照射された単離溶液中の核酸成分について、Amesテストによる変異原性試験を行ったところ、核酸塩基は陰性を示したが、2−deoxy ribonucleotide はわずかに陽性を、2−deoxy−D−ribose は陽性を示した。この糖の照射分解物はviz.2,4−dideoxypentodialdose と推定されている。しかしながら、DNAまたは nucletide は Amesテストで変異原性を示さなかったし、単離溶液中で研究された核酸成分の照射分解は直接的な照射食品への関連性は少ない。
照射によって細胞内水相で生ずる中間体とDNAとの細胞内反応の研究はDNAの希釈水溶液のようなモデル系で行われた。これらのモデル系において、OHラジカルとDNAの反応は核酸鎖中の攻撃場所に依存する様々な生成物を観察する上で重要であることが判明した。70%の主たる損傷は塩基に生じ、約30%の損傷は deoxyribose に生じた。
食品の危険性に関して、DNAの単鎖または二重鎖の切断は重要ではなく、生成された単量体化合物について考察が必要である。
正常の単量自体は問題ではなく、むしろプリンおよびピリミジン環由来の照射生成物が重要であると考えられた。しかし、それら照射生成物が多数生成する可能性があるのにもかかわらず、実際には invitro(試験管内)系ではほとんど検出することはできなかった。
Deoxyribose の照射生成物は水溶液でのモデル系で研究されたが、その結果を invivo(生体内)系に外挿することは難しい。損傷したプリンおよびピリミジン塩基は複写の際に宿主DNAに取り込まれる可能性はほとんどなかった。なぜならば、これらの化合物は特異的な前駆体を有している正常塩基とは競合しないであろうし、特に低収量の損傷塩基には可能性はほとんどなかった。さらに DNA polymerase は誤認のほとんどない活性を有しており、誤った塩基を利用することはないであろうから、これら損傷した塩基は食品照射における危険性を示さないものと推定された。
Nucleotide の1つであり、調味料として使用しているイノシン酸(5’−inosinic acid)はそれ自体水溶液中、γ線によって分解はするものの、蛋白質、不飽和脂肪酸の共存でよく保護されることが報告されている。またカマボコ中ではほとんど分解しないこと、イノシン酸を添加したカマボコをγ線照射し、その抽出物についてのAmesテストの結果は陰性であることが報告されている。
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