食品照射の方がかなり安くなる場合もあります。 たとえば、タイやアメリカにおける果実の殺虫処理の場合、照射コストは蒸熱処理のコストのわずか10〜20%にすぎないであろうと推定されています。

photo (訳注)
日本でのじゃがいも照射のコストは2〜4円/キログラムといわれています。 なお、地域や時期により差があると思いますが、じゃがいも自体の小売りの値段は200〜300円台/キログラム程度です。




2.典型的な食品照射用施設の建設費はどれくらいですか?


食品照射施設を建設するためのコストは、その規模、処理能力その他の要因によって異なりますが、100万〜300万米ドルの範囲内です。 これは他の食品処理技術における処理施設の建設費の範囲内です。 たとえば、牛乳、フルーツジュースその他の液体食品を滅菌するための中規模の超高温加熱処理施設の建設費は約200万米ドルです。 果実の殺虫処理のための小さな蒸熱処理施設は約100万米ドルの経費が必要です。



(科学技術文献)
「途上国における食品照射設備のコストの変動要因」
「アフリカの途上国のための食品照射」
Morrison,R.M.and Roberts,T.,"Cost variables for Food Irradiators in Developing Countries",Food Irradiation for Developing Countries in Africa,IAEA TECDOC-576(1990)

「可能性予備調査のためのハンドブック;食品照射の経済性に関するワークショップの議事録」
Handbook for Conducting Feasibility Studies,Proceedings of a Workshop on Economic Feasibility of Food Irradiation,ICGFI(1986).