22.健全性評価に用いられる動物試験結果の評価法
概要
動物実験によって照射食品の安全性を評価する場合、動物実験のデータは体重、死亡率、臓器重量、血液学的検査、病理組織学的検査、世代試験などの結果により総合的に評価する必要がある。さらに、変異原性試験や放射線分解生成物の分析結果なども参考にして安全性を評価している。
内容
照射食品の安全性を評価するため、動物試験が数多く行われてきた。動物実験では個体差(個体毎の遺伝的偏り)があるため、データにある程度のバラつきが生じる。
1.初期の研究では、飼料中に占める照射食品の添加量が約50%のものもあった。このため、食品によっては同一食品を過剰に摂取するために起こる悪影響が動物に現れ、これが照射食品による悪影響と一部の人々に誤解される原因となった。また、過剰に照射された食品を大量に摂取させたために一部のビタミン類が不足して、動物に悪影響が現れ、これが照射食品の危険性を示す証拠とされたこともあった。今日ではこれら実験に関しては、実験設計が的確性を欠いていたと指摘されている。
2.動物にも個体差がある。また、飼料を完全に無菌的に調整することは不可能であり、完全な無菌環境下で実験動物を飼育することが不可能であるため、動物の微生物感染などによって、データにバラつきが生ずることもある。したがって、動物実験の結果による安全性の評価・解析にあたっては、一部のデータだけではなく、体重増加、死亡率、臓器重量、血液学的検査、病理組織学的検査、世代試験など総合的なデータに基づいて検討すことが不可欠である。
3.安全性試験結果のデータの解析に際しては、データのバラつきによる誤った解釈を避けるため、特に、以下について注意することが重要である。
1)問題となる現象に線量との相関関係が認められたか、
2)飼育期間を通じて一定の傾向が観察されたか、
3)世代試験において各世代を通じて一定の傾向が観察されたか、
4)他の要因があるために見かけ上の異常が観察されたことはないか。
4.動物による個体差の影響を避けるため、異なった種類の動物を使用している。さらに、有害物質を鋭敏に検知できる変異原性試験や放射線分解生成物の分析結果も安全性の評価に用いるなど、各種の試験結果に基づいた評価により、照射食品の安全性は十分に証明されている。
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