食品に放射線を照射するには、放射線を出す線源と、線源から出る放射線を適正に照射するための設備が必要です。食品照射では、現在は主にコバルト60という放射性同位元素、あるいは電子線加速器を線源として用います。コバルト60は、ステンレスのパイプの中に密封されていて、外に飛び散ることなく、パイプの外にガンマ線だけを放出します。電子線加速器は人工的な電子線の発生装置です。これらのいずれを線源として用いる場合も、照射のための設備として、照射室と照射用のコンベアなどを必要とします。放射線を照射するときは、まず厚いコンクリートの壁で外部から完全にしゃ断された照射室の中に、遠隔操作によって線源を準備し、つぎに照射するものをコンベアで照射室に送り込み、そして必要なだけの放射線をあてます。必要な放射線量は、照射の目的によって異なり、発芽防止では少なく、殺虫、熟度調製、殺菌の順に多くなります。
ジャガイモやタマネギの貯蔵中の発芽防止のためには、ガンマ線が用いられます。また、みかんのように貯蔵中に表面に発生する微生物の殺菌を目的とする場合は、ガンマ線と異なり透過力の弱い電子線が用いられみかんの表面だけを殺菌することができます。
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