食品照射に関する文献検索

Q&A(QUESTION and ANSWER)

専門的解説 効果と安全性


Q&A集タイトル : 食品照射の効果と安全性
発行機関名 : 日本原子力文化振興財団
発行年月日 : 平成3年3月
<答>



29.照射水産練り製品の安全性


<答>

 わが国の原子力特定総合研究として実施された照射水産練り製品の安全性に関する試験では以下の結果が得られており、安全性に問題はないと判断された。

1) :慢性毒性試験

 照射水産練り製品を摂取することによって生体が慢性障害を受けるか否かを評価するために、マウス、ラットを用いて慢性毒性試験を行った。

 マウスを用いた慢性毒性試験では、非照射かまぼこ添加飼料及び4.5kGy照射かまぼこ添加飼料により24ヶ月間の飼育試験を行ったところ、飼育期間中の一般症状、体重、摂餌量、死亡率、病理学的検査及び腫瘍発現状況については、非照射群と照射群に差異は認められなかった。一方、体重では、雄の照射群が非照射群に比べて増加の傾向を示し、飼育期間が9ヶ月以上になると有意の差が認められたが、雌では、照射群が飼育期間18ヶ月以上になると体重減少の傾向を示し、非照射と照射の間に一定の傾向は認められなかった。

 次に、ラットを用いた慢性毒性試験では、マウスと同様に非照射かまぼこ添加飼料及び4.5kGy照射かまぼこ添加飼料により24ヶ月間の飼育試験を行い、飼育期間中の一般症状、体重、摂餌量、死亡率、病理学的検査(肉眼的、組織学的)の各項目について検討した。この結果、一般症状、体重、摂餌量、死亡率では、雌雄共に非照射群と照射群の間に有意の差は認められなかった。また、6ヶ月毎に行った血液形態学的検査、血清生化学的検査、臓器重量では、各時期に有意差を示す項目が散発的に認められるが、24ヶ月を通してみると、群間に一定の傾向は認められなかった。試験期間中の死亡動物を含む病理組織学的検査においても、非照射群と照射群の間に有意の差は認められなかった。

 これらの結果から、照射の影響と思われる変化はないものと判断された。

2)世代試験

 照射水産練り製品を摂取することによって摂取動物が次世代に及ぼす影響を評価するために、非照射かまぼこ添加飼料及び4.5kGy照射かまぼこ添加飼料を用いてマウスを3世代にわたって飼育し、各世代について一般症状、体重、繁殖生理値(交配率、妊娠率及び胎仔の性別、体重、外形異常等)、乳仔の離乳時の検査(生存率、剖検所見及び臓器重量)並びに骨格等を検査した。

 この結果、乳仔の臓器重量及び骨格検査において、照射群と非照射群、対照群と照射及び非照射群に、有意の差を示す項目が散発的に認められたが、世代間に一定の傾向が認められなかった。以上の結果を総合的に判断すると、照射による影響はないものと考えられる。

3)変異原性試験

 照射水産練り製品の遺伝的安全性を評価するために、非照射かまぼこ及び6kGy照射かまぼこについて、細菌に対する突然変異誘発試験、マウスによる宿主経由試験、哺乳動物培養細胞(ハムスターの胎仔細胞、ヒトリンパ球)を用いた染色体異常試験、マウスの生体を用いた染色体異常試験及びマウスを用いた優性致死試験を実施した。この結果、いずれの試験項目についても、非照射と照射の間に差は認められず、照射による影響は認められなかった。




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