IOCUは、毒性試験における動物飼料に対する補強の目的を明らかにするとともに、ビタミンやミネラルの補強量が適切であったのか過剰ではなかったのかということに関する情報を提供することを要望している。高線量照射した飼料を用いた長期間の試験においてビタミンを補強する必要性は、すでに述べたビタミンK不足の例からも明かであろう。長期間の動物試験の目的は、試験する食品の毒性を見いだすことである。もしも動物がビタミン不足で病気になったならば、悪い結果が得られた場合に、その原因が照射によるものかビタミン不足によるものか判断できなくなる。長期にわたる毒性を見いだすための研究においては、試験対象の食品のビタミン量を対照の食品のビタミン量と同じにすることが必須である。したがって、試験設計をきちんとしたものにするために、高線量照射した食品の試験においては、慣例的にビタミンの補強が行われている。中線量あるいは低線量照射した食品を試験する場合には、照射によるビタミンの損失が少ないので、ビタミンの補強の必要のないことが多い。ミネラルの補強は、常に照射食品と対照食品に対して同様に行われる。
フリーラジカルは照射食品のみに見いだされるものではなく、広く生体内で生成し、事実、人間の体内でも常に生産されている。高濃度のフリーラジカルを含む照射食品の影響を検討するための長期の動物試験において、ラットの腫瘍生成(25)や突然変異発生(26)に関して有害な影響は観察されなかった。
文献
25.Renner,H.W.and Reichelt,D.:Zentralbl.Vet.Med.B20,648(1973)
26.Renner,H.W.,Gruenewald,T.and Ehrenberg−Kieckebusch,W.:Humangenetik 18,155(1973)
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