食品照射に関する文献検索

Q&A(QUESTION and ANSWER)

専門的解説 効果と安全性


Q&A集タイトル : 食品照射の効果と安全性
発行機関名 : 日本原子力文化振興財団
発行年月日 : 平成3年3月
<答>



17.照射食品と放射能


<答>

 放射線を照射した食品と放射能汚染した食品とが混同されることがあるが、この2つはまったく別のものである。食品に放射線を照射する場合には、放射性核種と食品とを接触させることなく一定の距離を保って、放射性核種から放出されるガンマ線を食品に照射するために、放射性核種の付着等により食品が汚染されることはない。しかし放射線のエネルギーが著しく高い場合には、食品の成分物質を構成している原子核が励起されて放射性物質に変換され、放射能を帯びる可能性がある。このようにして生じた放射能を誘導放射能と呼ぶ。

 食品が誘導放射能を帯びることを防止するために、国際的に、食品照射に利用できる放射線は、コバルト60とセシウム137から放出されるガンマ線、加速エネルギーが10MeV以下の電子線、加速エネルギーが5MeV以下のエックス線に限定することが勧告されている(国際食品規格委員会(FAO/WHO)策定の照射食品に関する国際一般規格(案)による)。なお、すべての食品は、わずかではあるが天然の放射能を有している。国際的な専門家グループによる検討において、16MeV以下のエネルギーの電子線を照射しても食品中の放射能が増加しないことが明らかにされているが、安全を見越して上記のガンマ線、電子線、エックス線しか食品照射には利用しないことが勧告されている。言い換えると、これらの放射線を照射している限り、食品の放射能が増加することはない。例えば、10MeVの電子線を100kGy照射しても、コショウの放射能は変化しない(表17−1)。

 したがって、放射線は物理学的にはエネルギーの一形態にすぎず、食品中に放射線が残留することはあり得ず、また国際的に勧告されている放射線を使用しているかぎり、食品中の放射能が増加するということもない。つまり、人体が直接被ばくした場合には影響があるが、食品に放射線を照射しても人体への被ばくは起こり得ない。これは、例えていえば180℃に加熱した天ぷらの油の中に人が入れば確実に死ぬが、180℃に加熱した天ぷらそのものにはそのような危険性が無いことと同じことである。


表17−1 10MeV電子線を照射したコショウの放射線(0.2g中)
 試 料 
線量(kGy)
ガンマ線計数率(cpm)
ベータ線計数率(cpm)
黒コショウ
    0  
 155.6±1.8  
  2.8±0.4   
黒コショウ
  100  
 155.5±0.3  
  3.4±0.5   
白コショウ
    0  
 156.7±1.7  
  1.2±0.3   
白コショウ
  100  
 153.6±1.2  
  1.4±0.3   

(古田ら;食品照射、23、93(1988))
(古田ら;食品照射、24、 9(1989))





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