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Q&A(QUESTION and ANSWER)

専門的解説 効果と安全性


Q&A集タイトル : 食品照射の効果と安全性
発行機関名 : 日本原子力文化振興財団
発行年月日 : 平成3年3月
<答>



8.食品の放射線処理の特徴


<答>

 食品照射の利用分野は多岐にわたっているが、表8−1に示すように照射する線量によって大きく分類することができる。低線量照射は0.03〜1kGyの線量の放射線を食品に照射するものであり、馬鈴薯やタマネギ、ニンニク等の発芽抑制、果実や穀類の殺虫、魚介類や肉類中の寄生虫の防除、果実の成熟遅延等を目的としている。中線量照射は1〜10kGyの線量を照射するものであり、貯蔵期間延長や食中毒防止のための殺菌を目的としている。高線量照射は滅菌を目的としており、20〜50kGyの線量が必要である。

 食品照射は次のような利点を有している。

 (a)放射線はほぼ均一に食品の中を透過するので、他の処理法に比べ食品を均一に処理することが可能であり、その効果の信頼性が高い。

 (b)耐熱性の細菌胞子を99.99%以上殺菌できる10kGyという高線量の放射線を照射しても、食品の温度はわずか2.4℃しか上昇しない。すなわち、放射線照射による温度上昇はわずかであり、放射線処理は生鮮物、冷蔵品、冷凍品の処理にも利用できる。

 (c)食品照射は物理的処理であり、殺菌や殺虫に薬剤を使う化学的処理に比べ、薬剤による汚染や残留の問題がない。

 (d)放射線は透過力が強いため、食品を包装した状態でも食品の内部まで照射できる。すなわち、包装してから食品を照射することにより、照射した食品の微生物や害虫による再汚染を防ぐことができる。

 食品照射は、このように他の食品の保存技術にはない優れた特徴を有している。


表8−1 照射目的・線量と対象食品
 
 照射目的  
照射線量(kGy)
   対象となる食品   
照射による効果
 備 考   





 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
発芽・発根抑制
       
       
       
0.03〜0.15
         
         
         
馬鈴薯、タマネギ、甘藷、シ
ャロット、ニンジン、栗、シ
ョウガ等         
             
貯蔵期間の延長
供給の安定化 
       
       
       
       
       
       
害虫・寄生虫防
除      
       
       
       
0.15〜1.0 
         
         
         
         
穀類、豆類、生鮮果実・野菜
、乾燥果実、乾燥魚、乾燥肉
、生豚肉、カカオ豆、ナツメ
ヤシ、豚肉(寄生虫防除)等
             
貯蔵期間の延長
衛生化    
流通の拡大  
       
       
飼料原料   
       
       
       
       
熟度遅延   
       
       
       
0.5〜1.0  
         
         
         
バナナ、パパイヤ、マンゴー
、アスパラガス等生鮮果実・
野菜、きのこ(開傘抑制)等
             
流通の拡大  
貯蔵期間の延長
       
       
       
       
       
       





 
 
 
 
 
 
腐敗菌・病原菌
殺菌*1   
       
       
       
1.0〜10   
         
         
         
         
生鮮魚、イチゴ、水産加工品
、畜肉加工品、生鮮魚等、冷
凍エビ、冷凍カエルの脚、家
禽肉等          
             
衛生化    
貯蔵期間の延長
       
       
       
飼料原料   
       
       
       
       
食品特性の改善
       
       
       
       
1.0〜10   
         
         
         
         
乾燥野菜(調理時間短縮)、
ウイスキー(熟成促進)、ブ
ドウジュース(収率向上)、
コーヒー豆(抽出率向上)等
             
衛生化    
貯蔵期間の延長
       
       
       
       
       
       
       
       





 
 
食品素材・添加
物殺菌*2  
       
3.0〜50   
         
         
香辛料、乾燥野菜、酵素製剤
、天然ガム等       
             
衛生化    
貯蔵期間の延長
       
包装容器   
ワイン用コルク
       
滅菌*3   
(穏やかな加熱
の併用も行う)
10〜50    
         
         
畜肉、家禽肉、水産加工品、
病人食、宇宙食等     
             
衛生化    
貯蔵期間の延長
       
実験動物飼料 
医療用具   
       

                                  (IAEA資料より)
*1 Radurization(腐敗菌殺菌)、Radicidation(病原菌殺菌)
*2 Decontamination(衛生化)
*3 Radappertization(滅菌)





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