1.照射によっても食品の栄養成分の一部は分解される。主要な栄養成分である炭水化物やタンパク質では、基本栄養成分が分解されることはほとんどなく、栄養価についての影響はない。
2.脂肪では、加熱などによって起きるのと同様の酸化反応が起きる。また、酸化が進むことにより分解が起こる。
脂肪の放射線分解生成物と加熱処理による分解生成物を比較した例では、調理やフライ温度処理(180℃、1時間)で生じる分解生成物の方が120kGy照射した場合よりも種類、量ともはるかに多い。この線量は通常の殺菌線量の10倍もの高線量であり、放射線殺菌線量での化学的、栄養学的変化は、加熱処理よりも大きくなることはない。脂肪からのフリーラジカルは不安定な酸化生成物として照射でも加熱でも生成するが、加熱の方が多い傾向がある。
3.栄養上問題となると考えられるのは、ビタミン類の破壊である。水溶性ビタミンのなかではCやB1の放射線感受性が高く分解されやすい。また、脂溶性ビタミンのなかではEが分解されやすいが、Dは安定である。
乾燥下叉は凍結下で照射した場合、各種ビタミンは放射線に対し安定であり50〜60kGyの高線量でも蒸気滅菌処理よりも分解が著しく少ない。常温下での生鮮食品の照射でも5kGy以下の線量では各種ビタミン類の分解は無視し得る。
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