生鮮野菜や生鮮果実の放射線処理は発芽防止や殺虫を目的としているため、必要線量は発芽防止で0.02〜0.15kGy、殺虫で0.10〜1kGyと少ない線量である。一般には、このような低線量では栄養成分の分解はほとんど問題とならない。しかし、野菜や果実内の代謝に異常が生じ、遊離糖が増加したりビタミンCが減少することがある。これらの変化は照射後数日の間に急激に起こるものであり、長期貯蔵中には非照射品と差がなくなる。馬鈴薯の場合には夏期条件下では高線量照射したものの方が、輸送・貯蔵中に腐敗しやすくなる傾向が認められるが、通気と20℃以下の低温貯蔵を組合せれば約1年間の長期貯蔵が可能である。果実の場合は殺虫を目的としているため貯蔵性は非照射品と差がない。食味は照射直後に低下することがあるが、数日の貯蔵で回復する。果実の表皮は照射によって褐変するものもあるが、照射時期や予措などの前処理を行えば商品価値を低下させるような変化を抑制することが可能である。
文 献
1) 緒方 邦安、茶珍 和雄、放射線照射と果実・そ菜の生体反応、化学と生物、10、234(1972)。
2) 梅田 圭司、食品照射の実用化とその背景、化学と生物、12、532(1974)。
3) 佐藤 正人、馬鈴薯の貯蔵と今後の課題(2)、食品工業、10下、42(1981)。
4) T.Hayashi,T.Sugimoto and K.Kawashima,Effect of gamma−irradiation on the activities of sucrose synthase and sucrose phosphat 5) 渡辺 宏、青木 章平、佐藤 友太郎、温州ミカンの放射線保蔵に関する研究、(第1報)官能的品質と貯蔵効果に及ぼすγ線照射の影響、食品工誌、23、300(1976)
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