食品照射に関する文献検索

Q&A(QUESTION and ANSWER)

専門的解説 効果と安全性


Q&A集タイトル : 食品照射の効果と安全性
発行機関名 : 日本原子力文化振興財団
発行年月日 : 平成3年3月
<答>



40.食品照射の技術移転のための国際プロジェクト


<答>

 国際原子力機関(IAEA)は、食糧の損耗防止と食品衛生の向上のために開発途上国にとって食品照射が有益な技術であり、その利用にあたっては食品照射について正しい知識を持ち適切な食品の処理を行う必要があるとの認識から、より円滑な技術移転を目的として、アジア、中南米、欧州・中近東、アフリカの4つの地域で技術移転プロジェクトを推進している(表40−1)。これらのプロジェクトを通じて各地域の開発途上国において食品照射技術が正しく理解され、修得されることによって、はじめて、適切な食品照射を世界中で実施することが可能となる。

1)アジア太平洋地域での食品照射協力プロジェクト

 アジア太平洋地域での技術移転プロジェクトは1980年から開始された。このプロジェクトでの最終目的は、貯蔵食品の殺虫と殺菌、水産加工品の衛生化と貯蔵性の向上、植物防疫手段としての果実の殺虫、馬鈴薯やタマネギの発芽防止等による食料の自給率の向上、食品の衛生化及び輸出対策である。

 1980年から1984年までの5年間が第1フェーズで、基礎研究を実施した。1985年から1988年までの4年間が第2フェーズで、パイロット・スケールでの実用化のための研究が行われた。さらに、1989年から1992年までの4年間の予定で第3フェーズが開始されており、各国での実用化に向けてのグループ・トレーニング、照射施設の運転と管理、照射食品に対する消費者の受容、他の保存方法との経済性の比較等について検討している。

2)ラテン・アメリカ地域食品照射プロジェクト

 ラテン・アメリカプロジェクトは食品の衛生化や輸出機会の増大等を目標として、1986年から1990年までの5年間の予定で実施された。以来、馬鈴薯、タマネギの発芽抑制、果実の腐敗防止、果実等の害虫防除による損耗防止、及び照射処理に関わる経済性等について検討した。

3)欧州・中近東地域プロジェクト

 このプロジェクトは、1989年から1993年までの5ケ年計画で実施されている。欧州・中近東地域には先進国から開発途上国までがあり、また、農産物も温帯から亜熱帯産のものまでが収穫できる。なお、同地域ではこれまで特に食料の損耗が大きな課題となった事はない。こうした事から、このプロジェクトでの研究内容は基礎から応用まで幅広いものであり、a)食品照射の経済性、b)食品業界への技術移転のためのパイロット・スケールでの実験の推進、c)食品照射を規制する法律の整合化、d)食品照射プロセスの管理の4つに重点をおき、具体的には馬鈴薯、タマネギの発芽防止、穀物や乾燥果実の殺虫、香辛料の殺菌、生鮮果実、野菜、魚、肉の貯蔵期間の延長、家禽肉の殺菌、及び食品照射の経済性について研究を行っている。

4)アフリカ地域プロジェクト

 このプロジェクトは1989年から開始された。アフリカ地域の最大の課題は、慢性的な食料不足への対応であり、その対応策の一つがポストハーベストロス(収穫後の損耗)の減少である。このため、同プロジェクトでは、最終的に食料の自給力の回復、食料資源の輸出に役立てることを目標に、香辛料や豆類(カカオ豆)、根菜類(ヤム)、水産物の損耗防止等に関する食品照射技術の開発を進めている。

 なお、食品照射に関する国際協力としては、上記のIAEAの活動の他に、ICGFI(International Consultative Group on Food Irradiation)の行う活動がある。ICGFIは、FAO、IAEA、WHOの参加国の意向により1982年設置された組織で、国連の機関ではなく、参加国の専門家により構成されている。1990年12月現在37カ国が参加している。

 ICGFIの活動は、1)食品照射に関する事項の世界各国の進展状況を評価すること、2)食品照射利用に関して、参加国及びFAO、IAEA、WHOに対して適切なアドバイスを行うこと、3)FAO/IAEA/WHO合同の食品照射の健全性に関する専門家委員会(第19項参照)及びFAO/WHO食品規格委員会(第19項参照)に情報を提供することであり、具体的には以下のような事項を実施している。

 ・食品照射工程管理スクールの開催

 ・技術的ガイドラインの策定

 ・食品照射施設に関する規制モデルの策定の検討

 ・食品照射施設の国際登録制度の検討等


表40−1a 地域協力プロジェクトの参加国(アジア太平洋プロジェクト)
      
      
      
      
      
      
      















 
 
 

 
 

 

 

 
 






 

 
 
 

 
 

 
 
 

 
 





 
 





 
 





 
 





 
 

 
 
 

 
 




 
 
 
参 
加 
国 
数 
  
  
  
第 1 期 
×

×










11
第 2 期 













12
第 3 期 













11

○;参加国
◎;資金供与国
△;イン・カインド協力国
×;不参加
第3期はOECDが資金供与
(IAEA資料より)



表40−1b 地域協力プロジェクトの参加国(その他のプロジェクト)
      
               国     名               
ラテン・  
  アメリカ
プロジェクト
アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、     
エクアドル、グァテマラ、パラグアイ、ペルー、ウルグアイ、ベネズエラ    
                                     
欧州・中近東
プロジェクト
      
ブルガリア、チェコスロバキア、西ドイツ、ハンガリー、イラン、イラク、   
ヨルダン、オランダ、ポーランド、シリア、トルコ、ユーゴスラビア      
                                     
アフリカ・ 
プロジェクト
アルジェリア、カメルーン、コートディボアール、エジプト、ガーナ、リビア、 
モロッコ、ニジェール、ナイジェリア、セネガル、スーダン、ザイール、ザンビア

(IAEA資料より)





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