わが国の原子力特定総合研究として実施された照射タマネギの安全性に関する試験では、以下の結果が得られており、線量と用量関係の認められる現象や偶発的でなく飼育期間を通じて観察される傾向等もなく、照射タマネギは安全であると判断された。
1)慢性毒性試験
照射タマネギを摂取することによって生体が障害を受けるかどうかを評価するため、マウス及びラットを用いた慢性毒性試験を行った。タマネギ無添加飼料、非照射タマネギ添加飼料及び0.07、0.15、0.3kGy照射タマネギ添加飼料を摂取させ(タマネギは乾燥後添加、添加量は、マウスでは25%、ラットでは2%及び25%)、一般症状、体重等の観察を行うとともに、血液学的検査、病理組織学的検査等を行った。マウスを用いた試験においては、タマネギの添加によると考えられる赤血球数の減少、脾臓の腫大(はれて大きくなること)等がみられた(タマネギにはもともと溶血性があるため)が、照射によると考えられる影響はみられなかった。ラットを用いた検査には異常が認められなかった。
2)世代試験
照射タマネギを摂取することによって次世代に影響を与えるかどうかを評価するため、マウスを用いて3代目まで飼育し、繁殖生理に対する影響及び催奇形性の有無を調べた。タマネギ無添加飼料、非照射タマネギ添加飼料及び0.15、0.3kGy照射タマネギ添加飼料(タマネギは乾燥後添加。添加量は2%及び4%)を摂取させて試験を行ったが、妊娠率、平均同腹仔数、着床数等繁殖生理に対する影響は認められなかった。また、催奇形性については、各群共通に骨の変異の一種である頚肋が認められたが、照射の影響によると考えられる異常は認められなかった(第24項参照)。
3)変異原性試験
照射タマネギの遺伝的安全性を評価するため、微生物を用いた遺伝子突然変異試験及び宿主経由試験、ほ乳動物培養細胞(ハムスター)を用いた遺伝子突然変異試験、マウス及びラットの染色体異常試験及び(培養細胞)(ヒトとハムスター)の染色体異常試験並びにマウスを用いた慢性致死試験を実施した。試験は、それぞれ、タマネギの無添加、非照射タマネギ添加及び0.15kGy照射タマネギ添加の3群を対象として行った。いずれの試験においても、照射によると考えられる影響は認められなかった。
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