食品照射に関する文献検索

Q&A(QUESTION and ANSWER)

専門的解説 効果と安全性


Q&A集タイトル : 食品照射の効果と安全性
発行機関名 : 日本原子力文化振興財団
発行年月日 : 平成3年3月
<答>



30.照射みかんの安全性


<答>

 わが国の原子力特定総合研究として実施された照射みかんの安全性に関する試験では以下の試験結果が得られており、線量と用量関係のある現象や偶発的でなく動物の飼育全期間を通じて観察される傾向もなく、照射したみかんは安全であると判断された。

1)慢性毒性試験

 電子線照射みかんを長期間摂取することによって、生体が障害を受けるか否かを評価するために、マウス、ラット及びカニクイザルを用いた慢性毒性試験を行った。

 1/5濃縮ジュースとした非照射温州みかん添加飼料及び1.5kGy電子線照射温州みかん添加飼料(添加量は6w/w%。ラットでは2w/w%も実施)を、24ヶ月間にわたって動物に摂取させ、飼育期間中の一般症状、体重、摂餌量、血液形態学的検査、血清生化学的検査、死亡率、臓器重量、病理学的検査及び腫瘍発生数について検査した。

 この結果、マウス、ラット及びカニクイザルの血液形態学的検査及び血清生化学的検査で、照射群と非照射群との間で有意の差を示す項目が散発的に認められたが、一定傾向を示す変化は認められなかった。また、その他の検査でも差は認められなかった。

2)世代試験

 電子線照射みかんを摂取することによる次世代への影響を評価するために、1/5濃縮ジュースとした非照射温州みかん添加飼料及び1.5kGy電子線照射温州みかん(添加量は6w/w%)でマウスを3世代にわたって飼育した。各世代について一般症状、体重、繁殖生理値(交配率、妊娠率、同腹仔数等)並びに胎仔及び新生仔の骨格を検査した。

 妊娠末期胎仔及び新生仔の骨格検査により一部の項目で対照群と照射群及び非照射群と照射群との間で有意差を認めたが、世代間に一定の傾向は認められなかった。

 以上の結果を総合的に判断すると、本実験において照射によると見なされる影響は認められなかった。

 なお、細菌及び哺乳動物の培養細胞を用いたインビトロ(試験管内)の試験において照射直後のグルコースやショ糖(これらは果実に多い成分である)の溶液には変異原性などのあることが観察されているが、米国FDAをはじめとする各国政府当局や国際機関は、このことが照射した果実などの食品の毒性に結び付くものではないとの見解を示している。すなわち、1)照射糖液を貯蔵すると変異原性が減少する。2)実験動物に照射糖液を投与しても変異原性は観察されない。3)照射した食品、果実、ジュースは変異原性を示さない。などの事実に基づいて、実際の食品中では糖が照射されても変異原性物質は生成されず、たとえ生成されてもすぐに不活性化されると判断している。事実、わが国での実験においても、照射糖液の変異原性がインビトロ試験で観察されているが、ラット肝臓抽出物を加えた場合には観察されなかった。また、マンゴージュース、システイン・グルタチオンを添加すると変異原性が消滅することも観察されている。

文献

 1)Bradley,M.V.et al.,;Nature,217,1182(1968)

 2)Holsten,R.D.et al.,;Nature,208,850(1965)

 3)Aiyer,A.S.and Rao,S.;Mutation Research,48,17(1977)

 4)Federal Register,51(75),April 18 1986

 5)Varma,M.B.et al.,;Experientia,41,396(1985)

 6)Ross,S.T.et al.,;J.Food Sci.,35,549(1976)

 7)Niemand,J.G.et al.,;J.Agric.Food Chem.,31,1016(1983)

 8)日本アイソトープ協会;食品照射研究委員会研究成果中間報告書(1989)




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