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食品照射の応用分野(1)特長


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8.世界における研究開発の歴史


8.世界における研究開発の歴史

概要

 海外では1950年代から、日本でも1960年代後半から照射食品の健全性などについて種々の研究が行われた。これらの研究結果に基づき、国連食糧農業機関(FAO)/ 国際原子力機関(IAEA)/ 世界保健機関(WHO)で構成される照射食品(の健全性)に関する合同専門家委員会(JECFI)が「平均線量10kGy以下で照射した食品の安全宣言」を行い、この結論を支持する多くの国々が各種の食品への放射線照射を許可するようになり、今日に至っている。日本では独自の研究の結果、1972年(昭和47年)に馬鈴薯の照射が許可され、1973年(昭和48年)から実用照射が行われている。

内容

1.日本では1972年(昭和42年)から1984年(昭和59年)にかけて、原子力特定総合研究の一つとして、食品照射研究運営会議のもとで、科学技術庁、厚生省、農林水産省などの傘下の研究機関が参加して、馬鈴薯(発芽抑制)、玉ネギ(同)、米(殺虫)、小麦(同)、水産練り製品(殺菌)、ウインナーソーセージ(同)、ミカン(表面殺菌)を対象として照射効果、判別(検知)法、健全性(栄養、慢性毒性、世代、変異原性)の各試験が行われ、7品目とも放射線照射による悪影響は認められないとの総合評価がまとめられている。

 馬鈴薯に関しては、この研究結果に基づいて47年に照射の許可を得、48年から北海道の士幌町農業協同組合で実用照射が行われている。

2.海外では1950年代から米国、旧ソ連、カナダなどで国家プロジェクトとして食品照射の研究が行われた。さらに、1960年代の終わりから照射食品の健全性研究に関して幾つかの国際プロジェクトが開始された。

@1980年には、FAO/IAEA/WHOによって構成されるJECFIが、平均線量が10kGy以下の放射線を照射したいかなる食品も毒性を示すことはなく、したがって、10kGy以下の平均線量で照射した食品の毒性試験はこれ以上行う必要がない、

A10kGy以下の平均線量を照射した食品は、特別の栄養学的な問題や微生物学的な問題はない、などとの結論をまとめた。

3.この結論を受けて、FAO/ WHOの合同国際食品規格委員会は、1983年に、食品に10kGy以下の線量の放射線を適切に照射して、国際間で流通させるための基本的な規格として、「照射食品に関する国際一般規格」、「食品照射実施に関する国際基準」の2つの国際規格を作成し、FAO、IAEA、WHOの加盟国にその受諾を勧告した。また、1986年に欧州共同体(EC)食品科学委員会はEC委員会の要請に対して、JECFIの結論を支持し、照射食品の健全性を確認するための動物実験はこれ以上必要ないとの見解を確認した。さらに、WHOは照射食品の健全性を支持する見解を数次にわたって表明している。

4.米国は独自の照射食品の健全性評価手法を確立し、1986年に生鮮野菜・果実、1992年に食鳥肉と新たな食品への照射を許可した。英国も1969年の無菌食品に加えて、1991年に9品目を一括許可するなど多くの国々が食品照射の有効性と照射食品の健全性を支持して、許可国数や実用化国数が増加している。(国名および許可対象品目は次項参照)




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