ある種の果実や野菜に低線量の放射線を照射すると、照射の時期によって、成熟が促進されたり遅延したりする。実用の観点からは特に果実の成熟の遅延効果が重要であり、シェルフライフが延長できる。例えば、桃は収穫後約1週間で市販が困難になるが、照射と低温貯蔵を組み合わせれば数週間の貯蔵が可能となる。
熱帯果実では0.3〜1.0kGy照射することにより、シェルフライフの明確な延長が観察され、マンゴーでは約1週間、バナナでは約2週間シェルフライフが長くなる。シェルフライフが延長されると熱帯の産地から温帯の消費地への果実の輸送が容易になる。
しかし、生鮮果実を照射すると組織がダメージを受けて、微生物により汚染されると腐敗しやすくなったり、テクスチャーが変化することがある。(第13項参照)。また、果実の味や香りが変化することもある。これらの放射線による影響の程度は果実の種類と線量に依存している。したがって、放射線照射に適した果実と適していない果実とがあり、(表15−1)、実用化に際してはこのことに関する知識は重要である。
成熟遅延に必要な線量と殺虫に必要な線量とはほとんど一致するので、熱帯果実を殺虫の目的で照射することによって成熟遅延の効果も得ているのが現状である。したがって、成熟遅延のみを目的として果実に放射線を照射することはあまりなく、中国でリンゴを0.5kGy照射して成熟を遅延する方法が実用化され始めている程度である。
マシュルームの開傘やアスパラガスの成熟も0.1〜1.5kGy照射により遅らせることができる。また、柿に放射線を照射すると脱渋することができる。
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果 実 |
照射の影響を受けないもの |
リンゴ、サクランボ、ナツメヤシ、グアバ、マンゴ、マスクメロン、 ネクタリン、パパイア、モモ、プルーン、ラズベリー、イチゴ |
時には品質劣化を起こすもの |
アプリコット、バナナ、チエリモヤ、イチヂク、グレープフルーツ、 キンカン、レイシ、ビワ、オレンジ、ナシ、パイナップル、プラム、 タンジェリン |
品質劣化を起こすもの |
アボガド、ブドウ、レモン、ライム、オリーブ、ナッツ類 |
(米国エネルギー省の調査) |
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