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Q&A(QUESTION and ANSWER)

食品照射の応用分野(3)健全性


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18.照射食品の微生物学的安全性


18.照射食品の微生物学的安全性

概要

 放射線の照射により発生する突然変異の多くは遺伝子の欠損によるものが多く、子孫を残しにくいだけで、異なった種類に変化するのではない。照射食品中に生残する微生物が病原菌に変化したり、照射前から混入している有害菌の病原性や毒素生産能が増加するという現象は認められていない。

内容

1.放射線によって起こる突然変異は、遺伝子欠損により、ある種のアミノ酸合成能力が失われるという変異が多く、突然変異によって全く異なった種類の微生物が誘導されることは有り得ない。

2.放射線による遺伝子の障害は主に細胞分裂能の阻害であり、照射後の突然変異株の比率は細菌類では 0.1%以下にすぎない。細菌類などの下等生物については放射線による突然変異の発生率は、ニトロソグアニジンなどの薬剤に比べて著しく低い。

3.アフラトキシンなどの発がん性毒素を生産するカビや病原微生物についても、照射による著しい毒素生産能の増大、病原性の増大などの現象は認められていない。また、遺伝子欠損株などの突然変異は数世代後には野生株に戻るものが多い。

4.肉類や魚肉製品については、貯蔵期間延長や食中毒菌の殺菌を目的とした1〜10kGy照射の場合にはサイクロバクターや乳酸菌、有芽胞細菌、非発酵性の酵母などの生残が多い。これら多くの微生物は腐敗菌であるが、有芽胞細菌の場合にはセレウス菌やボツリヌス菌のような食中毒菌も含まれている。

5.放射線処理による貯蔵期間延長やサルモネラ菌やリステリア菌、腸炎ビブリオ菌などの食中毒菌の殺菌には10゜C以下の低温流通との組み合わせが考えられており、これで、有芽胞細菌の増殖は困難となる。なお、100゜C前後での加熱殺菌でも有芽胞細菌は生き残り、食中毒菌の多くも80゜Cで生き残ることが知られており、流通時の品質管理が悪ければどんな処理をしても食品の安全性が脅かされる可能性は否定できない。




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