プラスチック製飼育容器(内径13cm、高さ7cm、ふた中央に23mmの穴をあけ、金網を接着)に水稲玄米250gを入れ成虫約300匹を1週間放飼、産卵させた。これから約4週間後のある1日(24時間)に羽化してくる次世代成虫を試料として用いた。
前期飼育容器に玄米250gを入れ成虫約300匹を2日間放飼した。このようなカルチャーを順次用意し、28日後のカルチャーには、卵、1〜4令幼虫、蛹、潜伏成虫が2日単位の年齢幅で含まれるようにした。これらカルチャーのうち、産卵後12日〜28日経過した各年齢群では虫の潜伏している米粒を肉眼で各100粒ずつ選別し、照射試料(抽出粒試料区)とした。産卵後2〜12日経過したものでは米粒内に虫が潜伏しているかどうか肉眼では判定できないので各カルチャーから約120gの米粒をランダムに採取し照射試料(全粒試料区)とした。
1日単位の年令幅で4令までの卵を幼虫、蛹と同様にして用意した。
少量の玄米と共に各線量区ごとに100匹ずつ2〜12krad照射した。線源は東海区水産研究所のCo−60(1400Ci,120 krad/hr)を用いた。
抽出粒試料区の8年令群(12〜14日から26〜28日まで)については各年令群ごとに20粒ずつ8組(6線量区と2対照区)の試料を用意した。一方全粒試料区の5年令群(2〜4日から10〜12日まで)では、各年令群ごと試料米15gずつ8組を用意し0.5〜16krad(30krad/hr)の照射を行った。
4年令群(0〜1日から3〜4日まで)のカルチャー15gずつに0.5〜5krad(30krad/hr)の照射を行った。
各試料は照射後30℃、70〜80%RHの定温器中に保管し2日毎に死亡率および羽化率を記録した。
照射した雄、雌成虫に非照射の雌、雄成虫を交配させ、その後さらに30日間観察して受精能力の有無を調べた。又羽化阻止線量の決定に用いた卵、幼虫、蛹の内、成虫羽化をみた試料については羽化後約30日観察し、羽化成虫が交尾産卵し次世代の幼虫の発育があるかどうかを記録した。発育の認められない試料では生存成虫を各個体ごとに隔離し、照射雄、雌に非照射雌、雄成虫を交配させ受精能力の有無を調べた。
照射実験の都度、対照区の1つを用いて照射当日に75%アルコールに浸漬し、穀粒を切開して中の虫の年令構成を確認した。
年令7日のコクゾウおよびココクゾウ成虫の照射後の生存率を求めた(図2−1、2−2)。これよりプロビットスケール図(図2−3)を作成し照射2週間後におけるコクゾウおよびココクゾウのLD99(99%死亡線量)およびLD50(50%死亡線量)をみると前者で約12kradおよび6krad、後者で約14kradおよび8kradであった。
図2−4、2−5に照射試料からの成虫羽化曲線を示した。これによれば、卵、4令幼虫、蛹から成虫への発育羽化を阻止するのに要する線量は、コクゾウ、ココクゾウのいずれにおいても、卵で3krad、4令幼虫で5krad、蛹で5krad以上であった。なお両種とも蛹では例外的に16kradでも羽化するものがあった。
照射した卵からの成虫羽化を表2−1、2−2に示したが両種共若い卵ほど感受性が高く又4kradで完全に成虫への発育が阻止された。
線量(krad) |
卵の年令(日) |
1−0 2−1 3−2 4−3 |
|
0.5 1 2 3 4 5 |
+ + + + + + + + − + + + − − + + − − − − − − − − |
+:羽化 −:羽化せず |
線量(krad) |
卵の年令(日) |
1−0 2−1 3−2 4−3 |
|
0.5 1 2 3 4 5 |
+ + + + + + + + − + + + − + + + − − − − − − − − |
+:羽化 −:羽化せず |
各発育令期のコクゾウにγ線照射し、それより羽化した成虫に繁殖能力があるかどうかを検討した(表2−3)。成虫に近づくほど不妊化線量は高く卵では3krad、幼虫で4krad、蛹で5krad、成虫で10kradを必要とした。
発育令期の異なるコクゾウに放射線照射し、それより羽化してきた成虫の繁殖能力 |
発育令期 |
線 量 (krad) |
0.5 1 2 3 4 5 6 8 10 12 |
|
成 虫 蛹 4令幼虫 1〜3令幼虫 卵 |
+ + + + + + + + − − + + + + + − − − − − + + + ± − − − − − − + + + − − − − − − − + + + − − − − − − − |
+:成虫に繁殖力あり −:成虫に繁殖力なし |
試験は28℃、RH70%で行った。この条件下においてノシメコクガの卵期間は4日、幼虫期間は36±2日、蛹期間は7日であった。
同一日に羽化脱出した成虫の雄、雌各5匹を20時間同居させ産卵させた。成虫を除去して4時間以内のものを0日令卵、48時間経過したものを2日令卵とし照射を行った。
通気口のあるプラスチック容器(内径1.4cm、高さ19cm)に小麦粉1kg(エビオス3%添加)を入れ同一日に羽化した成虫の雄、雌各10匹を放飼し3日間産卵させたのち成虫を除去し、7日後および30日後に幼虫を集めた。このようにして7〜10日令幼虫(若令幼虫)および31〜33日令幼虫(老熟幼虫)を得た。
前記プラスチック容器に同一日に羽化した成虫の雄、雌各10匹を放飼し、5日間産卵させたのち成虫を除去し同時に長さ約1.5cmに切ったストローを飼育器に入れ40日後に各ストローの中で蛹となったものを照射試料とした。
照射は食品総合研究所のコバルト60(ガンマーセル220)を用いて行った。線量率は317krad/hrである。
0日令卵は、0.25〜4.5krad、2日令卵は5〜35krad照射した。照射はガーゼでふたをしたガラスチューブ(内径12mm、長さ75mm)に卵を50卵とり常温で行った。
若令幼虫、老熟幼虫および蛹の試料はそれぞれ20匹を前記の照射用チューブに1個体ずつ入れ、幼虫に対し1〜7.5krad、蛹に対し5〜35kradの照射を行った。
ノシメコクガは成虫の生存期間が通常の気温下において羽化後7〜10日間と短いため、成虫に対する放射線の殺虫効果を測定することは困難である。そこでノシメコクガについては卵、幼虫、蛹の時期に照射し、成虫への発育を阻止する線量(羽化阻止線量)および次世代への繁殖を不能にする線量(不妊化線量)を求め、照射効果を判定した。
照射した幼虫、および蛹はガラスチューブに入れたまま、また照射した卵はプラスチック容器に移してそれぞれ28℃、RH70%の定温器に保管し、羽化数を記録して羽化阻止線量を調べた。
照射試料のうち、成虫羽化をみたものに非照射の成虫を交配させ、不妊化線量を調べた。
卵の羽化阻止線量は0日令卵で2krad以上、2日令卵で5krad以上であった(表2−4および図2−7)。図2−8のようにプロビットスケールに改変してLD99およびLD50を求めると0日令卵1.2kradおよび0.6krad、2日令卵は5.6kradおよび3.3kradであった。
線 量 (krad) |
幼虫の年令 |
照射数 |
ふ化率 |
小麦粉に入 った幼虫数 |
成 虫 羽化数 |
0 0.25 0.5 0.8 1.0 2.0 2.5 4.5 5.0 10.0 15.0 20.0 30.0 35.0 |
0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 0 2 2 2 2 2 2 2 |
50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 50 |
100 100 100 100 96 100 90 100 80 100 20 100 2 100 0 100 100 98 86 66 8 0 |
50 50 50 50 40 50 25 50 10 50 0 50 0 50 0 30 15 10 0 0 0 0 |
50 50 50 50 32 50 6 50 3 50 0 45 0 40 0 5 0 0 0 0 0 0 |
若令幼虫および老熟幼虫ともに7.5krad照射で成虫羽化するものはなかった(表2ー5および図2ー9)。次にLD99およびLD50を求めると若令幼虫で8.3kradおよび4.5krad、老熟幼虫は9.2kradおよび5.3kradであった(表2−6)。
線 量 (krad) |
幼虫の年令 (日) |
照射数 |
小麦粉に入 った幼虫数 |
成 虫 羽化数 |
0 2.0 2.5 4.0 4.5 5.0 7.5 10.0 15.0 |
第一令 終 令 第一令 終 令 第一令 終 令 第一令 終 令 第一令 終 令 第一令 終 令 第一令 終 令 第一令 終 令 第一令 終 令 |
20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 |
20 20 20 20 20 20 18 20 15 18 13 16 6 10 5 8 0 0 |
20 20 20 20 18 20 13 16 11 14 8 12 0 0 0 0 0 0 |
発育令期 |
羽化阻止線量 |
不妊化線量 |
|
LD50 |
LD99 |
||
0日令期 2日令期 若令幼虫 老熟幼虫 蛹 |
(krad) |
(krad) |
(krad |
0.6 3.3 4.5 5.3 16.0 |
1.2 5.6 8.3 9.2 35.5 |
0.8 4.5 5.0 5.0 20.0 |
蛹試料は、35krad照射で成虫羽化は全く認められず、LD99とLD50はそれぞれ35.5kradおよび16kradであった(表2−6および図2−9)。
発育令期 |
羽化阻止線量 |
不妊化線量 |
|
LD50 |
LD99 |
||
0日令期 2日令期 若令幼虫 老熟幼虫 蛹 |
(krad) |
(krad) |
(krad |
0.6 3.3 4.5 5.3 16.0 |
1.2 5.6 8.3 9.2 35.5 |
0.8 4.5 5.0 5.0 20.0 |
蛹に近い程不妊化線量は高く、0日令卵で0.8krad、2日令卵で4.5krad、幼虫で5krad、蛹で20kradであった(表2−6)。
発育令期 |
羽化阻止線量 |
不妊化線量 |
|
LD50 |
LD99 |
||
0日令期 2日令期 若令幼虫 老熟幼虫 蛹 |
(krad) |
(krad) |
(krad |
0.6 3.3 4.5 5.3 16.0 |
1.2 5.6 8.3 9.2 35.5 |
0.8 4.5 5.0 5.0 20.0 |
成虫、蛹、幼虫および卵を小麦粉3gとともにポリエチレン円筒容器に取り、ガンマー線照射(26,500R/hr)した。供試虫数は各20匹ずつ用いた。ただし卵については卵の産みつけてある小麦粉をよく混合し、一定量ずつを容器にとりわけた。
照射後30℃、RH70%に保持し死亡数を求めた。成虫は5kradで次世代の発生が認められず10kradでは14日までに全部死滅した。蛹は、5kradでも羽化するものがあったが、11日目で全て死滅した。幼虫は2.5krad処理により半数以上が蛹化したものの22日目で全て死滅した(図2−10)。卵は2.5krad照射により全て幼虫化するものがなかった。
a) コクゾウおよびココクゾウ成虫(羽化7日後)のγ線感受性は、照射後2週間目でそれぞれLD99が約12kradおよび約14krad、LD50が約6kradおよび約8kradであった。
b) 蛹、4令幼虫、3令以下の幼虫、卵のγ線に対する感受性は、コクゾウとココクゾウ間に大きな差はなかった。
c) 発育令期とγ線感受性の関係をみるとコクゾウ、ココクゾウ共に、発育令期が進むに伴って抵抗性が高まり、 卵<3令以下の幼虫<4令幼虫<蛹<成虫 の順に抵抗性が強くなった。又卵も発育令期の高い程抵抗性が高かった。
d) 不妊化線量は卵で3krad、蛹で5krad、成虫で10kradであった。
a) 羽化阻止線量は卵5krad、幼虫7.5krad、蛹35kradであった。
b) 照射後2週間目におけるLD99は卵5.6krad、幼虫9.2krad、蛹35.5kradであり、LD50は卵3.3krad、幼虫5.3krad、蛹16kradであった。
c) 不妊化線量は20kradであった。
a) コクヌストモドキでは成虫、蛹、幼虫、卵のいずれにおいても10krad照射により殺虫の目的を達成することができる。