放射線照射による玉ねぎ中の誘導放射能は、Co−60のγ線を用いた場合考えられないことであるが、玉ねぎの放射能含有の状態を知るために以下の実験を行なった。すなわち、著者らは当研究所においてγ線照射した玉ねぎに関する毒性や化学の研究が行なわれた際に、その一部を入手したので参考のためにγ線スペクトルの測定を行ってみた。又その際粉乳、しょう油のサンプルが手許にあったので同時に測定したので報告する。
試料はすべて電気炉で灰化した。灰化には玉ねぎの表皮をむいた後、細切し赤外ランプ下において乾燥したのち灰化した。試料の灰の重量などを第(1)−1表に示す。γ線スペクトルの測定にはRCL社製チャンネル波高分析器NaI(Tl)結晶(φ4×2inch,Harshow社製)を用いた。各試料の灰は合成樹脂製容器(φ10×4cm)に入れ、分析器の検出部の上に置き、24時間測定を行った。また別に各試料灰のgross β、放射能の強さを測定した。試料灰100mgを試料皿にとり、ローバックガスフローカウンター(日本無線製)で測定した。標準に特級塩化カリウム100mgを同様に試料皿にとり、放射能の強さをpCi単位であらわした。
試 料 |
γ線30krad 照射玉ねぎ |
未照射玉ねぎ |
脱脂粉乳 |
しょう油 |
照射年月日 |
昭和42年 11月20〜22日 |
− |
− |
− |
生の重量(kg) |
15.5 |
16.4 |
3.1 |
2(l) |
灰の重量(g) |
57.0 |
60.5 |
24.5 |
370 |
測定に使用した 灰の重量(g) |
57.0 |
60.5 |
100 |
100 |
灰化した年月日 |
昭和43年 1月12日〜2月1日 |
昭和43年 1月12日〜2月1日 |
昭和42年 11月30日〜12月9日 |
昭和42年 10月1日〜3日 |
γ線の測定年月日 |
昭和43年 1月31日〜2月2日 |
昭和43年 1月31日〜2月2日 |
昭和43年 1月26〜27日 |
昭和43年 1月29〜30日 |
産地及び品種 |
北 海 道 |
北 海 道 |
昭和41年 北 海 道 |
昭和42年 製 造 |
波高分析器により得られたスペクトルを第(1)−1〜4図に示す。図中のa,bのピークはそれぞれCs−137とK−40のピークに相当すると思われ、前者はfall−out、後者は天然の存在により含まれているものである。Cs−137のピークは玉ねぎの灰ではみられず、しょう油でもあまり著明でなく、脱脂粉乳では著明である。また予期したように、玉ねぎの照射、未照射との間にはスペクトルの差がみられない。
また各試料灰のgross β放射能の強さは第2表に示すとおりであった。玉ねぎのγ線照射したものとしないものの間にはγ線スペクトルでも、β放射能の強さにも差は認められなかった。
以上のようにγ線スペクトルについては、検出器の性能や、測定までに3か月経過していること、試料に熱をかけ灰化していることなどの条件を考えると差のみられないのは当然である。以上のような実験結果ではあるが、本実験が食品衛生の議論に何らかの寄与をすると思われる。
試 料 |
pCi/ash 100mg |
pCi/raw Sample 100g |
たまねぎ |
29 |
107.1 |
照射たまねぎ |
32.4 |
118.9 |
脱脂粉乳 |
20.6 |
1626.6 |
しょう油 |
1.8 |
329.3 |
塩化カリウム |
40.5(50cpm) |
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