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健全性(WHOLESOMENESS):毒性・微生物学的安全性、栄養学的適格性を総合した考え方

誘導放射能の評価


発表場所 : 食品照射研究運営会議
著者名 : 浦久保 五郎、長谷川 明
著者所属機関名 : 国立衛生試験所
発行年月日 : 昭和46年 6月30日
照射馬鈴薯中の誘導放射能について

1. 実験
2. 結果および考察



放射線照射による馬鈴薯の発芽防止に関する研究成果報告書[付録]−1.照射馬鈴薯中の誘導放射能について


照射馬鈴薯中の誘導放射能について

 食品に放射線を照射すると食品中に誘導放射性核種が生じ、衛生上の問題になるのではないかということはCo−60のγ線を線源として使用した場合理論上考えられないことであるが、使用する線源たとえば電子線や食品の種類によっては一考の余地もあろうと思われる。

 著者らは当試験所においてγ線照射した馬鈴薯に関する毒性や化学の研究が行なわれた際に、その試料の一部を入手したので参考のためにγ線スペクトルの測定を行なった。

1. 実験

 試料はすべて電気炉で灰化した。灰化には、馬鈴薯は表皮をむいた後細切し赤外ランプ下において乾燥し、電気炉で500℃以下で灰化した。試料や灰の重量などを第1表に示す。

 γ−スペクトルの測定にはRCL社製チャンネル波高分析器、NaI(Tl)結晶(φ4×2inch,Horshow社製)を用いた。各試料の灰は合成樹脂製容器(φ10×4cm)に入れ、分析器の検出部の上に置き、24時間測定を行なった。

 また別に各試料灰のgross β放射能の強さを測定した。試料灰を乳ばちで粉末とし各正確に100mgをステンレス製試料ザラにとり、日本無線社製ローバックガスフローカウンターで測定した。特級塩化カリウム100mgを同様に試料ザラにとったものを標準とし、放射能の強さをpCi単位であらわした。


第1表 γ線スペクトル測定用試料
           
60krad照射馬鈴薯   
非照射馬鈴薯        
照射年月日      
昭和42年10月23〜25日
              
馬鈴薯生の重量(kg)
17.2          
18.1          
馬鈴薯灰の重量(g) 
110.5         
114           
測定に使用した灰の重量
(g)        
100           
              
100           
              
灰化した年月日    
           
昭和42年11月18日   
〜12月3日        
昭和42年11月18日   
〜12月3日        
γ線測定年月日    
昭和43年6月24〜25日 
6月25〜26日      
品種および産地    
男爵 北海道産       
男爵 北海道産       


2. 結果および考察

 波高分析器により得られたスペクトルを第1〜2図に示す。図中のa,bのピークはそれぞれCs−137とK−40のピークに相当すると思われ、前者はfall−out,後者は天然の存在により含まれているものである。

 また予期したように馬鈴薯についてγ線照射したものとしないものとの間にはスペクトルに差がみられない。

 また各試料灰のgross β放射能の強さは第2表に示すとおりであった。

 馬鈴薯についてγ線照射したものとしないものの間にはγ線スペクトルでもβ放射能の強さにも差はみられなかった。γ線スペクトルについては、NaI(Tl)検出器の性能ではとうてい細かい差がみられないし、その他Co−60γ線照射から測定まで約3ヶ月経過していること、試料に熱をかけて灰化してから測定していることなどの条件を考えると差のみられないのは当然である。このように精密さを欠く実験結果ではあるが、食品のγ線スペクトルはあまり報告されていないので、本実験結果は食品衛生上の論議に何らかの寄与をすると思われる。


第2表 馬鈴薯の全β放射能
 試  料 
PCi/100mg灰 
PCi/100g生試料
照射馬鈴薯 
32.8       
210.9      
非照射馬鈴薯
33.2       
208.9      



第1図 Co−60γ線で照射した照射馬鈴薯灰のγ線スペクトル



第2図 非照射馬鈴薯灰のγ線スペクトル





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