19.国連機関における照射食品の健全性評価の経緯
概要
各国で照射食品の健全性に関する数多くの試験研究が行われ、また、国際プロジェクトも実施された。その結果、1980年に、国連食糧農業機関(FAO)/ 国際原子力機関(IAEA)/ 世界保健機関(WHO)で構成される照射食品(の健全性)に関する合同専門家委員会(JECFI)が、平均線量が10kGy以下で照射された食品の健全性に問題がないとの結論を得た。
内容
1.食品照射は近年開発された技術であるため、照射食品の安全性を調べるため数多くの試験が実施された。照射食品ほど安全性が徹底的に検討された食品は他に例がない。
2.1950年以来、照射食品中に存在する毒性物質を検出するための化学分析や数多くの動物試験が行われた。当初、これら試験研究のほとんどは米国および英国におけるものであった。1960年代になって、他の国においても、照射食品の健全性に関する試験研究が活発に行われるようになった。
3.FAOとIAEAは、WHOの助言に従い、1970年に国際食品照射プロジェクト(IFIP)を開始した。IFIPは、10kGy以下の線量を照射した食品を対象とした世界中で行われている種々の動物試験に対して統一性を持たせるとともに、動物試験に関する情報交換の場を設けた。また、IFIPは、照射食品の健全性に関する独自の委託試験も行った。IFIPには24カ国が参加し、これらの国とIAEAが合計 400万ドルの資金を拠出した。IFIPの支援のもとに行われた研究においては、照射食品には毒性学、栄養学、微生物学に関わる問題となる現象は何も観察されなかった。このプロジェクトは、10kGy以下の線量を照射した食品の健全性を明らかにして、1981年に終了した。
4.これらの成果に基づいて1980年に開催されたFAO/IAEA/WHOのJECFIは、
1)平均線量が10kGy以下の放射線を照射したいかなる食品も毒性を示すことはなく、したがって、10kGy以下の放射線を照射した食品の毒性試験はこれ以上行う必要がない。
2)10kGy以下の平均線量を照射した食品は、特別の栄養学的な問題や微生物学的な問題がない、という結論を出した。
5.この報告を受けて、1983年にFAO/ WHOの合同国際食品規格委員会は、食品に10kGy以下の線量の放射線を適切に照射した食品を国際間で流通させるための基本的な規格として、「照射食品に関する国際一般規格」と「食品照射実施に関する国際基準」を作成してWHOおよびFAOの加盟国に受諾を勧告した。
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