1.消費者が照射食品の購入に反対しているというのは本当ですか?


いくつかの西欧諸国で実施されたアンケート調査の結果は、大多数の消費者が照射食品を購入したいと思っていないことを示している傾向があります。 しかしながら、これらの調査のほとんどは、食品照射の安全性、利点、限界に関する十分な予備知識を与えずに、電話あるいは街頭インタビューで実施されたものです。十分な情報を持たない消費者は照射食品と放射能汚染食品をしばしば混同しています。

食品に関しては、消費者の態度は新しい食品や特に新しい食品処理技術を受け入れることに対し、保守的になる傾向があります。 例えば、牛乳の低温加熱殺菌が導入されたときにも消費者はこのような態度をとっていました。

photo 消費者が十分な知識のもとに、意見を述べたり選択をする機会が与えられるなら、その結果は違ったものとなります。 正確で真実に基づいた情報の提供のもとに実施されたアンケート調査で、照射食品に対して、もっと肯定的な結果がえられたことにより、この証明がされています。 試験販売において、非照射食品と一緒に照射食品を表示して店頭に並べると、消費者は喜んで照射された食品を買う意向を示し、多くの場合、照射された食品の方を好む、との意見を述べております。 アルゼンチン、バングラデシュ、チリ中国、フランス、ハンガリー、インドネシア、イスラエル、フィリピン、ポーランド、タイ、アメリカで過去数年間に試験販売が実施され、いずれの結果も照射食品に好意的でした。




2.どのような照射食品が試験的に商業規模で市場で販売されてきましたか?


いろいろな国で過去10年間に、多くの照射食品の試験販売が実施されました。

りんご、じゃがいも、たまねぎ、イチゴ、マンゴー、パパイヤ、魚の干物、発酵豚肉ソーセージなど多くの照射食品が市場に出されました。 照射された食品に対する消費者の反応は常に肯定的なものでした。

マンゴー
ミバエの殺虫と腐敗の遅延を目的として、1986年9月、約3トンのマンゴーがプエルトリコにおいて1KGy以下の線量で照射されました。 照射したマンゴーは販売するため、フロリダのマイアミに空輸されました。 それらは北マイアミビーチのファーマーズマーケット(農産物の直売マーケット)で、非照射マンゴーと一緒に、照射された旨の表示をして情報提供のためのパンフレットを添え、販売されました。 その照射マンゴーは非照射マンゴーと同じか、あるいはそれ以上の値段で売られましたが、照射マンゴーの方がよいと考えた買物客が購入しました。

パパイヤ
ハワイ産のパパイヤが1987年3月、カリフォルニアのロサンゼルスに空輸され、検疫規定に適合させるため、0.41〜0.51kGyの線量で照射されました。 そのパパイヤは、カリフォルニアのアナハイムおよびアービンの二つのスーパーマーケットで、FDAの規則にしたがって表示して、ハワイで熱湯浸漬で殺虫処理されたパパイヤと一緒に並べて、販売されました。 この2種類のロットのパパイヤの試験販売期間中に200人以上の消費者がアンケート調査に回答しました。 試験販売の当日、照射されたパパイヤが60キログラム、熱湯浸漬で殺虫処理されたパパイヤが5.1キログラム売れました。 このことは11対1を超える割合で照射パパイヤの方が好まれることを表しています。 アナハイムで試験販売にアービンでは5人に4人までがもう一度照射パパイヤを買うだろうと述べていました。

イチゴ
フランスのリヨンにおいて1987年と1988年の2回、2kGy照射した7トンのイチゴがスーパーマーケットのチェーン店で試験販売されました。 照射イチゴは、RADURAマークとともに「イオン化処理」という言葉で表示され、非照射イチゴより少し高い値段で売られました。 消費者は、品質がよいので、照射したイチゴの方を買うと述べていました。

発酵豚肉ソーセージ
タイで大衆的な人気のある発酵豚肉ソーセージ(ナム)が1986年に照射されて、バンコクの2〜3のスーパーマーケットで非照射のナムと並べて売られました。 ナムは通常料理したり、熱を加えたりせずに生の状態で食べられるのであり、サルモネラ菌などの病原性微生物や害虫である旋毛虫による汚染が起こります。 これらの病原性微生物や寄生虫による汚染を防ぐために、ナムは2kGy以上の線量で照射され、タイの食品医薬品局の規則に基づいた表示がされました。 1986年に行われた138人の消費者に対する調査では、34.1%が好奇心から照射ナムを購入し、65.9%が微生物に関して安全であると信じて照射ナムを購入しました。 10人に9人以上、すなわち94.9%の消費者が再び照射ナムを買うだろうと答えました。 1986年に調査が実施された3ヵ月間に、照射ナムは10対1の割合で非照射ナムよりも多く売れました。

ここに紹介したものをはじめとする試験販売において、照射食品を選択した最も重要な要因はすぐれた品質と安全性にあるように思われます。 現実の市場で実施されたこれらの試験販売のいずれにおいても、十分な情報を与えられた消費者が照射食品を受け入れないことはありませんでした。

(訳注1)
日本ではこれまでに一度も試験販売が実施されたことはありません。

(訳注2)
日本では食品衛生法の規定により、照射じゃがいもの包装容器に放射線を照射したことを表示して販売することが義務付けられています。






3.照射食品は日常的に売られていますか?


はい、売られています。

現在23カ国で照射されている食品のほとんどは、食品加工用と業務用(たとえば給食産業と外食産業)にあてられていますしかしながら、フランス、オランダ、南アフリカ、タイなど、一部の国では、イチゴ、マンゴー、バナナ、エビ、カエル脚、香辛料、発酵豚肉ソーセージなどの照射食品がすでに日常的に市場で販売されています。

これらの照射食品は、照射処理した旨とその目的を表す表示をして、非照射のものと並べて売られており、順調な売り上げを示しています。消費者は照射商品の購入に抵抗を示していません。

(訳注)
1ページで24ヶ国となっているのは、1ページと38ページの作成時期が異なっているためです。 具体的な国名は次の通りです。 アルゼンチン、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、中国、キューバ、デンマーク、フィンランド、フランス、ハンガリー、インドネシア、イラン、イスラエル、日本、韓国、メキシコ、オランダ、ノルウェー、南アフリカ、タイ、ウクライナ、イギリス、アメリカ、ユーゴスラビア、クロアチア、チェコ。



photo (科学技術文献)
「プエルトリコにおけるマンゴーの試験販売の概要」
"Summary of the Puerto Rico Mango Consumer Test Marketing"by Giddings G.C.,Food Irradiation Newsletter 10,(1986).

「照射パパイヤの試験販売に対する店頭における消費者の反応」
Consumer In-Store Response to Irradiated Papayas by C.M.Bruhn and J.W.Noell,Food Technology,(September 1987).

「どうすれば照射食品の販売において消費者に受け入れられるか」
「食品照射の実用化に影響を及ぼす要因」
"How to Win Consumer Acceptance in the Marketing of Irradiated Food"by P.Moog Factors Affecting Practical Application of Food Irradiation IAEA TECDOC-544(1988).

「照射したナム(発酵豚肉ソーセージ)の消費者の受け入れ」
"Consumer Acceptance of Irradiated Nham(fermented pork sausage)"by Y.Prachasitthisak U.Prlingsulka and S.Chareon Food Irradiation Newsletter 13(1989)