FAO/IAEA/WHO の照射魚介類の Good Irradiation Practice (GIP) 1991
照射魚介類中のボツリヌス菌について
アメリカ合衆国原子力委員会の報告書より
昨年の本誌にアメリカ合衆国陸軍 Natick 研究所の研究報告やこれを評価する同国の議会資料を中心に照射食品の安全性についての研究を概観した1)。彼らの研究は軍用食を念頭に置いた研究であった。もう一つの研究中心はデンバーにあった Fitzsimons Army Hospital の Medical Nutrition Laboratory であった。国防省の環境回復計画の一環として、1999 年ころまでにこの研究所は閉鎖されたという2)。
一方、民生技術として照射食品を考えたのはアメリカ合衆国原子力委員会 (Atomic Energy Commission、AEC) であった。この分野で重要な成果をあげながらも、原子力開発と規制を同じ部署が担当するのはおかしいという批判 (Let the wolves watch the goats) を受け、1975 年には AEC の開発部門はエネルギー省 (DOE) に、規制部門は原子力規制委員会 (NRC) に組織替えとなり、1979 年のスリーマイル島事故に AEC は遭遇することはなかった3)。
平和目的の原子力利用 (Atoms for Piece) 政策のもと、低線量照射食品の開発は 1961 年から 1969 年ころまで続いた。生鮮食品である果実、魚介類を中心に照射食品技術の民生応用に力が注がれた4)。照射のメリットは加熱殺菌と異なり、見かけ上の変性が少なく、菌数を減少させられることがあげられていた5, 6)。この魚介類の研究は AEC 組織再編成の荒波の中途中で打ち切りとなり、FDA に対して許可申請できなかったが、1970 年 IAEA/FAO 合同委員会は照射魚介類の健全性に関するファクターとしてこのボツリヌス菌があることを認識するに至った7)。
この問題は FAO/IAEA/WHO が 1999 年に出した報告書でも取り上げられており、放射線耐性が強く非蛋白分解性 B、E、F 型ボツリヌスの危険性を指摘している8)この報告書によると、ボツリヌス A、B 型の D-10 値 (菌数を 10 分の 1 に減少させるのに必要な吸収線量) は 3 から 4kGy もあり、さらに放射線殺菌の効力を示し始める線量も 4kGy 以上であることから、食品照射を利用する上でもっとも配慮をするべき点であるとしている。これらボツリヌス A、B 型は 10℃ 以下では増殖しないが、E 型は冷蔵温度 3−4℃ で増殖・毒素産生をするので、魚介類では特段の注意が必要であるともしている。蛋白分解性 A、B、F 型の増殖が進むと悪臭を放つが、非蛋白分解性 B、E、F 型はそのような悪臭を発生しないので消費者は容易にこれらの菌の汚染を見逃すことになるだろうとしている。IAEA/FAO が無条件で照射魚介類は安全であるとはいえなかったボツリヌス菌問題を中心に魚介類への照射技術応用研究の歴史を本稿で述べたい。同時にこの壁を乗り越えようとする NASA やカナダの動静を紹介したい。
1968 年頃、この計画の対象となった食品は表 1 に掲げる 10 種の魚介類のほかに、卵、米、小麦、イチゴ、キノコ、トマトなどが対象となっていた。イチゴなどの例外を除き、生野菜や青果物は放射線耐性が極めて低いことが判明した。また、米や小麦は放射線によるデンプン鎖の切断により、加工適性に大きな変化が起きることが明らかになった。この研究結果に基づき、1970 年代の NASA スペースラブ計画の時、パン原料の小麦に照射して用いたことがあった10)。卵については冷凍卵、乾燥卵、液卵の検討をしたようだが、現在のところその報告書を見つけることができない。
当時は、漁業資源の活用と保護を広めようとする動きが盛んで、鮭の養殖などの技術が盛んに研究されていた。一方、水産物は足が早く、せっかく漁獲しても腐敗のために廃棄することが多かった。冷凍設備や缶詰など保存技術の改善でこのような無駄は減ったが、生食用の魚介類に応用できる技術の選択肢が少ないのは今と変わらない。
流通段階で保存期間を延ばすことができれば、貴重な水産資源の無駄使いを減らすことが出来る。AEC は照射魚介類の開発に大きな関心を持っていた。表 2 に掲げるような線量で照射すると保存性が向上するという結果を 1966 年に中間的に発表していた11)。多くの魚について線量が決められたようだ。官能試験を行い、品質に異常を感じない線量を決めている。香辛料や肉に比べ、その推奨線量の低いことに注目して頂きたい。魚には DHA などの高度不飽和脂肪酸が含まれているので、高線量照射には耐性が低いものと考えられる。また、保存温度が 1℃ という点も見逃せない。照射後の温度管理が厳しいことを物語っている。
本稿の "ボツリヌス菌株による放射線耐性の違い" から "魚種の違いの影響" の項で引用した報告書はこの時書かれたもので、契約番号で識別されている。一年に一回開催された契約研究者報告会のレジメ12)とは別にその報告会の後それぞれの研究者から AEC に提出されたものだ。全体としては膨大な資料であるが、その中からボツリヌス関連の資料を集めたライブラリーがあったので、それらに基づき本稿を記述する。
2004 年春に某大手水産会社がカナダ産のホッキ貝 (図 1) を中国で 4kGy 照射し、我が国に輸入し、主に "すしだね" として販売したという事件があった13)。2000 年にもカナダ産鮭の薫製を照射し、我が国に輸出したとういう記事が話題になった14)。これは、過照射により、異臭が生じ、販売できず、損害を被ったという裁判記事として、その事件が明るみに出た。この照射施設は NASA の宇宙食を作っていたことで知られていた。筆者がここを訪れたときは、照射室や保存区域には冷蔵設備がなく、温度管理といえば断熱シートをかけるだけだと責任者は説明してくれた。工場は亜熱帯のフロリダの中央にあり、外気の暑さと崩壊熱とで、照射室は 40℃ 近かった。ついでに、照射前後の保管はどうするのかと質問したら、輸送の保冷車を待たせておくのだという。それくらい照射は迅速だと言いたかったのだろう。NASA の牛のステーキより薫製さけの照射は線量管理、温度管理など技術的に難しいことを知らなかったのかもしれない。後に述べる IAEA の勧告をまじめに実行していたら、裁判沙汰にはならなかったかも知れない。2004 年に内容を秘密にして、両者は和解しこの裁判は終わった15)。
我が国おける最近の照射違反事例を見るとき、魚介類に対する照射事例が多い。これは我が国の水産物を刺身やすしとして生食する習慣と無縁でないだろう。江戸前のすし種は少なくなり、日本から遙か離れた漁場で水揚げされた水産物が、はるばる日本の市場に運ばれてくる。この流通経路の長さ、複雑さは同時に衛生管理の煩雑さにつながっている。少しの油断も直ちに菌数の増加、ヒスタミンの増加など品質の劣化を招くことになるだろうことは想像に難くない。このため、漁船内の冷蔵庫については、厳しい衛生管理が行われている16)。このように魚介類は他の食肉食品に比べて極めて腐りやすいことは経験的に理解できるが、なぜ腐りやすいかの問いに科学的に答えるのは難しいようだ。腐敗が早い理由は、筋肉の性質が牛豚に比べて、柔らかで、死後硬直の時間が短く (1 日程度)、体内に水やエキス分を多量に含んでいるので、細菌の攻撃を受けやすいためと一般的に考えられている。また、海水中には低温で増殖する細菌が多数存在し、冷蔵など通常の方法では菌の管理が難しいことも腐敗し易い原因と考えられている17)。その低温で増殖する菌の内、ヒトにもっとも危険な菌はボツリヌス菌であると考えられている。
Figure 1 Hen-clam 北寄貝 この貝は北日本の各地で水揚げされる。 |
この菌による我が国における大きな事故は 1984 年熊本芥子レンコン事件と呼ばれるもので、36 名の患者のうち 11 名が死亡するという深刻な被害を与えた18)。ボツリヌス菌は芽胞形成する嫌気性菌で、低酸素あるいは無酸素下、低温で繁殖し毒素を産生することが知られている19 〜 21)。ヨーロッパの湖などで低温時に多くの魚が死亡することが問題となり、その原因究明からボツリヌス菌の危険性は明らかとなった。そもそもボツリヌス菌による中毒は古代ギリシャ・ローマ時代から知られ、ソーセージ中毒症と言われていた。1895 年ベルギーの Ellezelles で、生ハムを食べた人が神経性麻痺を起こす食中毒の原因追及のなかで E. Van Ermengen によって、この菌は発見された。中毒の原因はこの菌が生産する毒素であることも明らかにされた。中毒症状は付表 2 に示した。また、毒素量の検査方法は付録 3 に示した。
ボツリヌス菌の形態は図 2 に示すように、比較的大きな菌である。毒素はポリぺプチドで 150kDa、その毒性はきわめて強く、生物化学兵器にも使用できると言われるほどである。
表 3 に示すように、この毒素はその毒素抗原性から A 〜 G まで 8 つに分類されているが、分類としては単一の菌種とされる。人間に対する毒性は E 型がもっとも強く、A、B、C、F も人間に対して毒性を示す。土壌由来のこの菌は、その分布に地域性があり食中毒原因菌の毒素型と一致することが多い21)。一般に魚から検出されるボツリヌス菌の毒素型は E である。後に述べるように、当初 AEC の研究が全米各地で実施された理由の一つはこのような地域特性を考慮したためと考えられるが、結局は実験結果を比較するために菌株を統一することになったのだろう。
Figure 2 Clostridium botulinum ボツリヌス菌の電子顕微鏡写真
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表 4 に掲げるような条件が整う必要がある。ボツリヌス菌は酸素の少ない状況で成育し易い。酸素を透過できないような包装はその危険性を増すと考えられている。pH が 4.6 以上 9 以下でないと増殖しない。従って、酢でしめたような魚介類のように、酸性の強い食品にはボツリヌス菌の脅威は少ない。また、水分量が少ない食品もこの菌が増えない条件である。後で述べるように NASA は食品照射よりも、低水分性の保存技術を多用している。低温でも増殖可能である。もっとも良く増殖できる温度は 35〜40℃ くらいであるが、増殖可能な最低温度は 3.3〜10℃ である。
照射魚介類の場合、照射による溶存酸素の減少、pH の変化、酸化剤の生成などボツリヌス菌の生育条件に大きな変化が生じることが考えられる。
彼らは食品照射の研究を自前の研究所ではなく、いわゆる契約研究所に委託して研究を進めた。
この研究の中心的な役割は、商務省の大気海洋局の研究所が担った。各地にある水産研究所はそれぞれの地域の魚介類を受け持った。今回入手できた最終報告書はシアトルにあるモントレーク研究所 Montlake Laboratory が主研究者となって実行された22)。この研究所の設立は 1931 年で、主に鮭の生態調査、稚魚のふ化放流、漁獲高などの監視を業務としていたが、加工技術の開発もその業務の範疇にあった。このレビューに登場するもう一つの研究所はミシガン湖岸の Ann Arbor にあった Ann Arbor Biological Laboratory である。魚による生物濃縮に関する研究により、DDT の使用禁止や使用制限に貢献したことでこの研究所は有名である。1970 年に組織替えにより閉鎖された23)。
この研究で明らかにするべきことは腐敗開始時期とボツリヌス毒素産生時期とどちらが先かと言うことであった。これは、一般細菌は低線量照射によって、殺滅され魚介類の腐敗は遅くなるが、ボツリヌス菌の芽胞は残存するので、保存条件によっては発芽増殖し毒素を産生する可能性がある。ボツリヌス菌や毒素があっても、食品のにおいや味が変化しないので、このような毒素の存在を官能的に知ることは出来ない。そこで、照射魚介類が悪臭などの腐敗の兆候が感じられる前に、ボツリヌス菌が毒素を産生すると危険である。腐敗と毒素産生の時期を調べる必要があった。
実験に使用したボツリヌス菌は魚から検出される頻度が高い毒素 E 型であった。これには種々の株があり、性質が少しずつ異なっている。これらの菌の放射線耐性の違いを中性リン酸緩衝液中で調べ D-10 の値を求めた24)。表 5 に示すように、もっとも耐性の低い Alaska の D-10 値は 1.2kGy で、耐性のもっとも高い株の 2.4kGy に比べて半分しかない。この AEC の研究では、おもに Beluga 株が用いられたが、他の株を使ったために別の結果が得られることもあったようだ。
表 6 は二種の株 Beluga と Kalamazoo をアカイサキ (Freshwater Perch) に接種して毒素産生までの期間を調べた25)。表 6 から明らかな様に、未照射試料の場合、Kalamazoo 接種試料の方が Beluga 接種試料より早く毒素産生が観察された。しかし、照射試料を比較すると Kalamazoo 接種試料からは毒素が検出されなかったが、AEC の標準株 Beluga 接種試料は毒素産生が観察された。
D-10 の違いだけでなく、放射線に対する基本的な性質が異なっているのかも知れない。Kalamzoo 株は研究をした Ann Arbor の近くで分離されたものと推測される。
このようにボツリヌス菌の性質は地域ごとに異なることが知られ、特に毒素型の地域特性が研究されている19, 21)。水の堆積層に E 型が多く、アメリカ合衆国の 5 大湖周辺、北欧、日本の北部で高頻度で見つかる。これが魚介類に付着して、食中毒の原因になるとされる。未開墾の土壌からは A 型、開墾された土壌からは B 型とされるが、A 型の発症は米国ではほぼ全土で見られる。野菜がこの毒素産生菌を媒介することが多い。B 型は中部南部ヨーロッパが多いとされるが、アメリカ合衆国の統計では、乳児ボツリヌス症の原因毒素であることも多い。家禽や鳥類の中毒事例は C、D 型によることが多い。このように土壌に生息するこの菌はどこにでも存在するので、1 菌株だけで毒性を調べても意味がないと研究者サイドから AEC 研究全体の方針にクレームがつくほどであった。
ボツリヌス菌の芽胞、栄養細胞 (発芽した細胞)、毒素の耐熱性の違いを利用して、芽胞のみ分離し、これを魚に接種する。ボツリヌス菌の熱耐性を表 7 に示す。この時、栄養細胞が残ったり、すでにある毒素が残存したりすると実験結果に大きく影響を与える。具体的には、60℃ で 15 分加熱し、発芽している菌体を殺菌し、直ちに急速に冷却して芽胞を取り出す。死滅した菌体を取り除くには多くのエネルギーが必要で完全に取り除くことは困難であった。ここでは、死んだ菌体が毒素産生時期に影響を与えないことを確かめた後、死菌を分離せず実験に供した26)。
さらに、魚介類に接種する直前に熱刺激が必要である。E 型では 60 〜 70 度で 10 分間加熱することにより発芽を促進させる。この一連の実験では 61℃、15 分だった。
菌の発芽率はこのような加熱と照射処理を併用したときとこれらの処理をしないときとで結果が同じになるのか、リン酸緩衝液の中で調べた27)。結果は表 8 に示す。何の処理もしないときや熱処理のみしたときと比べて、熱と放射線の 2 重処理で生き残る芽胞はおよそ 10 分の 1 に減ることが分かる。
このように照射と加熱処理を併用して、放射線の吸収線量を減らして殺菌効果を高める工夫が検討されている28)。
嫌気性菌であるボツリヌス菌の性質を考えるとき放射化学的な考察が必要だろう。照射時の食品中の溶存酸素量が多いと、照射によって酸化物がそれだけ多く生じ、菌体の周りの酸化還元電位に影響を与える。酸化電位が高いと、ボツリヌス菌は増殖や毒素産生が押さえられるだろう。これとは反対に酸素量が少ないと還元的な雰囲気となり、吸収線量を高くすればするほど増殖・毒素産生をしやすい状況になることが想像される。実際にどのようになるか、この報告書は次のように述べている。
芽胞を接種したタラ (Haddock) を酸素透過性の袋と非透過性の袋に入れ、照射し、5.5℃ で保存し、毒素産生初日を調べた29)。図 3 に結果を示す。酸素透過性の袋に入れた場合は 55 日間全く毒素を産生しなかった。確かに毒素はなかったが、17 日目から 1kGy 照射試料と 2kGy 照射試料の表面はカビで覆われてしまった。
非透過性の袋に保存すると、照射線量が高くなるにつれて、毒素産生するまでの保存期間が短くなった。
このことから、魚介類を照射する時の包装は酸素透過性のものが必要であることを示している。
照射時の線量が高いほどボツリヌス菌が生育し易いという現象の原因を追及するため、糖成分との関係を調べた。
リボースとグルコースを培地に添加して、毒素産生量を調べた30)。結果は表 9 に示す。10℃ で 21 日間保存した後、糖未添加試料と糖添加試料中の毒素量を測定した。糖無添加した試料で 20MLD/mL のボツリヌス毒素を生産した。なお、MLD は Mouse lethal dose の略でマウスの致死量を示す (付録 3 参照)。グルコース添加試料中の生産量はその 500 倍の 10000 MLD/mL に達した。
さらに、低温の 5.5℃ で保存した試料中の毒素量は 10℃ 保存試料のそれより少なくなったが、糖無添加試料より毒素産生量が多いことが分かった。この現象はグルコース発酵として現在知られている。
次に、大西洋タラ (Atlantic cod) に芽胞を接種して、糖の影響を見た31)。結果を図 4 に示す。無添加の試料と比べて、リボースやグルコースを添加した魚では、およそ半分の期間で毒素産生するようになった。
このように照射魚介類中で早期に毒素を産生するのは照射が原因で魚体内の残存糖分が増加するためであると考えられた。そこで、これを証明するために、イギリスカレイ (English sole) を種々の線量で照射し、魚体中の遊離のグルコースを測定した。結果は図 5 に示す32)。未照射試料中の遊離グルコース量は保存時間が長くなると急速に減少した。一方、照射試料中の遊離グルコースの量は非照射に比べ残存量が多く、線量が多いほど残存する糖の量が多いことが判明した。
これらの実験からも、照射魚介類中のボツリヌス菌は線量に比例して毒素産生能を増す可能性があることが証明された。
もともと、魚体内の糖分量は照射によらずとも、魚種、漁獲時期、保存期間などに依存して変化する。魚が生きている間グルコースの量は筋肉内には少ないが死後増加し数日でピークに達し、以降減少する33)。漁獲時期による糖分量の変化は特に貝類で顕著で、季節により最大 10% 近く含有することもあるという34)。このように魚種、漁獲時期、保存期間などの条件により、試料に含まれる糖成分の量は変化し、それに伴いボツリヌス菌毒素の産生時期を異にしていると考えられる。照射によりこれが加速される可能性を示唆している。
現在までにこれらの糖のほかにも発芽生育を促す化学物質が存在することが知られている19)。
発芽促進物質の一つにアラニンとその誘導体が知られている。魚介類のエキス成分 (魚介類の組織を熱水処理などで除蛋白した後の溶液) には、遊離アミノ酸が多く、水棲生物の体内の浸透圧調整に使われていると考えられている。遊離アラニン量は魚種によって大きく異なる。ハマグリ、ホタテ貝、カツオ、アジなどに多く、エビ類にはこれらに比べて少ない35)。その他魚介類に多くの遊離のアミノ酸が存在している。これらのアミノ酸が照射魚中のボツリヌス菌の発芽を促すとするなら、照射の効果は極めて限定的なものとなるかもしれない。
照射するときは慎重に魚種、水揚げ時期、水揚げ後から照射までの保存期間などを地域別に検討する必要があることを示唆している。
10 の 4 乗も菌を用いると危険だし、結果が誇張されるのではないかという AEC の意見を受けてこのような実験が行われたようだ。確かに用いた芽胞にも毒素が含まれており、A 型の場合、芽胞 10 の 8 乗個の腹空内投与 (i.p.) 投与でマウスは死亡すると言われている。この芽胞中の毒素分がかさ上げされるのではないかとの指摘である。
ペトレルカレイ (Petrale Sole) の切り身に 10 の 1 乗から 6 乗まで芽胞を接種し、2kGy 照射し 5.5℃ で保存した。結果は図 6 に示す36)。10 個/g 魚の芽胞接種で 48 日後、10 の 6 乗で 28 日後に毒素産生が観察された。この結果から、高濃度接種実験で 20 日ほど早めに毒性化が観察出来るのは芽胞中の毒素がかさ上げしているためと考えられるが、実験者の見解はこれと異なる。
E 型の場合、非蛋白分解型なので、トリプシン処理をしないと原則として毒性は芽胞から検出されない19)。この一連の実験でも毎回、同じ芽胞数でこのようなトリプシン処理をするものとしないものとを比較しており、数日の違いを観察しているが、大きな差違を認めていない。すなわち、このような数字上の違いは実験手法の問題で、毒素分析のための試料採取間隔などから、7 〜 10 日ぐらいの誤差を含んでいると考えられる。この結果についても、10 個接種した場合とその 1 万倍の芽胞数を接種した場合で差し引き 10 〜 20 日程度の差しか見られないと考えることも出来る。この毒素の毒性の強さから考えて、初発の芽胞数は毒素産生の時期にそれほどの影響を与えないと考えるのが安全であろう。
毒素産生は温度の影響が顕著である。そこで 2 種の魚に 10 の 4 乗個の芽胞を接種し、0、1、2kGy 照射し、5、6、7、8、10℃ で保存し、毒素産生の初日を調べた。結果を図 7 に示す37)。
タラ (Haddock) の場合、5.6℃ で保存した実験では 55 日間、どの線量でも全く毒素を産生しない。保存温度が 7.8℃ の実験では照射の効果は見られず、すべての試料 (0、1、2kGy 照射試料) は 30 日前後で毒素発現が観察された。また、保存温度が 10℃ の実験でも同様で、11 日前後ですべての試料から毒素が検出された。保存温度が高くなると発現までの期間はだんだん短くなることが分かった。
一方、アメリカナメタカレイ (Dover Sole) の切り身の場合は、5、6、7、8℃ のいずれも、非照射試料よりも早期に照射試料は毒素を産生した。
保存温度が高いと毒素の産生が早くなると同時に、照射により毒素産生までの期間が短くなる傾向があった。
通常の保存状態の照射魚介類の中でその芽胞が発芽し、いつごろから毒素を産生するのかを確かめ、照射効果がどの程度かを検討した。
ハマグリを 4.4℃ で保存した場合の結果を図 8 に示す38)。照射効果が明らかに見られ、吸収線量の増加とともに毒素産生時期の遅延が見られる。
さらに、タラ (Haddock) の結果も、図 9 に示すように、蛤ほどの伸びはないが、毒素産生開始の遅延が見られている39)。
また、4 種の魚に 10 の 4 乗個/g 魚の芽胞を接種し、5.5℃ で保存した。結果を図 10 に示す40)。
タラ (Haddock) では照射の効果が全く見られず 55 日間毒素の産生も全く見られなかった。しかし、この実験のタラの結果は図 9 の結果と相違する。原因は今となっては解明の方法はないが、産地、照射時期などの影響とも考えられる。実験者が異なると結果が全く違うのは、バイオアッセイのためかも知れない。
アメリカナメタカレイ (Dover Sole) の試料とイギリスカレイ (English sole) の試料のいずれも、照射試料の方が非照射試料よりも早期に毒素産生が見られるようになった。
なお、ペトレルカレイ (Petrel cod) は参考として、1 点のみ示した。
エビに 0、1、10 個/g の芽胞を接種し 0、1、2kGy 照射し、10℃ で保存した。実験当初は 7 日間隔、2 週間後から 3 〜 4 日間隔で毒素の検出を行った。結果は図 11 に示す41)。
芽胞未接種エビの実験で、未照射試料と 1kGy 試料中に毒素産生は 42 日間観察されなかった。しかし、芽胞未接種にもかかわらず、2kGy 試料中に 28 日目で毒素産生が観察された。このことから、フロリダ産のこのエビには C 型のボツリヌス汚染があったことが分かった。
接種芽胞数 1 個/g エビの実験で、未照射試料と 2kGy 試料中には毒素産生が 42 日間見られなかった。しかし、1kGy 試料中に 21 日目に毒素産生が見られた。
接種芽胞数 10 個/g エビの実験で、未照射試料と 2kGy 試料中には 42 日間毒素産生は観察されなかったが、1kGy 試料中で 21 日目に観察された。
ここでも照射により毒素発現までの期間は短くなると実験者達は結論している。また、試料ごとに、ボツリヌスの汚染状況が異なることも明らかになった。
AEC の研究はさらにボツリヌス菌の毒素型 B、F などの性質を調べたり、E 型毒素を如何に海域から取り除くかなど研究が拡大し始めた段階で中止が告げられている。
照射の利点としては次の点が上げられている。
1) 照射によって製品の寿命は 2 倍近く延びることが官能試験の研究で示唆されている。
2) 特定のボツリヌス菌と特定の食品組み合わせに於いては極めて有効な菌制御の方法となる場合がある。
3) この実験結果によると、異臭等腐敗の兆候が先か毒素の産生が先かは保存条件、魚の種類による。
しかし、いずれの実験でも、次の問題点が指摘されている。
1) 照射が原因で魚体内の酸化還元電位の変化やグルコース等の糖成分の残存量の増加が引き起こされ、非照射試料より短時間でボツリヌス菌は照射魚体内に毒素を産生する可能性があること。
2) 照射によって、かびが生えやすくなること。カビは低温でも増殖が可能だ。
3) 照射、非照射に関わらず、魚介類の長期保存によって非特異的な毒性により、実験動物が死亡するケースが目立ったこと。(付録 3 参照)
このように結果があまり明確でない内に、AEC の研究は打ち切られた。この間ボツリヌス菌に関する基礎データが多数集まったことは重要で、このようなデータが加工食品の安全性向上に役立ったことは疑う余地はない。
この AEC の実験のあと、照射魚介類の問題は舞台を 1969 年 IAEA (International Atomic Energy Agency) の研究会に移され引き継がれた42)。これについて議論がなされ、イギリスの研究者43) は本稿に示した AEC の内容とほぼ同じ内容の報告をおこなった。
最終的に IAEA の研究委員会は次のような勧告を出した。
1. 市場寿命 Market-life (賞味期限) の延長について
a) 鮮度等の優れた原料だけを照射し、賞味期限の延長を図ること。
b) 賞味期限は各生産地域ごとに決めること。
c) 照射時の温度、保存時の温度は厳重に管理されること。この温度制限が守られるように厳格に取り締まること。
d) 流通時に包装する必要があるときは、包装材料の影響も賞味期限の評価に加味すること。
e) 賞味期限の決定法に関してさらに研究すること。
f) 細菌検査についても、迅速な細菌性の腐敗を評価できるように試験法やその機材を研究すること。
2. 照射機材と操作の標準化
a) 照射時に必要な吸収線量分布はそれぞれの製品ごと、さらに装置ごとに測定しなくてはならない。そして最低線量と最高線量を測定しておく必要がある。
b) 最高線量と最低線量の記録を適切に行う。すなわち、最低線量、最高線量と公比 (最低線量と最高線量の比率)、その統計学的分散の値で表示する。
c) 線量測定の方法、線量校正のデータを記録すること。国際標準線源 (ATMS など) との平行性についても記録する。装置等に重要な変更があったときは線量分布を再測定し記録する。重要な変更とは、照射対象の比重の変更、包装の大きさの変更、照射装置の変更などである。
d) 簡便な照射食品用の線量計の開発。
e) 官能検査の標準化はしない。試験の内容を詳しく記述し、統計的な処理をして取り扱う。
f) 賞味期限は各国独自の基準で決めるが、結果は誰でも理解できるようにすること。
g) 照射魚介類の品質を示す物理的化学的なインデックスを探す研究をする。
3. 照射食品健全性のリスク・ファクターとしての魚介類中のボツリヌス菌
a) 照射による食品と餌中の危険な細菌の殺菌に関する研究 (1968) 報告を承認する。
b) さらに芽胞接種実験を行い、多くの照射魚介類の中でボツリヌス菌が毒素産生する正確な条件を見つけ出す必要がある。
c) どの程度この菌で魚介類が汚染されているかを調査するために、検査方法の改良と新しい方法を構築するための調査を行う。
d) 世界中で行われた検査結果を比較検討するために、検査方法、サンプリング計画等を標準化して欲しいと要望する。
e) この菌の汚染状況を知るために、通常処理を行う水産加工場で起きたボツリヌス菌事故を調査することが必要だろう。
f) ボツリヌス菌芽胞E型の汚染レベルは地域により大きく異なり、地域によっては全く存在しないことも知られているので、ボツリヌス菌の増殖と蓄積につながる条件を研究する必要がある。
その後どのような研究が国際舞台で行われたかは資料が手元にない。この研究で、腐敗臭がする前にボツリヌス菌が毒素を産生するかどうかの結論は明示されていないが、温度管理の重要性を訴えている。
当時の欧米人は薫製を食べることはあっても刺身やすしなど生で魚を食べる習慣がなかったし、もともと大衆魚は肥料か動物の餌であった。だから、照射後にたとえボツリヌス毒素があっても、加熱して食べれば問題ないので照射は有用であると結論している。
しかし、現在の知識によると、通常の方法でいくら加熱しても芽胞は残り、その芽胞にも毒素は存在するし、乳児には芽胞そのものでも危険である点が気になる。
その一方で、購入後の保存や調理の方法を選択するのは消費者であるから、ボツリヌスの危険を避けるために照射魚介類を買う消費者にとって照射食品の表示は必要不可欠だろうとしている。照射食品であることを知らずに 10℃ 前後の家庭用冷蔵庫で保存すると、ボツリヌス中毒の危険があることをAECの研究は教えている。
1991 年 FAO/IAEA/WHO の下部機関 ICGFI (International Consultant Group of Food Irradiation) は一般的な照射基準を定めた。主な原料基準と前処理として、捕獲した船内で冷蔵することや傷んだ魚や古い魚と一緒にしてはならないことなどを示している。エビの冷凍および冷蔵の場合は 25 〜 50ppm の次亜塩素酸液で洗い冷蔵または冷凍する。いずれの食品でも好気性菌数は 5 × 10 の 5 乗から 10 の 7 乗以内でなくてはならない。照射の推奨条件は表 10 に示す。
ボツリヌス菌に対する注意として、この GIP には次のような記述がある。
"他の殺菌手段例えば、加熱殺菌、置換ガス充填包装などと比べて、照射はボツリヌス菌の潜在的な危険性を増大する可能性がある。ボツリヌス E 型菌の危険を避けるための GMP (Good Manufacturing Practice) にしたがって加工したとしてもこの危険を避けることができないだろう。"
ここで言うボツリヌス菌の潜在的な危険性とは今日まで、魚介類からこの菌が魚介類から分離され続けられていることや冷蔵温度でも好適な条件では増殖と毒素産生が起こりうることを指している。
照射後の取り扱いについては、もっと厳しく記述されている。
"照射後製品は必ず 3℃ 以下で無くてはならない。ボツリヌス菌が原料に存在すると、照射後も生残する可能性がある。照射した魚やエビを 3℃ 以上にするとボツリヌス菌の増殖と毒素の産生を招く可能性があるだろう。特に高線量照射したり、酸素不透過性の材料で包装した場合、このような 3℃ 以上での保存で菌の増殖と毒素産生の可能性が高くなる。"
AEC の研究に基づき厳重な注意書きがあった。
しかし、この勧告書の最後の段で FAO/IAEA/WHO の照射食品健全性専門家委員会は平均線量 10kGy 以下の照射では、いかなる微生物学的な問題は起こらないと結論しているので、この魚介類の場合も安全だと結論している。
1994 年 WHO は照射魚介類を保存するときは常時 3℃ 以下で行うように改めて勧告している45)。
NASA が最初に照射食品を宇宙食として採用したのは 1972 年末、最後の月旅行に出かけたアポロ 17 号からであった46)。アメリカ陸軍 Natick Research、Development and Engineering Center が製造した照射ハムをメニューに加えた。予算不足とアポロ 13 号の後遺症から、NASA は月に人を送り込めなくなったが、地球周回軌道でソビエトとの共同研究が始まった。これに照射ハム、七面鳥、ビーフ・ステーキが積み込まれた。
1981 年からスペース・シャトルの飛行が始まり、照射ビーフ・ステーキ、七面鳥、コーン・ビーフ、パン、ロール・パンがメニューになった。しかし、このメニューは 1986 年で変更された。
現在のメニューは図 12 に示すようになっている47)。現在もアメリカ陸軍 Natick Research、Development and Engineering Center が調整し、カナダ産薫製サケで裁判沙汰になった例の照射会社で照射を行っている。
照射加工の工程は加熱調理、包装、冷凍する。照射まで -40℃ で保持し、Co-60 で 44kGy 照射する。そのあとは室温保存が可能である。
現在、10 種の照射食品を次の計画に使用できるよう用意している。
肉類を中心に実用化している理由は加熱処理よりも照射処理の方が感覚的に受け入れ易いためである。また、加工の途中で肉汁の量や調理加減を調整し易いからだという。
2003 年 3 月にアメリカ合衆国航空宇宙局 (NASA) は火星旅行のための食品に関するシンポジウムを開いた48)。その報告書の中で照射食品について次の様に述べている。
"ガンマ線、電子線等を用いて、誘導放射能が発生しないと考えられる範囲のエネルギーで照射する。"
照射食品の評価としては、
"適切に照射すると 2 〜 5 年の寿命となる。しかし、劣化を防ぎ安定して保存するには凍結しておく必要がある。現在照射した宇宙食としては牛肉と七面鳥の薫製の保存に利用されている。この技術を月面や他の惑星表面で使うことは困難である。なぜなら、それらの設備と遮蔽の重さが大きすぎることと、コバルト 60 や冷却水が必要なためである。"
宇宙食のなかで、照射食品は肉類だけと報告されているが、宇宙飛行士は宇宙食に魚を要求しないのだろうか?スペース・シャトルの献立をみると、サケやマグロは加熱殺菌、シュリンプカクテルは低水分加工などとなっており、水産物には照射技術は用いられていない。もちろん、照射すし種はない。照射後の管理が難しいことだけが、その理由ではなく、たぶん風味その他の問題があるのかも知れない。ちなみに、2003 年サンマのケチャップかけを開発したが、臭いの点で宇宙飛行士の評判は芳しくない49)。
しかし、この長丁場の旅行をするためには、食品照射の技術は不可欠である。
カナダで照射エビの申請が出され、2003 年にその評価が示された。有効性についてはその微生物学的な評価が困難であるという。これは、冷凍したエビなどには危険な細菌はほとんど存在しないので効果が確認できないと言うことらしい。
もっとも、本稿で議論したような微生物学的な安全性評価は示されていない。しかし、報告書全体を読むとエビなど魚介類を取り扱う国際基準に合致し温度管理を厳密にすれば、照射エビには微生物学的な危険性は全くないと判断しているように見える。
カナダ保健省が示した照射条件によると、冷凍の場合 -18℃ で 1.5kGy 〜 5kGy 照射し、取り扱い中はこの -12℃ 以下を維持することとなっている。また、冷蔵の場合は 3℃ 以下に維持する事が求められており、最大吸収線量は 3kGy と制限している。いずれも、IAEA の GIP の 2 〜 3 倍の最大線量である。鳥ボツリヌスと食品条件が大きく異なっているにもかかわらず最大線量と最小線量の幅が同じである点や、公比が 3.3 である点などは、照射業の技術者とその経営者にフレンドリーな規制になる。
このような高線量の規制を認めようとする背景には、"照射線量の自己管理能力説" がある。菌数を減らそうと過剰に照射すると悪臭などの点で販売に適さなくなるから、放置しても安全だとする考え方だ。しかし、過剰照射に耐えられる食品もあるはずで、この説には科学的な根拠が乏しい。
工程としては次亜塩素酸水で洗い、鮮度を調べ、包装してから、照射を行う。このような手順はマンゴーなどの果実でも同様に行われており、カビ対策であるという。照射後の保存については正確な温度管理を要求していることは言うまでもない。
管理部局の検討事項としては、照射エビの検知法の開発と照射エビの品質検査が残るとしている。
エビの検知法は国際的な方法としては未だに発表されていない。品質については AEC 等の研究があり、高線量照射して、7 ヶ月保存 (0.5 〜 1.5℃) のエビを官能検査すると、9 点法の評価で未照射エビでは 6.25 であるのに対して、照射エビでは照射臭、異臭、異味があって 5.79 と評価が低い51)。
さらにラベル表示の問題、照射施設関連で環境問題、原子力規制問題、施設の立地問題、産業労働問題など関係産業界と話し合う予定だという。
この申請はコバルト 60 の供給元として知られるノルディオン社がカナダ政府に要請したものだが、世界のエビの多くを消費する我が国への影響はどのようなものなのか注目に値する。
食品照射は Listeria monocytogenes、Staphylococcus aureus、Escherichia coli O157:H7、Salmonella typhimurium、Yersinia enterocolitica、Vibrio parahaemolyticus や Campylobacterium jejuni に有効であることから52)、2004 現在、生食用のカキ53)、エビ54, 55)、魚56) サラダ等の中のビブリオ、サルモネラ菌などの殺菌目的で、これを推進しようとする動きがアメリカ合衆国にある57)。
ボツリヌスの脅威に対して、アメリカ政府のかつての見解は次の様であった58)。"ボツリヌス菌の胞子は放射線照射でも生残し、食品の典型的な腐敗の兆候もないのにボツリヌス毒素を生じる可能性は否定できない。しかし、このことはある状況下では正当な心配であるが、乾燥食品の照射や 1kGy 以下の食品照射にはあてはまらない。1kGy 以下の食品照射はほとんどの腐敗細菌を殺滅しないので、正常の腐敗パターンは変わらないであろう。この規則が認める食材は食品に高線量照射しても、乾燥しているのでボツリヌス菌の生育培地にはならない。"
この当時は水分の多い生鮮食品への高線量照射については考慮していないようだ。
ICGFI のデータベースによるとヨーロッパの各国の状況は例えばエビにフランス (3kGy)、ベルギー (5kGy)、オランダ (3kGy)、イギリス (3kGy、魚、干ものに同じ線量を認可) の 4 カ国だけが認めている。IAEA のお膝元オーストラリアを始めノルウエーその他の国は認めていない。イギリスでの考え方59) は、照射によってボツリヌス菌の危険が増すことは当然だが、これ以外の殺菌方法を用いても同じ危険があるのだから、特に照射殺菌が危険との認識は持たないとしている。ICGFI の "照射魚介類は他の殺菌方法に比べてボツリヌス菌の危険性が高い" との見解の相違が目立つ。
さらに別の意見がある。有芽胞菌であるボツリヌス菌は放射線抵抗性は高いが、5kGy で、99% 以上殺菌され、照射後に生残した菌は低温で増殖しにくいので低温貯蔵と組み合わせる限り問題にはならないだろうとの見解もある60)。
1998 年ころ EU がこの技術を受け入れるか、各業界にアンケートを採ったことがあった。漁業業者は現在の技術で十分に安全は確保されており照射は不必要だし、消費者は新鮮な製品を求めているとしている61)。業者からすれば、費用をかけて照射しても、保存条件が従来と同じなら照射する意味が薄れるのだろう。
照射の技術は万能ではないと我々の先輩が常々言っておられた。過大評価されがちなのである。電子線による食品照射の技術で最高の技術と実績を持ちながら、SureBeam は重役によるインサイダー取引スキャンダルのために課徴金や賠償の費用捻出に追われる中、需要に見合わない過剰投資だとして、2003 年秋にカルフォルニア工場を閉鎖した。これに引き続き、親会社タイタンの資金供与が打ち切られ、2004 年の年頭に倒産した62, 63)。タイタン自身はローキードマーチン社に売却され、SureBeam を助ける余裕が無かったようだ。
2002 年には 3 つの照射工場併せて 150 万ポンドの製品を照射したが、倒産までの 33 ヶ月間全く利益を計上できなかったという。この会社の大きなつまずきは郵便物への電子線照射事業を行ったことにあるという。2001 年同時多発テロ事件後、炭疽菌対策として導入された。ついには、郵便物の中のカセットテープが熔けるなどの事故が報道され、食肉処理業者は SureBeam を採用することを手控えるようになったという64)。さらに、同紙の分析によると SureBeam は消費者の動向を見誤ったとしている。消費者の納得する根拠や必要性がないまま照射技術を用いると、不衛生な取り扱いや不潔な加工作業で食品を汚染したことを隠すための技術だと非難され65)、さらに照射肉は料理しても、判別できるくらい、照射牛肉は未照射に比べて味が落ちるので、従来通り冷蔵保存が必要なら照射する必要はないだろうと評価されている66)。食品加工業者はコスメチックな技術であるとの批判は甘受しても、不味いとの評判は受け入れられないのだろう。
魚介類由来のボツリヌス菌による中毒の危険は現在の我が国における食品衛生のレベルからすると極めて低いと考えられる。特に生鮮魚介類の取り扱いに古くから慣れている我が国にあって、最近のボツリヌス中毒事故の原因は自家製食品や輸入加工食品が主である。しかし、わずかな油断が大きな事故につながることは、芥子レンコン事件に見ることができる。従って、当時の人々が食品照射の技術を用いて、その危険性を除去しようと試みたのは当然のことである。
この AEC の研究によると、魚介類は照射により、その賞味期限が倍になる。しかし、原料魚にボツリヌスが存在すると、照射によっても芽胞は生残し、保存条件が悪いと、非照射魚よりも短期間で毒素を産生し、食の安全性を脅かす可能性を示唆している。照射により、魚体内のグリコーゲンが分解し、ボツリヌス菌の増殖を促進するグルコースが生成するためと考えられている。照射魚介類の照射中と保存中の温度管理が厳しく (3.3 度以下)、家庭冷蔵庫 (10 度前後) で保存が困難なことやボツリヌス中毒の危険性 (死亡率は約 20% と言われる) を考えるとき慎重な判断が必要だろう。衛生管理、線量管理が隠蔽されたまま、食品衛生法に違反して、非加熱用魚介類をヤミ照射することは極めて憂慮するべき事態を引き起こす危険を孕んでいる事に疑いの余地はない。しかし、たまたまそうなっただけかも知れないが、今回の一連の事件で幸い健康被害の報告はない。違反はもちろん許されないことであるが、このことを裏返すと、AEC の時代とは異なり、HACCP など大きく進歩した技術がそこに存在し、ボツリヌスの危険がほとんど無い照射魚介類が流通可能であることを暗示するのかも知れない。
1999 年アメリカ合衆国政府の報告書67) に、"我が国では照射食品の流通はごくわずかだ。その中で、主流を占めるのは、スパイス、ハーブ、香味野菜である。その生産量は 950 万ポンドで、消費量のわずか 10% にすぎない。" としている。この報告書の結論のように、食品照射の技術は真に食品衛生に寄与するものであって欲しいと願う。
この分野の解明がさらに進み、ボツリヌス菌フリーの海域などが整えられ、この菌を制御する技術が開発され、安心して加工食品が提供できるように、この分野の発展を切に望むところだ。
なお、本稿に出てくる魚介類の名前は慣用名によった68)。
本稿を書くにあたり様々な資料を参照し、十分な注意を払って記述した。しかし、筆者の浅学誤解のために小文中に誤りがあるかも知れない。読者諸兄のご指摘があれば、機会を見て訂正をしたい。ご意見をお待ちする。
アメリカ合衆国原子力委員会の報告書を提供され、懇篤な校閲をされた独立行政法人食品総合研究所 等々力節子博士に感謝する。種々の資料を提供された元原子力研究所 伊藤均博士に感謝する。また、IAEA 等の資料収集に協力いただいたロサンゼルス市図書館と東京農業大学図書館参考部門の書司の方々の協力に感謝する。また、ボツリヌス菌に関する文献収集に協力した当所衛生微生物部宮原美知子博士に感謝する。
この一連の実験にその生命を献じた無数の実験動物の冥福を祈る。
1. アメリカ原子力委員会の研究課題
およそ 46 テーマの内、魚介類のテーマは 17 で、その内 6 テーマがボツリヌス菌関連のテーマであった。如何に当時の照射関係者はこの菌に大きな関心を示したが分かる。この研究当時 (1971 年頃)、ヨーロッパに於いてボツリヌス菌による大規模な食中毒が発生したのをきっかけに、ボツリヌス菌に対する知見がようやく集まったころで、科学的な関心が高い背景があったようだ。
2. ボツリヌス症
ボツリヌス中毒はまれだが、際だって致死性が高いので注意が必要とされている。
3. ボツリヌス毒素の検出方法
毒性検出の方法は古くから現在まで、マウスの致死性で判断している。付図 1 にフローチャートを示す。試料を遠沈して上清をとり、トリプシン処理し、段階希釈の後、マウスの腹腔に注入し、3 日観察し、ボツリヌス症を示して死亡したマウスが見られるとき、ボツリヌス陽性とする。これから、毒素の濃度を計算する (MLD/Mouse)。各 A 〜 G 毒素の抗毒素と魚から検出した毒素とを反応させて、マウスに投与し、同様に生死の判定を行う。これによって、毒素型の決定と、ボツリヌス菌以外の毒素による死亡を判定する。この実験ですべてのマウスが死亡すると原因はボツリヌス毒素では無かったと判定することになる。結果を考察するにあたり、このように多くの労力と誤差を含むものであることを理解する必要があろう。極めて多くの動物の生命を使うことになる。当時の方法は現在の方法と同じである。ただし、現在では PCR 法が開発され、簡便さから汎用されている。
4. ボツリヌス菌の食品衛生上の問題点
土壌細菌なので、至る所に生息して食品を汚染する危険がある。この菌は熱に強い芽胞をつくって、増殖のための環境が整うまで生き延びることができる。表 7 に示すように 100℃ で 3 時間以上煮ても、その発芽力は低下しない。しかし、その毒素は 100℃ 1 分程度で、その毒性を失うし、菌体 (栄養細胞型) そのものも、60℃、30 分程度で死滅する。従って、煮たり、焼いたりして加熱後に、食べる食品は危険が少ない。しかし、芽胞にも毒素が存在するので、中途半端な処理では安全とはいえない。レトルト食品は 124 度 4 分以上の加熱で芽胞を不活性化するなどの対策が考えられる。
嫌気性の細菌なので、増殖するには酸素の少ないところが必要である。このため、瓶詰め、缶詰、レトルト食品、ハム・ソーセージ、蜂蜜、水飴、油分の多い食品など通常の状態では、空気に触れない食品はこの菌に対する対策が必要とされている。さらに、低温で毒素産生・増殖が可能な点で、増殖可能最低温度が 3.3 〜 10℃ であるということは、家庭内の冷蔵庫中でもこの菌は増えたり、毒素を産生できることを意味している。
腐る前に毒素や芽胞が増えても悪臭などの官能変化がほとんど無いので、それらの危険が分からないまま摂食することになり、健康上の危害が懸念される。
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(2004 年 7 月 30 日受理)
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