食品照射に関する文献検索

Q&A(QUESTION and ANSWER)

食品照射の基礎


Q&A集タイトル : 議会、官庁向けQ&A
発行機関名 : 科学技術庁
<答>



問21.放射線照射による突然変異のほとんどは、遺伝因子の欠損として現れるといわれる根拠。


<答>

 1.イオン化放射線でも紫外線でも生物に与える作用は主に遺伝因子であるDNA分子の損傷として発現される。ところが生物にはDNA分子の一部が損傷を受けても、その部分を修復する酵素系を有しており、低線量では損傷DNAを完全に元の状態に戻すことができる。イオン化放射線でのDNA損傷は1本鎖切断のため修復しやすいが、まれに2本鎖が切断されると修復にミスが起って一部のDNA切片が失われることが起る。これが突然変異であり、遺伝因子の欠損の原因となる。紫外線の場合はDNA分子内に2塩基結合を起しやすいため、突然変異の可能性はさらに高い。

 2.微生物の場合、放射線によるDNA傷害のほとんどは細胞分裂能が失われることにつながり、突然変異の出現はほとんど起らない。サルモネラ菌などで出現する突然変異のほとんどは、アミノ酸などの栄養成分合成能が失われており、自然界では変異株は生存競争に耐えられないものである。

 3.ショウジョウバエの例でも劣性突然変異がほとんどを占め、マウスでも同じようなことが報告されている。ただし食品照射の場合、動物が直接照射されることはないため突然変異の心配は全くない。




関連する文献一覧に戻る

ホームに戻る