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Q&A(QUESTION and ANSWER)

食品照射の応用分野(3)健全性


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23.食品の放射線化学反応と分解生成物


23.食品の放射線化学反応と分解生成物

概要

 食品に放射線を照射するとフリーラジカルが生成し、殺虫、殺菌効果を発現し、食品の成分変化を引き起こす。フリーラジカルは自然界で起こる酸化反応や加熱でも発生し、水存在下では1000分の1秒以下で消失する。放射線で生成する分解生成物は1s当たり数r以下であり、その生成物の多くは通常の食品中に広く検出できる。また、加熱で生成するような発がん性物質や変異原性物質は検出されていない。

内容

1.放射線は食品中の原子をイオン化させ、生成したイオンは10万分の1秒以下で消滅して、フリーラジカル(遊離基)に変換する。このフリーラジカルは化学反応を起こしやすい活性種(励起状態の分子)であり、水存在下では直ちに周囲の物質と反応して1000分の

1秒以下で消失してしまう。なお、フリーラジカルは自然界で起こる酸化反応や加熱、生体内の新陳代謝、可視光線でも生成することが知られており、放射線照射特有の現象ではない。

2.食品や飼料、生物などの場合、水分が10〜80%含まれており、放射線照射で発生するフリーラジカルの約80%は、水が分解してできるヒドロキシルラジカル(活性酸素の一種)で占められている。このヒドロキシルラジカルは主に食品成分の酸化分解に関与することが知られている。したがって、照射によって生成する分解物は有機酸や過酸化物が多い。しかし、放射線照射で生成する分解生成物は60kGyでも食品1s当たり数rであり、10kGy以下で処理される通常の照射食品での生成量はさらに少ない。

3.放射線分解生成物の90%以上は非照射の食品中にも含まれている成分で、放射線照射特有の分解生成物があるとしても数%であると米国食品医薬品局(FDA)は指摘している。しかし、研究者の中には放射線特有の分解生成物など存在するはずがなく、もし存在すれば化学的な検知法に利用できるはずであると主張する人もいる。

4.世界各国で行われてきた変異原性試験でも、照射食品からの有害な分解生成物は検出されていない。糖の水溶液に放射線を照射すると不安定な酸化生成物が若干生成し、変異原性を示すという報告があるが、糖水溶液は加熱処理すると大量の変異原性物質を生成すること、照射食品からは不安定な糖酸化生成物が検出されないため、照射食品の有害性を示す証拠にはならない。また、加熱処理の場合、アルカリ性条件下でアミノ酸の一種のリジンが反応してリジノアラニンという変異原性物質が生成することがあるが、放射線照射ではそのような反応は認められていない。




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