食品照射に関する文献検索

Q&A(QUESTION and ANSWER)

専門的解説 効果と安全性


Q&A集タイトル : 食品照射の効果と安全性
発行機関名 : 日本原子力文化振興財団
発行年月日 : 平成3年3月
<答>



37.食品照射と国民の栄養


<答>

 生鮮農産物を照射した場合、一般に、貯蔵している間に農産物内部の代謝により照射物と非照射物との間で栄養成分量の違いがなくなる。例えば、馬鈴薯において、照射して間もない時は遊離糖が増加してビタミンCが減少するが、2〜3ヶ月貯蔵すると照射物と非照射物との間でこれらの成分の量の違いはなくなる(第36項参照)。

 このように照射食品の栄養価は照射条件や貯蔵条件で変化するので、食品照射が国民の栄養に及ぼす影響を検討する際には、食品の照射条件、流通条件、消費形態も考慮する必要がある。食品照射の栄養学的意味は各国の食習慣や栄養事情によって異なる。照射の対象となる食品がその地域の栄養素の主要な供給源であり、かつその栄養素が放射線照射により分解されやすい場合には食品照射の導入は慎重でなければならない。しかし照射の対象となる食品が主要な栄養源とならない場合には食品照射に伴う栄養学的な問題は生じない。わが国ではビタミンAやB2等は摂取量が所要量をそれほど上回ってはいない(図37−1)から、これらのビタミンの主要供給源である食品を照射する場合には、栄養学的な検討が必要になる。わが国において実用化している馬鈴薯はこれらの栄養素の主要な供給源ではないので、例えビタミンが減少したとしても栄養学的な問題にはならない。なお、わが国では、ビタミンCは必要量の2倍以上摂取されており、また馬鈴薯が国民の主要なビタミンC源となっていないことから、たとえ照射して間もない時期のビタミンCの少い馬鈴薯を食べたとしても栄養学的な問題は生じない。

 先進国においては食生活が多様化しており、多種類の食品を食べるので、放射線照射した食品における栄養成分の減少が直ちに栄養学的に問題となることはない。しかし途上国において主食の保存を目的とした照射を行う場合には、高線量照射でビタミン類の損失が著しい食品については栄養学的な検討が必要になるかもしれない。




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