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Q&A(QUESTION and ANSWER)

食品照射入門(1)食品照射誌解説


Q&A集タイトル : 食品照射に関するQ&A(食品照射 第17巻 P78〜87)
発行年月日 : 1982年
<答>



照射の結果、食品中に人間に危険な生成物が蓄積することはないのでしょうか。


<答>

 食品を電子線、ガンマ線およびエックス線で照射しても、放射能が食品中に誘起されることはないので、照射食品の健全性試験は、もっぱら照射により生じる化学変化という観点から行われてきました。照射による生成物が何であるかは、まず第1に照射される食品の成分によりきまってきます。生成物の濃度は、一般に線量と共に増大し、温度、空気の存否、水分量などにより多少変ることがあります。照射により食品に吸収されるエネルギー量は、加熱処理の場合とくらべてはるかに少なく従って照射によって食品中にもたらされる化学変化量が、加熱処理された時より、はるかに少ないものとなります。現在では、食品についての照射生成物に関する化学的データが多数蓄積され、また、それらのデータに基いてさらにより多くの照射生成物が定性・定量されるようになりました。そして、炭水化物、脂質およびタン白質に関する放射線化学的メカニズムは、かなり詳細な点まで明らかにされてきました。たとえば、牛肉、豚肉、ハムおよび鶏肉での研究結果から、揮発性炭化水素類は、肉の種類に関係なく、脂質量によりどのようなものが生成するかが決まることが明らかにされています。また、各種のデンプン類、小麦、ジャガイモ、米、豆類などを照射した結果、どれも生成物は同じ物質であることが明らかにされています。量的にわずかな相違がみられますが、これはデンプン中の例えばアミロースとアミロペクチンの量比の違いなどから説明がつくものです。果実モデルを照射、分析した結果から、照射果実中に存在する主要な生成物は、果実の主成分である各種の糖に由来するものであることも確認されました。果実のその他の成分、例えばタンパク、リンゴ酸、フェノール類、ニコチンアミドなどからもたらされる生成物は、はるかに微量なものであることも確められています。

 牛肉については(平均56kGy即ち5.6Mrad照射、温度−30℃±10℃)かなり詳細な研究がなされています。その結果、1〜700μg/Kgの100種以上の、揮発性成分(全部合せて9mg/Kg)が同定されています。しかし、これらの揮発性成分の多くのものは、非照射牛肉にも共通して含まれるものです。FAO/IAEA/WHOの合同専門家委員会の報告では、これらの研究結果を総括的にまとめあげ、これら生成物が消費者に危害を及ぼす恐れは全くないとの考えを明らかにしています。




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