17.誘導放射能生成の有無
概要
国際的に、食品の処理に利用できる電離放射線は、60Coおよび 137Csのγ線、加速電圧が10MeV以下の加速器からの電子線および加速電圧が5MeV以下の加速器からのX線に限られている。これらの放射線を使用する限り、食品中に放射能が誘導されることはない。また、照射中に食品と放射線源が接触することもないので、放射性物質が食品に付着することもない。つまり、食品中に放射能が誘導されることや食品が放射性物質で汚染されることがなく、照射食品が放射能を帯びることはない。
内容
現在、商業規模の食品照射に利用されている放射線源は60Coのγ線と電子線のみである。
1.60Coは原子炉の中で、天然に存在する59Coに中性子を照射することにより製造されており、・大量に容易に入手することができるとともに、・線源の化学形態が金属であり取り扱いが簡単、という利点により広く利用されている。
2.137Csは、原子力発電所からの使用済み燃料を新たに燃料として利用できる239Puや残存 235Uなどから分離して得られる。しかし、以下の理由により一般には食品照射には利用されていない。
1) 137Csのγ線エネルギーが60Coの約半分(60Coは1.17MeVおよび1.33MeV、137Csは0.662MeV)であり、大量照射施設とするには線源の形態や照射施設を大型化しなければならないが、線源を大型化すると線源自体がγ線を自己吸収してγ線の利用効率が低下する。
2)60Co線源の化学形態は金属であるが、 137Cs線源は塩化物であるため潮解性があり、 137Csは60Coと比べて線源の格納(60Co線源は水中に格納)に特別の配慮を要する。
3)Csの塩化物(含む 137Cs)はわずかではあるが昇華現象を示し、環境中の大気を汚染する可能性があり、慎重な取り扱いを要する。
3.電子線は電子加速器から発生される。加速電子線は比較的安価に食品を照射することができる。食品照射に認められている最大のエネルギーの10MeVの加速電子でも、有効に照射できる食品(密度を1として)の厚さは4p程度(両面照射すると8p)なので、あまり厚みのある食品は処理できない。
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