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Q&A(QUESTION and ANSWER)

食品照射の応用分野(3)健全性


文書



29.世界保健機関等の照射食品の安全宣言の意義


29.世界保健機関等の照射食品の安全宣言の意義

概要

 1980年に国連食糧農業機関(FAO)/国際原子力機関(IAEA)/世界保健機関(WHO)で構成される照射食品(の健全性)に関する合同専門家委員会(JECFI)が、10kGy以下で照射された食品は安全であると結論したのは、各国で数多く行われてきた動物実験などによる照射食品の安全性試験、放射線分解生成物の分析、実験動物用飼料を50kGyまで照射しても安全性に問題がないという研究結果など、当時の研究成果の総括に基づくもので、政治的結論ではない。

内容

1.照射食品の安全性を国際的に評価しようとする動きは、1961年のFAO、IAEA、WHO合同の照射食品の健全性に関する会合から始まった。1970年からは健全性を評価するための国際プロジェクト(照射食品に関する国際協力プロジェクト:IFIP)が開始され、わが国を含む多くの先進国が参加した。この成果を基に、FAO/IAEA/WHOのJECFIは、1976年に食品の放射線処理は、加熱や凍結と同じく物理的処理法であり、食品添加物としての扱いは妥当でないとする見解を出した。これは、それまでの動物試験は放射線分解生成物を添加物と同じように考えて実施されていたのが、分析技術の進歩によって放射線分解生成物が量的に非常に少ないこと、生成物の多くが未処理の食品にも含まれていることが明かになったからである。

2.1977年に、FAOとIAEAが共催した飼料の放射線殺菌に関する専門家会議で50kGyまでの照射飼料は栄養学的にも毒性学的にも問題がなく、安全であるとの結論を出した。1980年のFAO、IAEA、WHOのJECFIは、IFIPの結論および各国の健全性試験の成果、照射飼料の結論、放射線分解生成物の研究成果などを総括して10kGy以下で照射された食品は安全であると結論した。

3.インドでのポリプロイドのデータや旧ソ連のラジオトキシン生成説についても検討し、研究方法が適切でないこと、実験結果の再現性がないこと、データ評価に誤りがあったことなどが指摘された。放射線分解生成物については米国やドイツ、英国などで精力的に研究が行われ、放射線分解生成物の種類や放射線化学反応の機構までが明らかにされた。

4.1980年のJECFIの結論で、未公開の論文を引用しているとの指摘があるが、指摘されている誘導放射能やフリーラジカルの内容は、当時でも公知のことであり、わが国でも同様の研究成果が報告されていた。従って、10kGy以下の線量を安全としたのは科学的結論であり、10kGy以上については十分なデータが当時なかったため結論を出さなかった。なお、1983年には米国で58kGy照射した食鳥肉の安全性を示す結論が出された。




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