殺虫の目的をもって小麦に25〜50kradのガンマ線照射を行ったとき、小麦の品質にどのような影響を与えるかを明らかにするため、輸入および国内産玄麦について、調整小麦粉の一般分析および物性、蛋白質の性状、構成アミノ酸、脂質、アミラーゼ活性の各項目の測定・分析を行うとともに、附着微生物に対する照射の影響を検討した。
カナダ産マニトバ2号および埼玉県産農林61号2等小麦玄麦に25kradおよび50kradの線量のコバルト60線源によるガンマ線照射を行い、照射直後(5日以内)および室温で2ヶ月貯蔵後に非照射対照とともに、各試験項目の試験法に記した方法により試料を調整した。
供試小麦は次の方法で60%粉および全粒粉を調製し、分析・測定を行った。
スイス・ビューラー社製のテストミルで挽砕したが、挽砕結果は表3−1の通りである。
〔照射直後〕 |
|
N−61号 対 照 品 |
N−61号 25krad |
N−61号 50krad |
マニトバ 対照品 |
マニトバ 25krad |
マニトバ 50krad |
1 B 粉 % |
10.9 |
10.9 |
10.5 |
3.8 |
3.5 |
3.8 |
2 B 粉 % |
8.5 |
8.7 |
7.9 |
6.9 |
6.9 |
6.8 |
3 B 粉 % |
3.2 |
3.0 |
2.7 |
1.4 |
1.5 |
1.3 |
1 M 粉 % |
38.3 |
39.4 |
41.4 |
30.8 |
30.5 |
27.6 |
2 M 粉 % |
7.4 |
6.0 |
7.2 |
17.4 |
17.1 |
19.2 |
3 M 粉 % |
1.6 |
2.0 |
1.8 |
9.1 |
9.2 |
9.4 |
粉 計 % |
69.9 |
70.0 |
71.5 |
69.4 |
68.7 |
68.1 |
ふすま(大)% |
25.0 |
24.7 |
23.6 |
19.3 |
19.6 |
19.4 |
ふすま(小)% |
5.1 |
5.3 |
4.9 |
11.3 |
11.7 |
12.5 |
|
N−61号 対 照 品 |
N−61号 25krad |
N−61号 50krad |
マニトバ 対照品 |
マニトバ 25krad |
マニトバ 50krad |
1 B 粉 % |
14.4 |
13.4 |
13.3 |
4.0 |
4.0 |
4.3 |
2 B 粉 % |
13.7 |
11.8 |
11.3 |
6.3 |
5.8 |
6.0 |
3 B 粉 % |
3.5 |
4.3 |
3.3 |
1.7 |
2.0 |
1.8 |
1 M 粉 % |
36.6 |
38.9 |
38.8 |
31.0 |
32.7 |
30.6 |
2 M 粉 % |
3.8 |
4.4 |
4.7 |
19.0 |
17.9 |
19.1 |
3 M 粉 % |
1.1 |
1.0 |
1.1 |
9.5 |
9.3 |
9.8 |
粉 計 % |
73.1 |
72.8 |
72.5 |
71.5 |
71.7 |
71.6 |
ふすま(大)% |
22.6 |
22.7 |
22.9 |
18.8 |
18.4 |
18.1 |
ふすま(小)% |
4.3 |
4.5 |
4.6 |
9.7 |
9.9 |
10.3 |
テストミル挽砕により生成した各ストックの粉は次の手順で60%粉とした。
i) 1Bと1Mを混合する(混合粉I)
ii) 2Bと2Mを混合し、それを混合粉Iと混合する
(混合粉II)
iii) 上記手順で60%に達しないときは更に3Bと3Mを混合
し、これを60%に達する量だけ混合粉IIに加えて、6
0%粉とする。
iv) 全粒粉は別に粉砕し、全量により作製した。
i) 水 分:130℃、1時間乾燥減量を水分とする。
ii) 灰 分:800℃にて燃焼灰化。
iii) 粗蛋白:ケルダール法。N量×5.7
iv) 澱粉価:試料をエーテル及びアルコールにて洗浄し、その後
水を加え沸騰湯煎上にて糊化せしめる。次に5%ジ
アスターゼ浸出液を加え、55℃にて1時間分解、
2、3分煮沸後再びジアスターゼ液を加え、55℃
1時間分解する。その分解液より適当量をとり25
%塩酸にて25時間加熱分解し、後中和する。この
液をソモヂ変法により還元糖を定量する。
澱粉価(%)=還元糖(%)×0.9
v) 直接還元糖:次記マルトーズ価の自己消化時間なしに測定し
た還元糖量。
vi) マルトーズ価:試料5grにpH4.6の(酢酸・酢酸ソー
ダ)バッファー液を加え、30℃1時間自己消化せ
しめ、後にアルカリ性赤血塩の還元量から、生成し
た還元糖量をmg/10gで表す。
vii) α・アミラーゼ力価:試料10gに0.2%塩化カルシウム
溶液50mlを加え、30℃で1時間処理し、遠沈
上澄液を検液とする。
β−limitデキストリン溶液20mlに上記検
液5mlを加え、所定時間後の沃度呈色を標準液と
比較して酵素力価とする。
(Sandsteadt Kneen lBlisk による)
α−アミラーゼ力価(S.K.B)=
(0.4×60)/{サンプル量×糊精化時間(分)}
viii)白色度(Hunter):試料6gに水10m・を加え乳鉢
で混捏(30秒間)後2分以内に色差計で測定し、
次式により白色度を算出する。(60%粉のみ)
白色度=100{√(100−L)・E(2)+
(aL)・E(2)+(bL)・E(2)}
xi)サスペンジョン粘度:試料40grに30℃純水50mlを
加えB型粘度計にて測定。
x)ファリノグラフ:300grミキサーにて所定方法による。
xi)エキステンソグラフ:同上
xii)アミログラフ:60%粉65grに純水450mlを加え、
測定。又、全粒粉より澱粉を調製し、そのアミログ
ラフも測定したが、この場合は澱粉50grに純水
450mlを加えて測定した。
なお、上記試験は全て水分14.0%基準で行なった。
照射直後および2ヶ月後に挽砕、作製した60%および全粒粉の分析結果を表3−2及び3−3に、またブラベンダー機器による物性の測定結果を表3−4に示した。
以上の試験結果を考察するに当たり、先ず考慮しなければならないのはテストミルである。特にテストミルという単純な製粉では外界(気温・湿度)の影響がそのまま挽砕結果につながってしまう。従って今回の試験でも照射直後挽砕と2ヶ月後挽砕では、明らかにかたよりがあり、照射後の貯蔵期間の影響はなかなか検出しがたいものとなった。尚、テストミル挽砕結果を見ると、埼玉県産農林61号もカナダマニトバ小麦も製粉特性上は照射による影響が殆ど認められない。
分析値中で変化の認められるのは60%粉で直接還元糖が照射によりやゝ増加しているのと、全般にマルトーズが照射線量に応じて増大している点である。マルトーズ価は澱粉分解酵素力価と、その酵素に対する澱粉の受容性に影響されるが、ここではαーアミラーゼ力価は殆ど変わっていないので、澱粉の酵素受容性がやや変化したものと思われる。またブラベンダー機器による物性の測定でもアミノグラフ粘度は照射線量とともにやや減少しており、前記のマルトーズ価増大と合わせ考えると、澱粉に幾分かの変化があったものと思われる。しかしこれらの変化は小さなもので、小麦粉の物性全体から云えば、照射の影響は殆どないと考えられる。
〔照射直後挽砕〕 |
|
N−61号 対 照 品 |
N−61号 25krad |
N−61号 50krad |
マニトバ 対照品 |
マニトバ 25krad |
マニトバ 50krad |
水 分 % |
14.0 |
13.6 |
12.8 |
13.1 |
13.9 |
13.4 |
灰 分 % |
0.30 |
0.30 |
0.30 |
0.40 |
0.40 |
0.40 |
粗 蛋 白 % |
7.5 |
7.5 |
7.5 |
13.0 |
13.0 |
12.9 |
澱 粉 価 % |
73.9 |
72.6 |
72.4 |
67.4 |
67.5 |
68.1 |
直 接 還 元 糖 mg/10g |
7 |
7 |
9 |
8 |
10 |
16 |
マ ル ト ー ズ 価 mg/10g |
59 |
60 |
64 |
279 |
285 |
363 |
αーアミラーゼ 力 価 S.K.B Unit |
25× 10・E(−3) |
2.4× 10・E(−3) |
2.3× 10・E(−3) |
2.8× 10・E(−3) |
2.8× 10・E(−3) |
2.6× 10・E(−3) |
サスペンジョン 粘 度 (cp) |
4,700 |
4,600 |
4,600 |
10,600 |
10,400 |
10,400 |
白色度(Hunter) |
78.8 |
79.0 |
78.8 |
81.0 |
80.4 |
80.6 |
|
N−61号 対 照 品 |
N−61号 25krad |
N−61号 50krad |
マニトバ 対照品 |
マニトバ 25krad |
マニトバ 50krad |
水 分 % |
12.1 |
12.3 |
12.1 |
12.7 |
12.2 |
12.0 |
灰 分 % |
0.43 |
0.42 |
0.42 |
0.52 |
0.54 |
0.54 |
粗 蛋 白 % |
7.4 |
7.6 |
7.5 |
12.8 |
13.1 |
12.8 |
澱 粉 価 % |
73.1 |
70.4 |
72.8 |
68.0 |
67.5 |
68.1 |
直 接 還 元 糖 mg/10g |
7 |
8 |
8 |
8 |
9 |
12 |
マ ル ト ー ズ 価 mg/10g |
70 |
72 |
72 |
253 |
287 |
299 |
αーアミラーゼ 力 価 S.K.B Unit |
3.9× 10・E(−3) |
3.9× 10・E(−3) |
3.4× 10・E(−3) |
3.7× 10・E(−3) |
3.8× 10・E(−3) |
3.8× 10・E(−3) |
サスペンジョン 粘 度 (cp) |
5,000 |
4,300 |
4,200 |
7,900 |
8,800 |
8,000 |
白色度(Hunter) |
77.9 |
78.1 |
78.6 |
79.6 |
79.2 |
79.3 |
〔照射直後挽砕〕 |
|
N−61号 対 照 品 |
N−61号 25krad |
N−61号 50krad |
マニトバ 対照品 |
マニトバ 25krad |
マニトバ 50krad |
水 分 % |
13.2 |
12.9 |
12.9 |
12.8 |
2.9 |
12.8 |
灰 分 % |
1.68 |
1.60 |
1.64 |
1.51 |
1.52 |
1.52 |
粗 蛋 白 % |
9.2 |
9.1 |
9.0 |
13.2 |
13.4 |
13.6 |
澱 粉 価 % |
61.2 |
61.0 |
60.8 |
54.3 |
53.7 |
53.3 |
直 接 還 元 糖 mg/10g |
101 |
102 |
102 |
110 |
116 |
103 |
マ ル ト ー ズ 価 mg/10g |
137 |
147 |
154 |
164 |
166 |
166 |
αーアミラーゼ 力 価 S.K.B Unit |
5.0× 10・E(−3) |
4.4× 10・E(−3) |
4.4× 10・E(−3) |
6.2× 10・E(−3) |
5.9× 10・E(−3) |
5.9× 10・E(−3) |
サスペンジョン 粘 度 (cp) |
6,700 |
7,000 |
7,000 |
7,000 |
7,000 |
7,000 |
|
N−61号 対 照 品 |
N−61号 25krad |
N−61号 50krad |
マニトバ 対照品 |
マニトバ 25krad |
マニトバ 50krad |
水 分 % |
11.7 |
11.6 |
11.3 |
10.9 |
10.6 |
10.7 |
灰 分 % |
1.73 |
1.74 |
1.73 |
1.56 |
1.54 |
1.54 |
粗 蛋 白 % |
9.2 |
9.0 |
8.9 |
12.9 |
13.3 |
13.2 |
澱 粉 価 % |
61.0 |
60.2 |
59.9 |
52.2 |
53.1 |
52.9 |
直 接 還 元 糖 mg/10g |
104 |
105 |
106 |
112 |
109 |
102 |
マ ル ト ー ズ 価 mg/10g |
127 |
130 |
141 |
170 |
222 |
248 |
αーアミラーゼ 力 価 S.K.B Unit |
4.0× 10・E(−3) |
4.0× 10・E(−3) |
3.5× 10・E(−3) |
5.5× 10・E(−3) |
5.5× 10・E(−3) |
5.5× 10・E(−3) |
サスペンジョン 粘 度 (cp) |
6,000 |
6,700 |
7,200 |
4,500 |
6,300 |
7,600 |
〔照射直後挽砕〕 |
|
N−61号 対 照 品 |
N−61号 25krad |
N−61号 50krad |
マニトバ 対照品 |
マニトバ 25krad |
マニトバ 50krad |
|
ファリノグラフ |
吸 水 率 % |
54.0 |
54.1 |
54.6 |
66.4 |
66.3 |
67.4 |
V. V. |
39 |
38 |
37 |
70 |
73 |
69 |
|
エクステンソ グラフ |
面 積 135分、cm2 |
68 |
64 |
52 |
136 |
131 |
131 |
R/E 135分 |
1.7 |
1.6 |
1.6 |
3.5 |
3.4 |
3.3 |
|
アミログラフ |
糊 化 開 始 ℃ |
58.5 |
58.5 |
58.5 |
59.5 |
59.5 |
59.5 |
最 高 粘 度 B.U |
1,300 |
1,220 |
1,230 |
1,000 |
980 |
870 |
|
澱 粉 の ア ミ ノ グ ラ フ |
|
|
|
|
|
|
|
糊 化 開 始 ℃ |
78 |
78 |
78 |
78 |
78 |
78 |
|
最 高 粘 度 B.U |
1,120 |
1,060 |
960 |
980 |
910 |
870 |
|
|
N−61号 対 照 品 |
N−61号 25krad |
N−61号 50krad |
マニトバ 対照品 |
マニトバ 25krad |
マニトバ 50krad |
|
ファリノグラフ |
吸 水 率 % |
56.3 |
56.6 |
56.6 |
69.6 |
71.7 |
71.8 |
V. V. |
38 |
38 |
38 |
71 |
70 |
72 |
|
エクステンソ グラフ |
面 積 135分、cm2 |
53 |
54 |
50 |
134 |
117 |
110 |
R/E 135分 |
1.4 |
1.3 |
1.3 |
2.8 |
2.4 |
2.5 |
|
アミログラフ |
糊 化 開 始 ℃ |
59.5 |
59.5 |
59.5 |
59.5 |
59.5 |
59.5 |
最 高 粘 度 B.U |
1,480 |
1,450 |
1,350 |
890 |
860 |
830 |
|
澱 粉 の ア ミ ノ グ ラ フ |
|
|
|
|
|
|
|
糊 化 開 始 ℃ |
78 |
78 |
78 |
78 |
78 |
78 |
|
最 高 粘 度 B.U |
1,110 |
1,010 |
880 |
970 |
870 |
790 |
前記(1)−a)で調製した60%粉および全粒粉について、蛋白質の性状を検討した。
イ. エタノールに対する溶出率:
小麦粉1gを精秤し、それに70%エタノール50mlを
加え20分間攪拌分散させた後、12,000r.p.m
10分間遠沈し、その上澄液を供試した。
乳酸緩衝液に対する溶出率:
抽出溶媒に乳酸アルミ緩衝液(イオン強度0.1、pH3
.1)を用いる外は、エタノール抽出と同様の条件で処理し
た。
ロ. 蛋白質の測定:
小麦粉および前記2種の抽出溶液中の蛋白質量はミクロケ
ルダール法により測定し、窒素係数5.7を用いた。
ハ. ポーラログラフ蛋白波:
電解液の組成は10・E(−3)M COCl2、10・
E(−1)M NH4OH、10・E(−1)M NH4C
lであり、各成分の10倍濃度の溶液を5mlづつ50ml
容メスフラスコにとり混合し、これに一夜氷室保存したエタ
ノール抽出液2mlを加え水で定容した。電解温度は24±
0.5℃、加電圧範囲−0.8〜1.75Vにおいて電解し
、ポーラルグラムを記録した。
ニ. 澱粉ゲル電気泳動:
泳動用ゲル(イオン強度0.1、pH3.1の乳酸緩衝液
中澱粉濃度12%、200×20×60ml)の陽極側より
3.5cmのところに小麦粉懸濁液(小麦粉5gに乳酸緩衝
液 mlを加え20分間攪拌)にひたした濾紙片を挿入し
、内麦10V/cm5時間、外麦12.5V/cm3時間半
泳動した。泳動後ゲルをアミドプラック10−B1%溶液で
染色した。
表3−5および表3−6に示される通り、農林61号およびマニトバ2号の照射直後では、60%粉および全粒粉とも、2種溶媒に対する溶出率は照射によって影響を受けるとは認め難い。2ヶ月貯蔵後の試料についても照射直後の結果と同様であり、また貯蔵による変化も明らかには認められなかった。70%エタノールに溶出する蛋白は主としてグリアジン、乳酸緩衝液には水溶性蛋白、グリアジンおよびグルテニンの一部が溶出しているものと思われる。全粒粉の両種溶媒に対する溶出率が60%粉のそれらより低いのは、前者にはフスマおよび胚芽が含まれているためであろう。
農林61号の照射直後の全粒粉および60%粉のエタノール可溶性蛋白波を示したものが図3−1である。どの蛋白波も第1波と第2波の極大はそれぞれ−1.4Vと−1.6V付近に認められる。図に示されるように全粒粉および60%粉とも、蛋白波の波形波高は照射によって変化するとは認められない。マニトバ2号の蛋白波についても、照射による影響は認められない(図3−2)。
2ヶ月後の両種小麦の蛋白波には、照射による変化も経時による変化も認められず、照射直後の蛋白波とほぼ同じ波形波高を示した。また乳酸緩衝液による抽出液では、緩衝液中のアルミニウムと電解液組成との間に生ずる錯化合物と思われる沈澱を生じ、そのため蛋白波の測定は不可能であった。
農林61号、マニトバ2号とも照射前、後の全粒粉、60%粉ならびにこれらを2ヶ月間貯蔵した試料について行なった電気泳動の結果は全く同一であり、いづれも水溶性蛋白とグリアジンのバンドを認めたが、照射の影響は存在しない。
照射小麦から調製した小麦粉について、エタノールおよび乳酸緩衝液に対する蛋白質溶出率、ポーラログラフ蛋白波、電気泳動法によって小麦蛋白の小麦変性を検討した結果、50krad以下の照射試料には認知され得るほどの変化はないと結論される。
(A)農林61号 照射直後 |
項 目 |
試 料 |
||
60 % 粉 |
全 % 粉 |
||
0 25 50 krad krad krad |
0 25 50 krad krad krad |
||
水 分 (%) |
13.4 13.1 12.5 |
12.4 12.3 12.2 |
|
蛋 白 質 |
小麦粉中 (%) 乾燥重量当り(%) |
7.8 7.8 7.9 9.0 9.0 9.0 |
9.7 9.5 9.4 11.1 10.8 10.7 |
|
70 % エ タ ノ ー ル 抽 出 |
||
溶出蛋白mg/g 粉 溶出率 (%) |
39.8 39.5 39.2 51.0 50.6 49.6 |
31.6 31.0 31.3 32.6 32.6 33.3 |
|
|
乳 酸 ア ル ミ 緩 衝 液 抽 出 |
||
溶出蛋白mg/g 粉 溶出率 (%) |
56.0 54.3 56.5 71.8 69.6 71.5 |
56.4 56.0 56.5 58.1 58.1 60.1 |
|
項 目 |
試 料 |
||
60 % 粉 |
全 % 粉 |
||
0 25 50 krad krad krad |
0 25 50 krad krad krad |
||
水 分 (%) |
12.7 12.6 12.6 |
11.9 11.6 11.4 |
|
蛋 白 質 |
小麦粉中 (%) 乾燥重量当り(%) |
7.9 7.9 7.8 9.0 9.0 8.9 |
9.7 9.6 9.4 11.0 10.9 10.6 |
|
70 % エ タ ノ ー ル 抽 出 |
||
溶出蛋白mg/g 粉 溶出率 (%) |
39.8 39.5 38.7 50.4 49.5 49.6 |
30.3 30.2 29.5 31.2 31.5 31.4 |
|
|
乳 酸 ア ル ミ 緩 衝 液 抽 出 |
||
溶出蛋白mg/g 粉 溶出率 (%) |
55.8 56.0 55.1 70.8 71.2 70.8 |
53.1 54.7 53.2 54.7 56.8 56.5 |
(C)マニトバ2号 照射直後 |
項 目 |
試 料 |
||||
60 % 粉 |
全 % 粉 |
||||
0 25 50 krad krad krad |
0 25 50 krad krad krad |
||||
水 分 (%) |
12.8 13.6 12.7 |
12.2 12.2 12.2 |
|||
蛋 白 質 |
小麦粉中 (%) 乾燥重量当り(%) |
13.5 13.3 13.6 15.5 15.4 15.6 |
13.7 13.7 13.9 15.6 15.6 15.8 |
||
|
70 % エ タ ノ ー ル 抽 出 |
||||
溶出蛋白mg/g 粉 溶出率 (%) |
67.4 67.1 66.4 49.9 50.5 48.8 |
47.6 48.8 48.4 34.7 35.9 34.8 |
|||
|
乳 酸 ア ル ミ 緩 衝 液 抽 出 |
||||
溶出蛋白mg/g 粉 溶出率 (%) |
98.4 96.5 95.2 72.9 72.6 70.0 |
90.5 88.4 89.2 66.1 64.5 64.2 |
|||
項 目 |
試 料 |
||||
60 % 粉 |
全 % 粉 |
||||
0 25 50 krad krad krad |
0 25 50 krad krad krad |
||||
水 分 (%) |
13.0 12.2 11.9 |
11.4 11.0 11.3 |
|||
蛋 白 質 |
小麦粉中 (%) 乾燥重量当り(%) |
13.3 13.5 13.6 15.3 15.3 15.4 |
13.9 14.0 13.9 15.7 15.8 15.7 |
||
|
70 % エ タ ノ ー ル 抽 出 |
||||
溶出蛋白mg/g 粉 溶出率 (%) |
63.9 65.0 65.5 48.0 48.1 48.2 |
46.5 49.2 49.9 33.5 35.1 35.9 |
|||
|
乳 酸 ア ル ミ 緩 衝 液 抽 出 |
||||
溶出蛋白mg/g 粉 溶出率 (%) |
100.5 99.7 99.5 75.7 74.0 73.2 |
90.7 90.4 90.1 65.2 64.4 64.9 |
各試料を全粒粉として分析した。
試料中のシスチンは硝酸銀を用いた電流滴定によって測定した。支持電解液組成はエタノール25ml、アンモニア緩衝液(0.84 MNH3,0.17MNH4NO3)15mlで、これに精秤した試料400mgを分散させ、アセトアミド10gおよび無水亜硫酸ナトリウム0.5gを加え、N/500硝酸銀溶液で滴定した。指示電極は白金静止電極、加電圧−0.3Vであり、得られた−SH基のモル数にシスチンの分子量を乗じた値をもってシスチンの量とした。
試料1gを15mlの6N水酸化バリウムで120℃、16時間加水分解した後、3N硫酸を加え、生じた硫酸バリウムを遠沈によって除去し、上澄液をあつめ100mlに定容した。その一部を減圧乾固し、残渣をpH2.2のクエン酸緩衝液にとかし、その適当量をトリプトファンの定量に供した。
使用装置は日立KLA−3B型アミノ酸自動分析計で、使用カラムは9×200mm、溶出速度は120ml/h、溶出用緩衝液はpH5.28クエン酸緩衝液であった。
試料10mgにその100倍量の定沸点塩酸を加え、アセトンードライアイスにつけ凍結し、10mmHg以下に脱気し封管し105℃±2℃で24時間加水分解した。加水分解後、塩酸を減圧下で除去し、pH2.2のクエン酸緩衝液で定容し、その一部を中性、酸性並びに塩基性アミノ酸の分析に供した。塩基性アミノ酸に対する使用カラムは6×100mm、溶出用溶媒はpH5.28クエン酸緩衝液であり、中性、酸性アミノ酸には9×500mmカラムを使用し、溶出用溶媒は初めpH3.25、1時間10分後にpH4.25クエン酸緩衝液に変えた。溶出用速度および溶出温度はそれぞれ60ml/h、55℃であった。
キエルダール法によった。
照射直後および2ヶ月後のマニトバ2号および農林61号のアミノ酸組成を表3−7および3−8に示す。各アミノ酸含量は窒素16g当たりのグラム数で表わした。両種小麦とも50kradまでの照射では全アミノ酸組成に変化はないと認められる。
また2ヶ月貯蔵しても、両種小麦について、対照並びに両照射試料ともアミノ酸組成に変化を生じないことが認められた。
マニトバ2号の照射直後並びに2ヶ月後のアミノ酸組成(アミノ酸g/16N) |
|
照 射 直 後 |
2 ヶ 月 後 線量(krad) |
||||
0 |
25 |
50 |
0 |
25 |
50 |
|
トリプトファン リジン ヒスチジン アルギニン アスパラギン酸 スレオニン セリン グルタミン酸 プロリン グリシン アラニン シスチン バリン メチオニン イソロイシン ロイシン チロシン フェニルアラニン |
1.2 2.4 2.1 4.4 4.5 2.5 4.5 30.2 10.2 3.8 3.2 1.7 3.8 1.4 3.3 6.3 2.8 4.8 |
1.1 2.4 2.3 4.4 4.5 2.5 4.7 29.8 10.1 3.8 3.3 1.7 3.7 1.4 3.3 6.2 2.9 4.7 |
1.1 2.4 2.2 4.3 4.6 2.8 4.6 29.9 10.5 3.7 3.3 1.7 3.8 1.4 3.4 6.1 3.0 4.6 |
1.1 2.4 2.1 4.3 4.6 2.6 4.6 29.8 10.4 3.8 3.3 1.6 3.7 1.4 3.1 5.2 3.0 4.7 |
1.3 2.4 2.2 4.4 4.6 2.6 4.6 29.8 10.5 3.8 3.2 1.7 3.7 1.4 3.2 6.2 3.0 4.6 |
1.2 2.3 2.1 4.2 4.6 2.7 4.7 30.3 10.8 3.8 3.3 1.6 3.7 1.3 3.1 6.3 2.8 4.7 |
農林61号の照射直後並びに2ヶ月後のアミノ酸組成(アミノ酸g/16N) |
|
照 射 直 後 |
2 ヶ 月 後 線量(krad) |
||||
0 |
25 |
50 |
0 |
25 |
50 |
|
トリプトファン リジン ヒスチジン アルギニン アスパラギン酸 スレオニン セリン グルタミン酸 プロリン グリシン アラニン シスチン バリン メチオニン イソロイシン ロイシン チロシン フェニルアラニン |
1.2 2.6 2.3 5.0 5.2 2.7 4.7 28.1 10.0 4.0 3.4 1.8 3.7 1.5 2.9 6.3 2.6 4.4 |
1.2 2.7 2.3 4.8 5.5 2.8 4.9 27.8 10.1 4.2 3.5 1.7 3.7 1.4 3.0 6.5 2.4 4.5 |
1.2 2.6 2.3 4.7 5.2 2.8 4.8 28.6 10.2 4.0 3.4 1.8 3.7 1.4 2.9 6.3 2.4 4.4 |
1.1 2.6 2.3 5.0 5.3 2.7 4.7 28.7 10.6 4.1 3.4 1.7 3.7 1.4 3.1 6.4 2.5 4.5 |
1.2 2.6 2.2 4.8 5.2 2.8 4.8 28.6 10.3 4.0 3.4 1.7 3.7 1.3 3.1 6.5 2.6 4.5 |
1.2 2.6 2.3 4.8 5.3 2.7 4.7 28.4 10.4 4.1 3.4 1.6 3.7 1.4 3.1 6.4 2.3 4.5 |
各試料を全粒粉とし、以下の方法で分析した。
総脂質の測定はソックスレー抽出器を用いてエーテルにて20時間抽出した。また鹸化値、沃素価、酸価、過酸化物価及びガスクロマトグラフィーによる脂肪酸組成の検討のためには、大型試薬瓶(5立)中に試料を入れ、2倍量のエーテルにて24時間浸漬抽出した。
常法により測定した。
抽出脂質をN/2 alc.KOHで2時間鹸化して脂肪酸を分取し、ジアゾメタンにてメチルエステルとしたのち、Succinate polyester column によるガスクロマトグラフィーを行なった。
エーテルにて脱脂した全粒粉試料に基質としてTween80を加え、燐酸緩衝液(pH7.5)中にて35℃120分反応させたのち、上澄液をアルカリにて滴定した。
試料の水分含量は照射直後と2ヶ月貯蔵後では若干の差が認められたが、実験結果はすべて乾物換算値で示した。また夫々の値は三回測定の平均値である。総脂質量、酸価、鹸化価、沃素価は照射により殆ど影響を受けない。また貯蔵によっても特に顕著な変化は認め難い。過酸化物価は2ヶ月貯蔵により増加を示したが、照射による影響は認められなかった。(表3−9)
ガスクロマトグラムから夫々の脂肪酸の面積を求め、パルミチン酸量を10として夫々の面積比を算出して脂肪酸の構成比を比較検討すると、表3−10、検知し得た脂肪酸の中でリノール酸の含量が最も多い。照射によりこれら脂肪酸の構成比には殆ど変化を認められない。貯蔵によりリノール酸及びリノレン酸が増加する傾向を示したが、この場合も照射による影響は認め難い。
マニトバ小麦のリパーゼ活性は表3ー11に示す如く、50kradの線量の範囲内では照射により殆ど影響を受けないものと考えられる。
照射麦の総脂質、酸価、鹸化価、沃素価及び過酸化物価 |
試 料 |
線 量 krad |
総 脂 質 量 |
酸 価 |
酸 化 価 |
沃 素 価 |
過 酸 化 物 価 |
|||||
照射直後 |
60日後 |
照射直後 |
60日後 |
照射直後 |
60日後 |
照射直後 |
60日後 |
照射直後 |
60日後 |
||
マニトバ |
00 25 50 |
2.39 2.41 2.41 |
2.43 2.47 2.23 |
24.1 24.3 24.7 |
27.9 29.6 23.5 |
178 176 174 |
183 183 186 |
120 121 123 |
119 120 117 |
5.3 5.2 5.4 |
11.3 11.8 11.9 |
農林61号 |
0 25 50 |
2.21 2.13 2.10 |
1.95 1.99 1.98 |
16.3 17.6 16.4 |
20.2 18.7 20.0 |
180 187 183 |
187 186 176 |
115 115 115 |
113 116 113 |
18.4 18.0 19.1 |
|
ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸構成比(Palmitate量を10とする) |
試 料 |
線 量 krad |
Stearate |
Oleate |
Linoleate |
Linolenate |
||||
照射直後 |
60日後 |
照射直後 |
60日後 |
照射直後 |
60日後 |
照射直後 |
60日後 |
||
マニトバ |
00 25 50 |
+ + + |
+ + + |
8.9 8.9 9.0 |
10.2 7.5 10.2 |
30.3 30.4 30.0 |
36.8 24.1 35.8 |
1.7 1.6 1.8 |
2.2 1.5 2.4 |
農林61号 |
0 25 50 |
0.4 0.2 0.4 |
+ + + |
8.1 8.2 8.0 |
7.5 6.5 7.2 |
27.9 29.2 28.5 |
28.0 24.4 27.2 |
1.7 2.2 1.7 |
1.9 1.4 2.0 |
注) +は痕跡 |
マニトバ種小麦のリパーゼ活性 |
線 量 krad |
実 験 1 2 3 |
平 均 |
||
0.089N NaOHのml数 |
||||
00 25 50 |
6.90 6.44 6.70 |
6.73 6.49 6.45 |
6.03 6.68 6.45 |
6.57 6.54 6.53 |
イ. 試料小麦を粉砕機で粉砕した後乳鉢で更に微粉末とする。この
試料1gに抽出液と、1〜2滴のトルエンを加え30℃にて抽出
を行なった。抽出は、αーアミラーゼは10mlの蒸留水で3時
間振盪し、βーアミラーゼは20mlの5%硫酸カリで20時間
静置して行なった。
ロ. 抽出液は10分間10,000r.p.mで遠心分離したのち
、上澄液を希釈して酵素液とした。
ハ. αーアミラーゼの活性はBlue−Value法により、βー
アミラーゼの活性は、デンプンの溶液と反応させ生成するmal
tose量をSomogyi,Nelson法により定量し、抽
出液中の還元糖量を差し引いてβーアミラーゼ活性を求めた。
両品種の小麦のαーアミラーゼ活性を照射直後及びその2ヶ月後に測定し、同じ条件の非照射小麦の場合と比較検討した結果は、図3ー3に示す通りで、いずれの線量によっても照射の影響は認められず、2ヶ月後の場合も同様であった。
βーアミラーゼ活性についての同様の測定結果を図3ー4に示すが、このβーアミラーゼ活性についても、照射の影響は殆ど認められなかった。また照射後2ヶ月貯蔵した場合には、非照射の場合も僅かに活性の低下がみられ、25krad,50krad照射したものは僅かにその低下が大きかったが、有意差は認められなかった。
両アミラーゼ活性ともマニトバ種が農林61号に比して高い値を示していた。但しマニトバ種については、その収穫時期、貯蔵条件が明確でない。
なお両品種試料の水分は、マニトバ種12.7%、農林61号種13.9%であった。
各照射区及び非照射対照の小麦5gを50mlの滅菌水に懸濁し5分間激しく振盪した後、この懸濁液について希釈法により各種微生物菌数を計測した。
また各試料麦粒を直接ペトリ皿の培地面に置いて各種微生物の発生も調べた。これらの実験には培地はポテト・デキストローズ寒天、ツアペック寒天、肉汁寒天、麦芽汁イーストエキス寒天を用い、培養温度は30℃。
分離した微生物は糸状菌、細菌とごくまれに放線菌であったので、それらの同定は常法にしたがって実施した。即ち糸状菌はポテト・デキストローズ寒天、又はツアペック寒天のスライドカルチャの形態観察により、細菌はグラム染色、運動性、鞭毛染色、糖の醗酵性、その他の生理試験によった。
イ. 懸濁法による総菌数に関する結果は表3ー12に示した。即ち供
試非照射小麦のミクロフローラとしては、細菌が10・E(5)/
g、糸状菌は10・E(3)/gが検出された。これが照射によっ
て10・E(−1)の減少があり、照射後室温貯蔵2ヶ月でもほぼ
この割合が持続した。従って貯蔵2ヶ月中に総菌数の顕著な増減は
認められなかった。
ロ. 麦粒直接法による菌数測定の結果は表3ー13に示した。輸入小
麦マニトバ種では、細菌及び糸状菌のいずれについても照射線量の
増加に伴って無菌粒が増加した。糸状菌では50krad照射で無
菌粒率が30%、細菌では無菌粒率が16〜20%を占めた。この
傾向は2ヶ月貯蔵でも同様であった。しかしながら「農林61号」
では照射線量による差は認められず、90%以上の供試粒に糸状菌
、細菌のコロニーが認められた。供試小麦の種類によるこの差は、
小麦の鮮度によるものかとも考えられる。
ハ. 分離微生物の同定結果はいずれも糸状菌か細菌に属するものであ
った。農林61号では糸状菌の種類が著しく限定され、Helmi
nthosporium属と、Alternaria属のみが検出
された。しかし2カ月貯蔵後にはAspergillus属、Pe
nicillium属が各1株、Rhizopus属5株が検出さ
れ、これは貯蔵に伴うミクロフローラの変遷を示すものと考えられ
る。
一方マニトバ種では検出した糸状菌の種類が多く、主として、H
elminthosporium、Alternaria属である
が、Aspergillus,Penicillium Rhiz
opus属も5〜15%の麦粒から検出された。更に放線菌も10
〜20%出現した。
ニ. 表3ー13の農林61号について検出された細菌を分類すると表
3−14のようになる。
細菌としてBacillus cereus,B.megaterium が70〜80%を占め、次に多いのがB.subtilisで約10%検出された。これら細菌は50kradまでの線量では大きな影響を受けず、貯蔵後においてもほぼ同じ割合で残存した。しかし注目すべきはYellow pigmented bacteria(黄色色素細菌)であって、50krad照射直後には急に出現率が高まり約16%となるが、2ヶ月貯蔵後には減少する。このことは黄色色素細菌が放射線には抵抗性があるが、貯蔵中に死滅しやすいことを示すようである。米に附着する放射線抵抗性細菌としてRed Pseudomonasが知られており、これに対比して本菌の存在が小麦特有な現象か否か興味深い。本菌は短桿菌で運動性を有し、グラム染色陰性、同鞭毛であった。また各種の生理的性質を調べた結果、糖よりの酸の生成は醗酵型であることなどより、本菌はPseudomonas属でなく、Enterobacteriaceaeに属するErwinia herbicolaと同定した。
|
照 射 直 後 |
照 射 後 2 ヶ 月 室 温 貯 蔵 |
||
細 菌 |
糸 状 菌 |
細 菌 |
糸 状 菌 |
|
非 照 射 区 25 krad 50 krad |
2×10・E(5)/g 5×10・E(4) 2.5×10・E(4) |
1.5×10・E(3)/g 3.5×10・E(3) 1 ×10・E(3) |
3×10・E(5)/g 1×10・E(5) 5×10・E(4) |
2×10・E(3)/g 1×10・E(3) 3×10・E(2) |
種 類 |
照 射 区 分 |
照 射 直 後 |
照 射 後 2 ヶ 月 室 温 貯 蔵 |
||
細 そ 無 の 菌 他 菌 |
カ そ 無 の ビ 他 菌 |
細 そ 無 の 菌 他 菌 |
カ そ 無 の ビ 他 菌 |
||
マ ニ ト バ 種 |
非 照 射 区 25 krad 50 krad |
97 2 1 71 18 6 69 15 16 |
66 7 27 46 16 37 59 11 30 |
100 0 0 100 0 0 65 12 23 |
100 0 0 77 0 23 61 0 39 |
農 林 6 1 号 |
非 照 射 区 25 krad 50 krad |
91 9 0 100 0 0 98 1 1 |
96 4 0 100 0 0 97 3 0 |
95 5 0 97 3 0 91 7 1 |
94 6 0 94 6 0 96 4 0 |
|
照 射 区 別 |
B.cereus B.megaterium |
B.subtilus |
Yellow pigmented bacteria |
照 射 直 後 |
非 照 射 区 25 krad 50 krad |
74 79 70 |
13 18 13 |
6 3 15 |
2 ヶ 月 貯 蔵 後 |
非 照 射 区 25 krad 50 krad |
84 85 78 |
8 10 8 |
3 2 5 |
カナダ産マニトバ2号および埼玉県産農林61号小麦玄麦に25kradおよび50kradのガンマ線照射を行い、照射直後および室温2ヶ月貯蔵後の試料について各種分析・測定を実施し、以下の結果を得た。
各試料からテストミル挽砕により60%粉および全粒粉を調製したが、製粉特性には照射の影響は認められない。水分、灰分、粗蛋白質、澱粉価、αーアミラーゼ力価、サスペンジョン粘度、Hunter白色度には照射の影響が全く認められないが、60%粉では照射により直接還元糖がやや増加し、また全体にマルトーズ価が増大する。ブラベンダー試験の結果は、ファリノグラフ、エクステンソグラフ測定値に変化はないが、60%粉および澱粉のアミログラフ粘度は線量の増加につれやや低下する。
60%粉、全粒粉とも、70%エタノール、乳酸アルミに対する溶出率、溶出蛋白質のポーラログラフ波、澱粉ゲル電気泳動による分画図で示される蛋白質の性状には、照射直後および貯蔵後も変化が認められない。
各試料の全粒粉についてシスチンを含む18種類のアミノ酸の定量を行なったが、照射直後、2ヶ月貯蔵後とも全アミノ酸組成に変化を認めない。
各試料の全粒粉から抽出した脂質の総脂質量、酸価、鹸化価、沃素価は殆ど影響をうけない。過酸化物価は貯蔵後増加するが、照射の影響は認められない。ガスクロマトグラフにより構成脂肪酸のパルミチン酸、ステアリン酸などの構成比を測定したが殆ど影響は見られない。
各試料のαーアミラーゼ活性およびβーアミラーゼ活性を測定したところ、αーアミラーゼ活性には全く差異がなかった。βーアミラーゼ活性は貯蔵後の照射試料でやや低下したが有意差は認められなかった。
非照射試料の細菌数は10・E(5)/g、糸状菌数は10・E(3)/gであり、50kradの照射により細菌数は半減するが、糸状菌数は殆ど変わらない。貯蔵中も菌数に顕著な増減はない。分離微生物は、糸状菌では不完全菌が、細菌ではBacillus属が大部分である。照射試料では黄色色素生産菌Erwinia herbicolaの出現率が増加するが、この細菌の放射線抵抗性が大きいためと思われる。
以上の試験結果を総合すると、輸入および国内産小麦とも、50krad以下の照射線量では照射直後及び2ヶ月貯蔵後とも、小麦の品質に影響を与えるほどの変化を生じないものと結論される。
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