食品照射に関する文献検索

Q&A(QUESTION and ANSWER)

専門的解説 効果と安全性


Q&A集タイトル : 食品照射の効果と安全性
発行機関名 : 日本原子力文化振興財団
発行年月日 : 平成3年3月
<答>



20.米国FDAの照射食品の安全性評価に対する考え方とその経緯


<答>

 米国食品医薬品局(FDA)の照射食品の安全性評価に関する基本的な見解は、Federal Register(1986年4月18日付)の Supplementary Information に述べられているので、それを紹介する。

 1979年にFDAは照射食品の安全性評価のための毒性試験方法を確立するために照射食品委員会(BFIFC)を設立した。BFIFCは照射食品の安全性について次のような見解を出した。

 1)食品を1kGy照射した場合の全放射線分解生成物は約30ppmと推定される。

 2)このうち、90%は非照射食品の中にもともと存在する物質であり、非照射食品には見いだされない特異的放射線分解生成物(URP)は全放射線分解生成物の10%、則ち3ppm、さらにそのうち単一のURPの濃度は1ppm以下と推定される。

 3)上記の考え方を適用すると、香辛料のように食事の中で0.01%を越えないような少量の成分は、50kGyまで照射しても、人間が摂取するURPはわずかであり安全性に問題はない。

 これらの見解に基づいて、BFIFCは1980年7月の最終報告書の中で図20−1のような照射食品の安全性試験の基準を示した。すなわち、1kGy以下の照射食品及び食事に占める割合が0.01%以下の照射食品は無条件で許可し、それ以外のものについては、遺伝的試験(変異原性試験)と亜急性試験(90日間の動物試験)を行わなければならない。さらに、これらの試験で異常がみられた場合、それぞれ長期試験(哺乳動物慢性毒性試験)と動物試験(催奇形性試験、3世代繁殖試験)によって判断することが要求されている。

 このような判断基準に基づいて食品の照射を許可しており、現在は表20−1に示すように6品目の照射が許可されている。


表20−1 米国での食品照射の許可状況
  品  目  
  目  的  
許可の種類
  線  量   
  許可の時期   
小麦・小麦粉  
殺虫      
無条件許可
0.2〜0.5  
1963. 8.21
馬鈴薯     
発芽抑制    
無条件許可
0.05〜0.15
1965.11. 1
香辛料(38種)
殺菌・殺虫   
無条件許可
10以下     
1983. 7. 5
酵素製剤    
殺菌・殺虫   
無条件許可
10以下     
1985. 6.10
豚肉      
寄生虫駆除   
無条件許可
0.3〜1.0  
1985. 7.22
果実・野菜   
成熟遅延・殺虫 
無条件許可
1以下      
1986. 4.18
香辛料・乾燥野菜
殺菌      
無条件許可
30以下     
1986. 4.18
家禽肉     
殺菌      
無条件許可
3以下      
1990. 5. 2





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