食品照射に関する文献検索

Q&A(QUESTION and ANSWER)

専門的解説 効果と安全性


Q&A集タイトル : 食品照射の効果と安全性
発行機関名 : 日本原子力文化振興財団
発行年月日 : 平成3年3月
<答>



11.放射線殺菌の特徴


<答>

 食品の殺菌、静菌技術としては、主に殺菌剤等の薬剤による化学的な方法と加熱や紫外線等による物理的な方法がある。化学薬剤による殺菌、静菌は薬剤自身の毒性に鑑みた処理作業者の安全確保や食品への残留性等の問題があり、一般的には、このような心配のない物理的な方法の方が望ましい。放射線照射は物理的な殺菌技術の一つとして、最近注目されている。放射線、紫外線、熱を利用した殺菌には次のような違いがある。

 放射線を照射した微生物はその放射線に応じて死滅等の影響を受ける。放射線による微生物の殺菌作用は遺伝子を構成するDNA鎖の切断によって起こり、タンパク質や細胞への影響はほとんど無視することができる。放射線、特にガンマ線は食品中の透過力が大きく、食品を均一に処理することができ、放射線を照射しても食品の温度はほとんど上昇しない。

 一方、紫外線ではその作用は放射線と同様にDNAが中心であるが、タンパク質に対する影響もかなり大きい。このため、DNA含量が細菌に比べて10分の1から100分の1のウイルスに対しても細菌と同程度の殺菌効果を有している。紫外線は食品中での透過力がほとんどないために、食品の表面や透明な食品しか殺菌することができない。

 熱殺菌のメカニズムは細胞内の酵素タンパク質の変性、代謝異常、DNAの変性切断などによるが、タンパク質の変性が死滅の大きな要因であろう。熱は食品中の透過力はそれほど大きくなく、食品全体を均一に殺菌するためにはかなりの時間を要するため、加熱殺菌した食品では品質の劣化や栄養価の低下が起こることがある。特に、粉状や粒状の固体の食品では熱伝達の効率が悪いために、加熱殺菌の場合、殺菌に長時間を要して著しい品質劣化を起こす。

 したがって、放射線照射は紫外線殺菌や加熱殺菌では処理できない食品にも適用できることがある。例えば、冷凍した食品の殺菌は紫外線照射や加熱では行うことができず、放射線照射によってのみ可能である。

 このように殺菌方法により殺菌のメカニズムや効果が異なるので、微生物や食品の種類に応じて適切な殺菌技術を利用する必要がある。




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