照射食品の安全性を調べるための動物試験においては、次に示すように、化学物質、医療品、食品添加物等の安全性試験と同じ項目(慢性毒性試験、世代試験等)が実施されている。
慢性毒性試験では、照射食品を添加した飼料を与えて飼育した時の動物について、まず一般の健康状態を調べ、1週間に2〜3回体重を測定し、同時に、照射食品を添加した飼料の摂取量を測る。また、定期的に血液を採取して、血液像、酵素活性等を調べる血液検査を行う。さらに、動物を約2年間飼育している間の死亡率と死因を調べる。それから、動物を解剖して臓器の重量を測定し、その肉眼的な所見を行った後に、顕微鏡を使って組織学的な検査を行う。
しかし、これだけでは照射食品の遺伝的影響はわからないので世代試験を行う。世代試験は後世にどういう影響を与えるかということを調べる実験であり、まず動物(マウス、ラット等)の親に照射した食品を30日間食べさせた後、雄雌各20匹を交配させ、雌の妊娠中(約20日間)も照射食品を食べさせて子供を生ませ、子供を育てるための授乳期(約3週間)、及び離乳後の子供に35日間照射食品を食べさせる。このような作業を3世代繰り返す。1世代繰り返す度毎に、20匹交配したうち10匹を次の世代の親とする。1匹から子供は平均して8匹くらい生まれるので、合計約80匹の子供が得られる。その中から雄、雌それぞれ20匹をランダムに取って、その次の世代とする。一方、20匹交配したうち残りの10匹は催奇形性を見るため、解剖して胎児の骨に異常が起きているか、外形に異常があるか等の詳細な検査を行う。このようにして3世代にわたって照射食品の遺伝的毒性が調べられている。
諸外国の食品添加物、農薬、化学物質等の安全性試験のガイドラインの多くが2世代試験までであるため、3世代までの試験で十分安全性は確認できる。
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