わが国で馬鈴薯の端境期の価格の安定化を目的として建設された北海道士幌町農協の馬鈴薯照射施設は、現在約20万Ciのコバルト60を装備しており、1時間に約15トンの照射能力がある(図44−1)。この施設では、秋に収穫された馬鈴薯を0.06〜0.15kGy照射して、翌年の端境期に市場に供給している。最近は毎年1万〜1万5千トンの馬鈴薯が照射されている。この施設は1974年1月に稼働を開始し、厳しい管理のもとに15年以上大きな事故もなく操業が続けられている。
現時点では、食品照射実施の現場において、食品が照射されたか否か及び照射された線量がどの程度かということを知る唯一の方法は、詳細な記録と注意深い線量測定に頼らざるを得ない。士幌町農協の馬鈴薯照射施設では、毎日、線量計をコンテナに装着して馬鈴薯が適正線量照射されていることを確認している。さらに、北海道の衛生部も適正な馬鈴薯照射が実施されるように監視するために、稼働期間中、数回抜き打ち的に独自の線量測定を行っている。このような検査において士幌町農協の馬鈴薯照射が問題になったことはない。科学技術庁および原子力安全技術センター、労働基準局による立ち入り検査も法律に基づいて行われており、放射線の管理状況と現場作業者の健康管理体制がチェックされている。また、作業者の被ばく測定や健康診断は定期的に行われており、作業者の健康管理にも十分な注意が払われている。
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