野菜、果実を数種とりあげて説明する。
照射ジャガイモ
(実用線量:0.15kGy以下、発芽防止)
照射直後遊離の糖は増加するが、総炭水化物の変化は極く僅かである。遊離のアミノ酸に僅かの変化はあるが、蛋白質のアミノ酸組成は変わらない。0.1kGy以下でアスコルビン酸は15%弱低下するが、照射後貯蔵してもそれ以下の低下はみられず、ビタミンB1、B2は安定である。
照射玉ねぎ
(実用線量:0.15kGy以下、発芽防止)
アスコルビン酸は0.5kGy照射玉ネギで、3ヶ月以上貯蔵しても変化しなかったとするものと、0.15kGyでも低下したという報告がある。炭水化物は2kGy照射し、9ヶ月貯蔵しても変化は認められなかった。0.05kGy照射玉ネギで8〜10ヶ月後、アスコルビン酸、還元糖、非還元糖、アミノ酸組成について検討したが、発芽時に還元糖の上昇が抑制された以外、特筆すべき変化は認められなかった。実用線量ではアスコルビン酸の変化は少なく、全糖量、アミノ酸組成の変化も認められず、栄養学的に影響はなかった。
照射マンゴ
(実用線量:1kGy以下、害虫防除、熟度遅延、加熱との併用による細菌数の減少)
0.1〜0.6kGy照射によりアスコルビン酸、カロチンはほとんど影響を受けなかった。照射によるこれらのビタミンの低下は極めて僅かで、特に冷凍や加熱に比べるとその損失は少ない。2kGyまでは照射しても揮発性成分の差異、すなわち官能特性に変化は認められなかった。脂肪、蛋白質、糖、デン粉、ビタミンB1、B2、ニコチン酸、ミネラル等の成分にも変化は認められなかった。2品種について0.2〜0.6kGy照射した結果、いずれの品種も炭水化物、アスコルビン酸含量には対照との差異はなかった。
照射グレープフルーツ
(実用線量:1kGy以下、殺虫)
照射後(0.25〜0.6kGy)の新鮮グレープフルーツや新鮮ジュースには官能的な変化はみられないが、照射後(0.5〜0.6kGy)の滅菌ジュースは非照射滅菌ジュースに比べて芳香性に差異が見られた。滅菌ジュース中のビタミンCは照射によって著しい減少は見られず(0.6〜7.5%の減少)、糖分、酸成分、果皮の精油成分にも変化はなかった。
また別の報告では、1例、初期収穫時期(9〜10月)における照射グレープフルーツ(0.3〜0.9kGy)の外観上の日焼けや軟化、ジュースの芳香劣化などの結果が見られた。しかしほとんどの時期で日焼けや軟化が見られず、またジュースの芳香劣化は0.6kGyで増加し、さらに0.9kGyで増加する傾向にあるものの、明確な芳香劣化効果はなかった。ジュース中のビタミンC、糖、酸成分、果皮中の精油成分にも著しい差異はなかった。
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