食品を照射すると、熱処理などの場合と同様に処理後の微生物学的変動は、食品の種類、存在する微生物の種類、処理線量、処理後の貯蔵条件などにより異なります。完全殺菌を目的とした高線量照射では、微生物がすべて死滅するため、健全性に関する問題は考えられません。しかし、低線量の照射後も生き残る微生物については、公衆の衛生上の問題が考えられますが、これまでの試験の積み重ねにより、実際的な食品照射の条件下で食品中に存在するいかなる微生物やビールスの毒性も増大することは見い出されていません。中線量照射では、ある種の微生物やビールスは殺滅され、また、照射により変異株が生成したとしても、特に問題の生じないことが確認されています。
伝染性微生物の病原性は、照射によって軽減されることが知られており、逆に増加したという報告はなされておりません。照射により、細菌、酵母、ウイルス等の病原性が増大することはないと考えられています。
微生物の放射線抵抗性の違いについては、高い放射線抵抗性を示す微生物による試験も行われてきましたが、それらの微生物により健康を阻害するような要因が確認されたことはありません。逆に、加熱処理や食塩処理を放射線処理と併用することにより、放射線抵抗性の高い微生物などをより効率よく殺菌できることも確かめられています。
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