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Q&A(QUESTION and ANSWER)

食品照射入門(1)食品照射誌解説


Q&A集タイトル : 食品照射に関するQ&A(食品照射 第17巻 P78〜87)
発行年月日 : 1982年
<答>



照射したジャガイモの成分変化に対する検討が不十分ではないのですか。また、栄養素が破壊されているのではないのですか。


<答>

 放射線処理法の特徴は

 1 処理時に熱がほとんどかからない(加熱処理と異る点)

 2 処理後、有害物質が残らない(化学薬品や添加物との違い)

 3 被照射物質に与える影響が極めて少い(このため非照射物と区別することができず、区別の仕方そのものも研究対象になっている)

 4 包装したまま処理ができる(最終的な出荷包装の状態で処理できるので、処理後はそのままマーケットへ出せる。従って2次的な汚染がない)

 5 処理が確実である(他の食品処理法、例えば、加熱処理やガスくん蒸処理などでは、食品の処理時に管理すべき項目として、温度、湿度、圧力、時間、包装状態、食品のならべ方等、多数の事項を正しく制御する必要があります。しかし放射線処理法では、照射時間さえ正確に守れば正しい処理ができます。)

 6 加熱殺菌や冷凍処理にくらべてより少いエネルギーで食品を保存できる。

 このようなことから放射線処理は、食品に対する影響が極めて少なく処理効果の大きいことが、明らかにされています。一般的に言えば大量の放射線(ジャガイモ照射の200〜300倍以上)を照射した時の栄養成分の破壊は、同じ食品を加熱殺菌した時よりも少いか、せいぜい同程度と言われており、ジャガイモ(わが国では、ビタミンB1、B2、C、デンプンが調べられている)についてはその照射線量からも、またわが国のデータおよび諸外国のデータからも栄養成分の破壊について心配する必要はありません。

 FAO/IAEA/WHO合同専門家委員会(1980年)報告では次のように述べられています。

 「(栄養)1976年の委員会から出された照射食品の栄養面に関する勧告に対して、これを変えねばならないような新しい証拠は、それ以後発表されていない。多くの研究結果から、1kGy以下の低線量照射では、栄養変化はほとんどない。中間線量域(1〜10kGy)では、空気存在下で照射および貯蔵すると、ある種のビタミン量の低下があり得る。高線量照射(10〜50kGy)になると、空気のない条件下、凍結状態で照射するなどして食味変化の防止策を構じれば、栄養素の破壊は中間線量照射の場合よりもむしろ少なく、ごく微量な程度におさえることができる。食品中のビタミンCに関しては互いに矛盾する結果が報告されている。ビタミンCは、照射によりデヒドロアスコルビン酸に変化するが、生物活性のあるこの化合物を考慮に入れないで報告する者もいる。

 今後は混乱をさけるために、アスコルビン酸およびデヒドロアスコルビン酸の双方を、定量する必要があるだろう。照射により食品中の栄養素量が、どの程度低下するかは、食品の組成、線量、温度、空気の存否、照射および貯蔵期間の長短などで異る。照射食品の栄養素の低下がどれほどの意味をもってくるかは、その食品が、食生活中に占める重要度によって異なる。例えば、魚のビタミンB1量が一部低下するとして、それがどの程度の意味をもつかは、その人が摂取する全ビタミンB1のうち、魚から来る部分がどれ程のものであるか、によって、一概に断定することは出来ない。また、その人の栄養状態も同時に考慮せねばならないし、葉酸の低下量などまだ不明な点については今後の研究が必要である。

 1976年に、合同委員会は、照射単独でもたらされる栄養素の低下については、他の処理法や貯蔵中での低下、および照射と他の保蔵法を同時採用した時の低下と比較検討すべきであるとの考えを示した。これに関し、かなり多数のデータが集まっているが、それらによれば照射による栄養素の低下が特に問題となるような証拠は見出されていない。」




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