カナダ産パン用強力小麦マニトバ(1968〜69年産)および国内産強力小麦農林27号(N−27、1969年産)を10kgずつダンボール箱に入れ、日本原子力研究所高崎研究所においてCo−60のガンマー線照射を行った。線量は20〜100kradである。
Buhlerの試験用製粉機により60%歩留まりで製粉した。小麦の成分組成は表4−1に示した。ドウの物性はファリノグラフおよびエキステンソグラフにより測定した。
|
水 分(%) 灰 分(%) 蛋白質(%) |
マニトバ N−27 |
14.7 0.51 12.7 14.5 0.45 12.8 |
小麦粉懸濁液を一定時間静置した時の沈降値を表わしたものでグルテンの量と質および抱水力を示しており、ACC法により測定した。
ChopinのチモタキグラフおよびBrabenderのマチュログラフにより測定した。
直捏法および中種法によりパンを作り、パンの品質評価を外観30点(5項目)、内相70点(5項目)で行った。又パンの体積も同時に測定した。パンの原料組成は下に示した。
直捏法 中種法
中種 本捏
小麦粉 100g 70g 30g
圧搾酵母 2 2
食塩 2 2
グラニュー糖 4 4
ショートニング 3 3
水 適量 適量 適量
表4ー2から、N−27の場合100kradでやや吸水性が減少したが、全体的に明瞭な減少傾向は認められなかった。一方マニトバでは照射による吸水減少が認められた。DT(デベロップメントタイム)や小麦粉の強力度を示すVV(バロリメーターバリュ)、またWeakness(弱化度)には照射による変化は認められなかった。エキステンソグラフによるドウのE(伸長度)およびR(伸長抵抗)には照射による差異は認められなかった。N−27を3ヶ月貯蔵してファリノグラムにおけるDT,VV,エキステンソグラムにおけるA(面積)、Eを検討したが照射による変化は認められなかった。
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線 量 (krad) |
||||||
0 |
20 |
50 |
100 |
||||
マ ニ ト バ 小 麦 |
照 射 直 後 |
ファリノ |
Abs% D.T.(分) V.V. Weakness |
68.0 10.0 79 7 |
65.0 10.5 81 6 |
66.5 9.5 97 6 |
66.0 10.0 80 8 |
イクステンソ |
A R E R/E |
155 590 190 3.1 |
170 650 193 3.4 |
182 610 212 2.9 |
142 570 180 3.2 |
||
農 林 2 7 号 | N | 2 7 |
照 射 直 後 |
ファリノ |
Abs% D.T.(分) V.V. Weakness |
58.7 3.5 50 18 |
58.0 3.7 52 16 |
58.5 3.0 49 19 |
57.5 3.2 50 18 |
イクステンソ |
A R E R/E |
78 215 230 0.9 |
76 255 214 1.2 |
90 255 231 1.1 |
75 205 237 0.7 |
||
照 射 3 ヶ 月 後 |
ファリノ |
Abs% D.T.(分) V.V. Weakness |
57.0 2.7 44 19 |
58.5 2.5 45 17 |
58.5 2.8 45 19 |
57.0 2.3 47 19 |
|
イクステンソ |
A R E R/E |
66 235 186 1.3 |
53 200 179 1.1 |
53 230 178 1.3 |
64 230 184 1.3 |
Abs :吸水 V.V. :バロリメーターバリュー Weakness:弱化度 A :面積 D.T :デベロップメントタイム R :ドウの伸長抵抗 E :ドウの伸長度 |
マニトバ、N−27共小麦粉の粘度は図4ー1、2に示したように照射の影響が認められた。図中のG.T.(糊化開始温度)、M.T.(最高粘度温度)に変化はないが、MV(最高粘度)は20kradで低下し、線量と共にさらに低下した。このMV値の低下から澱粉とグルテン、特に澱粉になんらかの損傷が起っているものと思われる。3ヶ月貯蔵後は、アミラーゼ活性の低下によると思われMV増大が認められたが、照射による影響はなかった。
表4−3に照射直後の値を示した。N−27では明らかでないがマニトバでは照射により減少するのが認められた。これはファリノグラムにおけるマニトバの吸水減少と一致し、国産小麦のN−27よりマニトバの方が放射線により敏感であった。
(照射直後) |
線量(krad) |
マニトバ |
N−27 |
0 20 50 100 |
51.0 48.2 47.9 45.2 |
36.0 34.5 35.9 35.2 |
線量が高くなると明らかにガス発生量は減少し特にマニトバでは20krad照射ガス発生量の減少が認められた(図4−3)。
焙炉(ホイロ)における醗酵程度を示すマチュログラフによる測定結果では、焙炉時間、醗酵安定性、弾性などにほとんど変化は認められなかったが、照射し、3ヶ月貯蔵したもので、ドウ膨張度が高かった(表4−5)。
|
線 量 (krad) |
|||
0 |
20 |
50 |
100 |
|
マニトバ N−27 |
MU 900 800 |
MU 960 880 |
MU 990 905 |
MU 970 880 |
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水 分 (%) |
灰 分 (%) |
蛋 白 質(%) |
内 麦 外 麦 |
13.0〜13.6 12.3〜12.8 |
0.41〜0.45 0.38〜0.42 |
10.5〜10.6 9.1〜 9.2 |
パンの体積変化を図4−4に示した。元来、マニトバはパン用小麦でありN−27はパンに不向きな小麦である。照射直後は直捏法、中種法いずれによる場合もパン体積変化と照射との相関は認められなかった。しかし3ヶ月貯蔵後には、照射小麦の方が明らかに非照射のものより大きく、特にマニトバの50krad照射したもので大きかった。N−27では中種法における100kradで体積の増大が顕著であった。
又製パン工程中におけるドウの取り扱い性には照射による影響は認められなかった。
照射小麦から作ったパンの香りについて図4−5に示した。照射直後では20kradでも異臭が生成しており、線量と共に香り、総合点とも低下している。しかし照射小麦を3ヶ月貯蔵した後では、このオフフレーバーはかなり軽減している。このため香りの評点では線量とともにいくらか低くなっているが、前述のように体積の増大を伴うため総合点ではマニトバでもN−27でも非照射のもの以上となっている。
国内産小麦として農林61号(昭和47年度、以下内麦とする)、外国産小麦としてアメリカ産ダークハードウィンター、ウェスタンホウィトおよびオーストラリア産ウェスタンオーストラリアFAQの3種を3:3:4の比率でうどん用の標準的配合に混合したもの(以下外麦とする)を用いた。
放射線処理は、ガンマーセル220により20〜100kradまで行った。照射後半量を20℃に3ヶ月間貯蔵し試験に用いた。
製パン適性の場合と同様に処理し、小麦粉の成分組成を表4−6に示した。
線 量(krad) |
歩 留 り(%) |
ミリングスコア |
灰分移行率(%) |
||||
A |
B |
A |
B |
A |
B |
||
内 麦 (N−61) |
0 20 50 100 |
69.5 67.3 67.3 64.9 |
70.2 70.2 69.2 67.2 |
78.5 80.3 79.8 78.4 |
80.2 79.7 79.2 80.2 |
43.9 46.3 45.8 45.1 |
45.3 44.8 44.7 46.1 |
外 麦 |
0 20 50 100 |
74.7 73.9 74.0 74.3 |
72.7 73.6 73.4 72.9 |
88.2 86.9 87.5 87.8 |
85.2 85.1 84.9 84.9 |
51.4 50.3 50.9 51.1 |
49.0 48.5 48.4 48.6 |
A:照射直後 B:3ヶ月貯蔵後 |
次の条件でめんを製造した。原料粉500g、食塩10g,水158.5ml、これをミキサーで混合し、小型製めん機でめんとした。切刃は3mm又は2.6mmを用いた。
生めん76g(乾物として約50g)を秤量し、純水1lを沸騰させてある還流冷却器付のナス型フラスコに入れ25分又は40分間ゆでた。ゆで時間はゆでめんの水分が76%になる時間で表わした。これは、25分および40分ゆでた時のゆでめんの水分から作図で求めた。ゆで時の溶出物割合は、ゆで液を1lに定容後その50mlを蒸発皿に採り、蒸発乾固量を求め、生めんの乾物に対する比率で表わした。
めん線のせん断強度および引張り強度を小型引張り試験機(テンシロンUTM=II)を用いて測定した。せん断強度は、図4−6に示すような台に生めんは1本、ゆでめんは2本をのせ、この台を20mm/minで下降させたとき、ロードセルから下っているプレートにひっかかり、せん断される応力をもって表わした。引張り強度はめん線をナイロンのマジックテープを張った保持具で50nmの長さに固定し20nm/minの引張り速度で測定した。測定は5回行い平均値を用いた。
ゆでめんの肌あれ、色沢、匂い、舌ざわり(なめらかさ)、歯切れ(硬さ、弾力)、味および総合の7項目について24名のパネルで評点した。3ヶ月貯蔵後の試料については製粉5社の製めん技術者もパネルに加えた。
表4−7から製粉歩留りは内麦の照射区でやや低くなっているが有意な差ではない。その他では照射、非照射間の差はない。
線 量 (krad) |
ファリノグラム |
イクステンソグラム |
||||||||
Ab (%) |
DT (min) |
Stab (min) |
Wk (B.U.) |
VV |
A (cm2) |
R (B.U.) |
E (mm) |
R E |
||
照 射 直 後 |
0 20 50 100 |
55.9 55.3 55.4 55.5 |
5.8 6.3 6.3 6.0 |
6.9 8.1 6.6 7.7 |
55 50 55 55 |
63 65 65 63 |
73 77 76 83 |
295 315 305 340 |
175 173 174 172 |
1.7 1.8 1.8 2.0 |
3ヶ月 貯蔵後 |
0 20 50 100 |
55.5 56.4 56.3 56.2 |
3.6 3.9 3.8 3.5 |
12.1 8.0 9.3 10.3 |
30 45 45 30 |
60 58 58 59 |
87 84 93 95 |
360 360 370 390 |
172 164 179 176 |
2.1 2.2 2.1 2.2 |
Ab: 吸水率 DT: 生地生成時間 Stab:安定性 Wk: 弱化度 VV: バロリメーターバリュー A: 面積 R: 伸長抵抗 E: 伸長度 |
表4−7、8に結果を示した。ファリノグラフによって小麦粉の吸水製および混捏耐性を比較したが、内麦、外麦とも照射直後も、3ヶ月貯蔵後もいずれも照射の影響は認められなかった。エキステンソグラフによって小麦生地の伸長抵抗および伸長度を比較したが、この場合もいずれも照射の影響は認められなかった。
線 量 (krad) |
ファリノグラム |
イクステンソグラム |
||||||||
Ab (%) |
DT (min) |
Stab (min) |
Wk (B.U.) |
VV |
A (cm2) |
R (B.U.) |
E (mm) |
R E |
||
照 射 直 後 |
0 20 50 100 |
55.9 55.3 55.4 55.5 |
5.8 6.3 6.3 6.0 |
6.9 8.1 6.6 7.7 |
55 50 55 55 |
63 65 65 63 |
73 77 76 83 |
295 315 305 340 |
175 173 174 172 |
1.7 1.8 1.8 2.0 |
3ヶ月 貯蔵後 |
0 20 50 100 |
55.5 56.4 56.3 56.2 |
3.6 3.9 3.8 3.5 |
12.1 8.0 9.3 10.3 |
30 45 45 30 |
60 58 58 59 |
87 84 93 95 |
360 360 370 390 |
172 164 179 176 |
2.1 2.2 2.1 2.2 |
Ab: 吸水率 DT: 生地生成時間 Stab:安定性 Wk: 弱化度 VV: バロリメーターバリュー A: 面積 R: 伸長抵抗 E: 伸長度 |
線 量 (krad) |
ファリノグラム |
イクステンソグラム |
||||||||
Ab (%) |
DT (min) |
Stab (min) |
Wk (B.U.) |
VV |
A (cm2) |
R (B.U.) |
E (mm) |
R E |
||
照 射 直 後 |
0 20 50 100 |
57.8 58.6 59.0 59.2 |
4.4 4.5 4.5 4.5 |
5.4 5.4 4.9 5.7 |
65 70 70 65 |
57 56 56 56 |
95 91 90 93 |
415 395 400 380 |
170 175 169 171 |
2.4 2.3 2.4 2.3 |
3ヶ月 貯蔵後 |
0 20 50 100 |
59.5 60.0 60.4 60.8 |
5.5 6.2 6.0 5.8 |
7.7 7.4 7.0 7.0 |
55 55 55 55 |
61 63 63 63 |
102 88 101 96 |
455 405 435 430 |
169 166 171 167 |
2.7 2.5 2.6 2.6 |
図4−7から内麦、外麦とも照射により最高粘度が低下し、20kradで約10%、50kradで約20%、100kradで約30%の粘度低下を示している。一方糊化開始温度や最高粘度温度には変化はみられなかった。これらの結果は製パン適性での試験結果と一致するもので、照射による澱粉分子のダメージが推定された。
マルトースバリューについては表4−9から内麦、外麦ともに増加する傾向にあり、放射線による損傷澱粉の酵素感受性が増加したものと考えられる。
セジメンテーションバリューを表4ー10に示したが、内麦、外麦ともに照射の影響は認められなかった。
線 量(krad) |
マルトースバリュー |
||
照射直後 |
3ヶ月貯蔵後 |
||
内 麦 (N−61) |
0 20 50 100 |
74 80 78 80 |
82 85 87 112 |
外 麦 |
0 20 50 100 |
158 170 170 179 |
166 168 170 184 |
小麦粉のセジメンテーションバリューに対する照射の影響 |
線 量(krad) |
沈 こ う 価 |
||
照射直後 |
3ヶ月貯蔵後 |
||
内 麦 (N−61) |
0 20 50 100 |
41.7 42.1 41.4 41.7 |
41.7 42.3 42.3 43.4 |
外 麦 |
0 20 50 100 |
29.5 29.7 29.6 29.0 |
31.5 30.3 29.7 30.3 |
図4−8から線量の増加と共に内麦、外麦共に溶出物量は増加している。この増加は照射直後の試料でも3ヶ月貯蔵したものでもほとんど変わらない。溶出物の増加は、照射により小麦澱粉がダメージを受けたことを示している。実際のゆでめんの歩留りは照射量の増加とともに減少した。
ゆでめんの水分が76%になるまでのゆで時間は、内麦で照射直後の31.2分が3ヶ月後には33.6分とゆで時間は長くなった。非照射小麦もこれと同様な傾向を示し、照射による影響は認められなかったが、貯蔵による変化は明確であった。外麦では照射直後で27.6分、3ヶ月貯蔵後で30.3分と内麦の例と同じ傾向にあり、照射による変化は認められなかった。
ゆでめんの水分含量を考慮したせん断強度と引張り強度の測定結果を図4−9(内麦)および図4−10(外麦)に示した。図からわかるようにこれらの値は明らかに線量と共に低下しており、わずかではあるがせん断強度の方がより低下の程度が強かった。しかし、生めんについてはせん断強度も引張り強度も照射による変化は認められなかった。
内麦(表4−11)および外麦(4−12)の官能検査結果を示した。内麦は照射直後の試料では照射の影響がそれ程大きくはないが、3ヶ月貯蔵後では照射による評点の低下が全般的に現われてくる。一方外麦では、照射直後でも3ヶ月後でも照射の影響がかなり認められ、
この官能による硬さの低下は、めんの物性値の測定結果と完全に一致している。官能評価の他の項目の評価も照射により低下しているが、これは歯切れの評点低下に引きずられていることもあろう。
線 量(krad) |
外 観 |
色 |
匂 い |
なめらかさ |
硬 さ |
味 |
総 合 点 |
|
照射 直後 |
0 20 50 100 |
0 −0.34 −0.40 −0.45 |
0 +0.05 +0.05 −0.65* |
0 +0.30 −0.35 −0.40 |
0 0 −0.60* −0.25 |
0 −0.30 −0.90* −1.05* |
0 +0.25 −0.15 −0.40 |
0 −0.65 −1.30* −1.40* |
3ヶ月 貯蔵後 |
0 20 50 100 |
0 −0.50 −0.63 −0.46 |
0 −0.54** −0.58 −0.21 |
0 −0.46* −0.54* −0.87* |
0 −0.71 −1.09* −1.38* |
0 −0.54 −1.13* −1.29* |
0 −0.79* −0.62* −1.08* |
0 −0.87* −1.04* −1.42* |
24人のパネルで評点、−5〜−1(不良)、0(平均)、1〜5(良) * 1%レベルで有意差あり ** 5%レベルで有意差あり |
線 量(krad) |
外 観 |
色 |
匂 い |
なめらかさ |
硬 さ |
味 |
総 合 点 |
|
照射 直後 |
0 20 50 100 |
0 −0.30 −1.10* −1.55* |
0 +0.05 −0.90 −1.15* |
0 −0.20 −0.75 −1.05* |
0 −0.50 −1.05* −2.25* |
0 −1.30 −1.30* −2.35* |
0 −0.65 −1.35* −2.05* |
0 −0.45 −1.25* −1.90* |
3ヶ月 貯蔵後 |
0 20 50 100 |
0 −0.39 −0.64 −0.74** |
0 −0.90* −0.90* −1.25* |
0 −0.22 −0.47* −0.68* |
0 −0.83** −1.11* −1.83* |
0 −1.08* −1.43* −2.47* |
0 −0.46 −0.96* −1.60* |
0 −0.68* −1.14* −1.89* |
(1) 小麦に20〜100kradガンマー線照射を行い、ファリノグラフおよびエキステンソグラフによりドウの物性に対する照射の影響を検討したが、照射直後、3ヶ月後共に特に著しい変化は認められなかった。
(2) アミログラムから糊化開始温度と最高粘度温度には変化はみられなかったが、最高粘度は20kradでも若干低下し、線量の増加とともに低下は顕著になったことから澱粉の損傷が推定された。
(3) 小麦タンパクの抱水力を測定するためのセジメンテーション値をみると、照射直後はマニトバで減少傾向がみられ農林27号でははっきりした差異が認められなかった。
(4) 焙炉(ホイロ)における醗酵をみると焙炉時間、醗酵安定性、弾性などで照射に由来する変化は認められなかった。しかしドウの膨張度では、照射により増加する傾向がみられた。
(5) 製パン試験の結果、照射直後のマニトバ小麦では20kradでもオフフレーバーの発生が認められ、線量とともに激しかった。しかし照射後3ヶ月をすぎたものではオフフレーバーはかなり軽減された。
(6) パンの体積は、照射3ヶ月後の小麦では明らかに増大しており、また農林27号よりマニトバで著しかった。
以上の結果より製パン原料としての小麦の限界線量は50kradと思われた。その際オフレーバーの発生について留意する必要がある。
(1) 小麦に20〜100kradのガンマー線照射を行い、ファリノグラフおよびエキステンソグラフにより小麦粉の物性に対する照射の影響を検討した。照射直後、3ヶ月後共にいずれも特に著しい変化は認められなかった。又製粉適性も照射、非照射間の差は認められなかった。
(2) しかしアミログラムにより最高粘度は20kradから低下し線量の増加とともにさらに低下することが示され、照射による澱粉分子の損傷が推定された。
(3) 照射小麦で作っためんではゆで時の溶出量が線量と共に多くなり、100krad照射で15〜20%(内麦)、又は22〜23%(外麦)の増加が認められた。
(4) ゆでめんの物性として、せん断強度、引張り強度を測定した。線量と共にこれらの強度は低下し、照射直後よりも、3ヶ月貯蔵後の方が評価が低下した。又めん線が弱くなる傾向がみられた。
(5) ゆでめんの官能検査の結果、評価点は照射直後、3ヶ月貯蔵共に線量と共に低下した。又、外麦の方が内麦よりも照射の影響をやや受けやすかった。
以上の結果、ゆでめんの食味(特にテクスチャー)が照射の影響を受けやすいことがわかった。
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