ポリエチレンが放射線照射(100〜200kGy)によって耐熱性が向上するのは、放射線による水素原子の引抜の結果生じたアルキルラジカルが、隣接のラジカルと炭素−炭素結合し、分子間の架橋構造をとることによる。照射食品においても同様の機構による反応は起こり得る。例えば油脂では、飽和*1)、不飽和酸*2)いずれも脱気下で高線量照射により炭素−炭素結合の二量体、三量体を生成する。また炭水化物*3)、タンパク質*4)でも同様な反応が起る。しかし食品が多成分系であり、かつ照射線量が10kGy以下であることから、架橋反応は起こり難いと考えられる。またこれらの中には、摂取した場合に消化酸素によって普通の低分子物質例えば脂肪酸、アミノ酸、単糖類といったものに分解され得る可能性もある*4)。さらに食品中のラジカルの生成は、放射線照射に限らず、加熱、自動酸化、凍結乾燥によっても認められ、この場合も架橋反応*5)、6)が起こり得る。従って食品成分の一部にこのような架橋が起ったとしても、これが直ちに生体に有害な影響を与えるとは考えられない。
文 献
1) Mac Farlane,J.J.and Sweeting,G.W.,Nature,Lond,207,520(1965).
2) Howton,D,R,Radiat,Res.,20,161(1963).
3) Adam,S.et al.,Starke,31,423(1979).
4) Federal Register,51,No.75.April 18(1986).
5) Ohfuji,T.and Kaneda,T.,Lipids,8,353(1973).
6) Miyazawa,K.et al.,Lipids,20,578(1985).
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